WD製品の低速病について真面目に語ってみる(但し独自研究)。

 Wikipediaだとタグが貼られそうだけど。
 取り敢えず(本人の意志とはあまり関係なく)HDDの数は触っているので、経験則や実際に測ったみた結果等を書いてみる。

 その1◇低速病とは。

 低速病とは、プラッタ記録品質が損なわれうる事態が発生したり、あるいは既に損なわれた場合に、ソレでも記録と再生を続ける為にファームによって移行する「緊急事態」 である。

 但し、以下のようなケースも見られる。

 ・明らかに記録品質が劣化しているのに「低速病」が発動しないケース。
  この状態では短期間のうちにその個体は使用不能となる。

 ・誤動作で「低速病」が発動してしまったように見受けられるケース。
  この状態では後述するタイミングで「回復」出来れば、その後は通常使用可能である。

 その2◇低速病の症状とは。

 低速病には、少なくとも以下の2つの「段階」がある。

 Level 1:書き込み速度が劣化する。正常時の半分、又はそれ以下となる。
 Level 2:読み書き両方の速度が劣化し、2MB/S程度になる。

 それぞれを仮にLevel 1・2と呼ぶ。
 Level 1を経てからLevel 2に至るケース、突然Level 2に至るケース、両方が見られる。

 また、以下のような状況が発生するとファームウェア的にリセットがかかるようで、一時的に低速病が「回復」することがある。
 但し本質的な解決でないため、プラッタ劣化が発生している場合遠くない時間のうちに再び発動する。

 ・ディスクの全消去を行った場合
 ・I/Fを変えた場合(Intel ICHからAMD SBへの接続変更、USB 3.0変換での外付け化等)
 ・電源断のまま長時間放置した場合
 ・ファーム設定を変更するコマンドを外部から入力した場合(キャッシュ制御の有無、騒音制御等)

 その3◇低速病の判定は。

 Level 2の状態では通常使用で明らかな不具合が発生するた詳細は記載しない。
 Read/Writeの極端な速度低下、ATAコマンド応答遅延が発生する。

 Level 1の状態では、書き込み速度を監視することで判定可能である。
 以下はLevel 1の低速病を発症しているHDDに対し、HDDScanで全面書き込みベンチマークを行ったグラフである。
 グラフを見れば発症状況は一目瞭然であるが、一回もエラーは発生しておらず、時間はかかるものの正常完了となる。
 (書込速度の目盛は実際より大幅に速いがこれはHDDScanの誤差によるもの)

WD30EZRX write benchmark with damaged platter

 比較対象として、以下はある程度使用時間の経過した同形式HDDの、正常な状態での全面書き込みベンチマークのグラフである。
 ※購入直後の状態ではもっとなだらかでブレ幅の少ないグラフとなる。

WD30EZRX write benchmark with normal platter

 ※注:
 HDDScanは非常に環境の影響を受け易いソフトウェアのため、この方法で検証する際は他のソフトウェアを動作させない・物理メモリを十分に確保する・負荷の高い常駐ものを止める、等の配慮が必要である。
 また、環境を整備してあっても時折妙な挙動することがあるので(グラフのや数字が非常に不自然になるので数%進めば簡単に判別可能)、その際は一度HDDScanを終了し、システムの電源断→再投入してリトライすると良い。HDDScan.exeの再起動だけでは同一症状が再発することがある。

 その3◇低速病の対処は。

 要するに劣化なので、RMAで交換。

 ◇

 ・・・とまぁ、こんな感じで。
 言っちゃ悪いが、要するにWD Greenの低品質の象徴だよね、というお話でしたとさ。

Share

AMDのプラットフォーム戦略を考えてみる。(Trinity Review おまけ)

 さて、Trinityのレビューが終わったついでに、AMDプラットフォーム戦略を考えてみる。

 ◇

 まず、現状分析から。

 新プラットフォームであるFM2の上で第二世代APUであるデスクトップ版Trinityを走らせ、IntelのIvyBridgeに対抗しようというのがAMDの戦略。

 まあAMDが現在持てる体力出来ることは精一杯やっている印象はあるが、既に限界も見えているのが厳しいところ。
 それは「CPUアップグレードパス」が存在しないこと。
 これがAMD APUのOEM(メーカ製PC)採用にブレーキをかける一因にもなっている。

 何より、もうすぐ出てくる第二世代FXシリーズがAM3+だということが厳しい。
 だが、これは現在のAMDにとってそうせざるを得ない理由があってのこと。
 サーバ向けのG34/C32にはPiledriverをさっさと投入しないと話にもならない。そうなるとバスはHyperTransportになるので、基本コアが共通なFXもバスはHTとなり、PCI-Expressしか出ていないFM2にはどう頑張っても乗せようがない。

 勿論、以前Socket C2012/G2012と呼ばれていた次世代になれば、AMDもCPU側にPCI-Express IFを突っ込むことになるので、FM2にもFXシリーズの純粋なCPUが来ることが期待出来る・・・筈だった。そして同時にAM3+は漸くプラットフォームとして終了する、筈だった。
 ついでに、この世代では構造的にPCI-ExpressとHTと両方を持つことになるので(AMDにとってのHTはIntelにとってのQPI)、現行G34/C32/AM3+ソケットにも「最後の製品」として出して、それが世代間の橋渡しになる、筈だった。

 #昔どっかで出ていた「FM2+」ってのは恐らくFM2にPCI-Express 3.0と高TDP対応を突っ込むモノだったのではないか・・・と推測。APUしか無いFM2で高TDP対応ってのはマザーボードのコスト的にも許されないだろうが、単品CPUが来るなら許されるので。

 が、C2012/G2012は既に「無かったこと」に。DDR4への移行がズレこんでいるのも理由だろうが、兎に角、パフォーマンス向けコアへのPCI-Express Bridge統合は当分無くなった。
 結果、FM2への単品CPU投入も、AM3+の打ち切りも、当分無くなった。

 こんな状態で、AMDはTrinity一本のFM2で持ち堪えられるのか。いや、ムリだと思う。

 #しかしサーバ市場でのPCI-Express 3.0対応はどうするんだろ・・・新ノースブリッジ作るしか無いんだが。
  サーバ向けは兎も角、デスクトップAM3+向けに新ノース投入なんてやった日には、いよいよ以て誰もマザー作ってくれない気しかしない。

 ◇

 というワケで、当方が思う現状打破の切り札は

 「AMDデスクトップAPU・CPUの、早急なFM2プラットフォームへの統一とAM3+廃止」

 新しくダイを起こすのが無理なら、FXコアとNorthBridgeの両方をMCMで載せてでも、プラットフォームを統一すべき。
 何しろ、現在のAMDにはデスクトップ向けでAM3+とFM2という2つのプラットフォームを維持するだけの体力は無い。
 共倒れという最悪の結果になる前に、早急に決断すべきと思われる。

 こうしてAMDデスクトッププラットフォームがFM2で統一されれば、メーカPCでも採用例の増加が期待出来る。
 APUを積もうがCPUを積もうがマザーが1種類で良いので、同一マザーでもAPU・CPU性能で製品バリエーションを増やすことが出来る。この柔軟性はOEMには評価される筈。

 同じことは自作PC市場でも言える。
 現状では最上位APUのCPU性能に満足出来なくなった場合、プラットフォームごと変更する必要があり、これがFM2プラットフォームを評価する際にマイナス要素になってしまっている。
 だがここに十分な性能の単品CPU+十分な性能の単品GPUというアップグレードパスが存在すれば、構成の柔軟性が評価されるし、購入者がも安心してFM2プラットフォームを選択出来る。

 更に、マザーボードメーカーもソケットが1種類しか無ければ少品種大量生産によるコストメリット等を得易くなる。

 まあこういうことをするなら、150Wぐらいは喰わせられてPCI-Express 3.0対応な「FM2+」規格を本気で作るしか無さそうだが、それがFM2と互換性を持つなら市場もそんなに混乱せず移行するのでは。

 ◇

 まあ兎に角、AMDの状況は現状でも決して良くない上に、来年になれば更に厳しい状況が待っている。
 それは、Intelの次世代CPU、Haswell。

 Intelとしては久々の大改良モデルで、実IPCでも対IvyBridge比で10%程度は改善してくることが予想される。
 これは主としてCPUコアの強化によるもので、要するにシングルスレッド性能向上の為の重装備化をIntelは更に進めるということですな。
 対するAMDはPiledriver。シングルスレッド性能と従来型命令MIXでの処理効率を犠牲にしてまでダイ面積を削ったコアですよ。

 この時点でも、IntelがAPUの実装や思想に追いついてくることはないし、GPUとしての処理性能でもAMD側の方が優位なことは変わらない筈。
 が、CPU性能ではIntelが圧倒してくる。ダブルスコアとは考えたくないが、圧倒的な差が付くのは確実。

 この状況で、Haswellが製品として出た時、AMDがどこまで踏ん張れるか。
 いや、つかマジで踏み留まって貰わないと困る。
 ここで押し切られたら最後、VIA/CyrixのC3のように、ズルズルとPC市場から退出を迫られかねない。

 兎に角、「PC」の将来の為にも、x86の将来の為にも、AMDがこれからも一定以上のプレゼンスを持ち続けることを切に願う。
 いや、最低でも今以上のプレゼンスは絶対に必要だと思う、本当に。

 #Intelは独占市場では物凄いお値段付けてくるし。
  まぁ商売的観点からしたら当たり前なんだけど、さ。

Share

検証まとめ・・・ Trinity APU の立ち位置は。(Trinity Review No.5)

 さて、Trinityシリーズも5回目。そろそろ〆といきましょう。
 今回はTrinityの用途とか、適したフォームファクタとか、そういう話。

 その1◆Trinityのキャッチコピーを考えよう。

 「どうせ買うなら、楽しい方」

 現在のTrinityの立ち位置を一言でまとめるなら、こんなキャッチコピーになるのでないかと。

 #何だかクルマ風だけど。

 パーツ一式揃えてから、Win8環境でのテストも兼ねて普段使っているアプリの類(非ゲームばかり)を触ったりもしてみたのだが。
 およそ一般的な「ビジネスアプリ」では力不足を感じることは無く、概ね快適に使えてしまった。
 また、電力管理はさすがに完成度が高く、全力稼働時の消費電力は低くないにも関わらず、通常使用では平均消費電力はかなり抑えられている。

 更に、GPUの項目で取り上げ損ねたが、GPUの動画再生支援能力もかなり強力。
 30fps・3MbpsのFull-HD mp4(YouTubeの前面展望動画)を再生して、CPU負荷が3%ってのはさすがにどうかと。

 #ちなみにRadeon 6450+Phenom IIX4 910eだとCPU負荷15~20%程度。

 一方で、CPUの演算能力はというと、はっきり言ってIntelに全然敵わない。
 確かに「大抵の用途で間に合う」レベルには達しているが、でも決して「パワーが溢れている」状態ではない。

 こんなことを考えていたら、何となく最初に書いたキャッチコピーが浮かんだワケですよ。

 その2◆最適な用途は。

 HTPCと、非ヲタク系PCユーザーの普段使いPC。

 「HTPC」

 まずは本命、ホームシアターPC。映像出力が強いのだから、これは当然の帰着点。
 強力な動画再生支援に、充実したデジタル出力。オーディオは何ならお気に入りのDACをUSBにぶら下げましょう。
 プロジェクターや立派なオーディオ機材が無くとも、自宅TVがある程度大きかったり、ちょっと高いヘッドホンを持っているなら、HTPCの楽しさに入門することは出来ますよ。

 ・・・とはいえこれは当たり前過ぎる話。
 個人的には次が本命だと思っている。

 「非ヲタク系PCユーザーの普段使いPC」

 Trinityの性能バランスを見れば見るほど、ヲタよりも非ヲタにこそウケがいいのではないかと真剣に思ってしまうのであり。

 何しろ、日常での使い方を前面に押し出す非ヲタ向けのアピール方法ならば、CPU性能がネックになる場面は圧倒的に少なくなる。
 今時非ヲタでもYouTube・ニコ動・USTREAM辺りはほぼ常識だが、強力な動画再生変換支援はCPUの弱さを十分にカバーしてくれる。
 デスクトップでのアプリ画面描画も、何しろGPUが強力なのでサクサク動く。

 これがヲタ向けとなると、途端に「CPUが弱いから・・・」という話になる。

 なので、非ヲタに売るPCにこそTrinityは向いている筈。ここはAMDの営業が頑張ってPC各社に売り込むべき。

 #「低価格エンターテイメントPC」は全部Trinityで良いと思うんだ。

 その3◆最適なフォームファクタは。

 Mini-ITX。これしかない。

 全部載せで、小さくて、楽しくて、AV機能の充実したマザーが欲しい。
 3画面フルデジタル出力と高音質HD Audioは最低限、Bluetoothや無線LAN辺りも積んでると嬉しい。
 リモコンなんか付いていると更に遊べるかも。

 こういうマザーに65W版のTrinity、この組み合わせが恐らく一番「Trinityの強み」を活かせる組み合わせだと思う。

 #この記事を書いている時点で未発表だが、個人的にはAsusとかZOTAC辺りに期待かな。GIGABYTEはどうかしらん。

 それともう一つ、Trinityに絶対に必要だと思うマザーがある。
 それは、OC可能なフル装備Micro-ATXマザー。

 MicroATXというお手頃サイズで、ちょっとしたOCも楽しめて、且つ安定度は抜群という一品。

 というのは、TrinityにATXマザーは「大きすぎる」と思うので。
 何しろCPUとオンボードでほぼんでしまう。ストレージもSSDなら小さくて済む。
 単品GPUを追加するにしても、他に刺すものが無ければMicroATXマザーで十分。

 コンセプト的にはMAXIMUS IV GENE辺りに近いが、アレよりはもう少しお手頃に。
 手元の GA-F2A85X-UP4 のまんまmicroATX版、なんてのがあるとドンピシャかと。
 値段は10K台前半で。フォームファクタ考えればチップセットはA75でも十分かも。
 そんなコンパクトなマザーにA10-5800「K」を載せて、ちょっとしたチューニングを楽しむ、ぐらいの方が「丁度いい」。

 何しろこのデフレ、そして自作PC離れ時代。
 自作PCの醍醐味である「チューニング」を低価格かつお手軽に楽しめる、そんなプラットフォームがあっていい、いや必要だ。
 APUはもうそこにある、値段も悪くない。ケースもCPUクーラーも電源も、SSDもHDDも選択肢はいっぱいある。

 後は、マザーだ。
 APUの魅力を最大限引き出せるマザーが出るか、これがTrinityの命運を握ると言っても過言ではないと思う。

 ◆

 ・・・まぁ、こんな感じで。
 取り敢えず、5回続いたTrinityな連載も今回が最終回。

 次回は「ついでに」AMDのプラットフォーム戦略をちょっと考えてみることにしましょ。

Share

GPUとしてのTrinityを検証する。(Trinity Review No.4)

 さて、Trinityシリーズの4回目。GPUについて見てみましょう。
 とはいえ、そこらのベンチマークアプリの値なんていくらでも見られるので、その辺りは割愛して。

 その1◆「メモリクロックがGPUパフォーマンスを直撃する」は健在か?

 兎に角GPUにはメモリ帯域が苦しいのがAPUの特質。なのでメモリのクロックアップは速度向上に直結する。
 Llanoは実際そうだった。では、Trinityはどうだ?

 論より証拠。3DMark 11で試してみた。

 DDR3-2133 → P1603
 DDR3-1866 → P1540
 DDR3-1600 → P1466
 DDR3-1333 → P1360

 ・・・相変わらずですなこりゃ。

 定格であるDDR3-1866からOCである2133に引っ張り上げるだけで、これだけパフォーマンスが改善される。
 1600→1866と比べると伸び率は落ちてはいるが、それでもDDR3-2400の値を期待出来る程度ではある。

 #DDR3-2400は設定を詰め切れずベンチ取れず・・・何しろここの管理人はOC慣れしていないもので。

 つかこの数字を見ると、AMDが当初DDR3-2133を定格にしたかったというのも納得というかなんというか。

 逆に、低価格故に選択する人が多いと思われるDDR3-1600では、APUの定格であるDDR3-1866と比べても相当パフォーマンスが落ちていることにも注目すべき。
 これじゃ折角のGPUが活かせてない。

 その2◆メモリクロック向上でパフォーマンスバランスはどうなる?

 取り敢えず、メモリクロック向上でグラフィック性能が上がるのは明確になった。
 ここで、先程の数字をもちっと詳しく。

 DDR3-2133 → P1603 / 1471 ・ 3560 ・ 1393
 DDR3-1866 → P1540 / 1414 ・ 3554 ・ 1307
 DDR3-1600 → P1466 / 1345 ・ 3466 ・ 1234
 DDR3-1333 → P1360 / 1250 ・ 3382 ・ 1102

 それぞれ Graphics・Physics・Combine。

 ここで注目すべきは、DDR3-1866とDDR3-2133でGraphicsの値は+57と伸びているのに、Physicsの値が殆ど誤差程度しか変わっていないこと。
 これは即ち、DDR3-1866より上にはCPU側が追いついてこないということに他ならない。

 #但しDDR3-1600・DDR3-1333時のPhysicsの値の落ち込みにも注目すべきね。

 対するGPU側は明らかに伸びしろがあり、DDR3-2400ではP1650、Graphics 1515ぐらいは望めそうではある。
 メモリの設定を詰めればもう少し伸びるかも、とも思わせる数字ですな。

 結局、パフォーマンスバランスという意味では最初っからGPU偏重なのがAPUなのだが、そのバランスは定格使用時にギリギリ保たれていると言って良いのかも知れない。

 その3◆GPUまとめ。

 ・A10-5800Kの内蔵GPU速度は、定格のDDR3-1866メモリを使っていても単体VGAであるRadeon 6570とほぼ同等。
 ・GPUに限ってみるとメモリ速度は相変わらず重要、DDR3-2133を使えばP1600は出せる。これは単体VGAであるRadeon 6570以上の速度ということ。
 ・逆に低速メモリは命取り。

 こんな感じかな。
 いやはや優秀ですよ。マザーさえ選べば3画面出力も出るし、GPUに関しては死角無し、と言っていいかもしれない。

 とはいえ、APUのメモリ帯域はもう限界に来ているのも確か。
 Trinityでは何とかギリギリ踏みとどまれた、という感じだが、次はどうするのかしらん。

Share

PiledriverコアとしてのTrinityを見てみる。(Trinity Review No.3)

 さて、Trinityのシリーズ3回目。いよいよベンチとかが来ます。
 今回はテーマ毎に一段落ということで。
 まずは、Piledriver Coreの出来をチェックしてみましょ。

 その1◆処理速度はどうよ?

 ということで、実際にベンチを回してみることに。
 以下は全て、メモリはDDR3-1866相当で駆動。要するに完全定格ですよ。

 CrystalMark 2004R3(4.0GHz@TC作動 2Unit4Thread)
 → ALU 52707、FPU 43442、Memory 31944。
 → GDI 10487、Direct2D 2728、OpenGL 3760。

 非常にLegacyなベンチマークだが、現在でもゲームとコンテンツクリエイション系以外の殆どのアプリはこの頃から構造的に進歩していないので、実際問題としては比較基準として使い物になると思われる。
 といっても比較対象が無いと比べようがないので、参考値を。

 参考値>Intel Core i3-2100(3.1GHz 2Core4Thread)
 → ALU 45000、FPU 45000、Memory 35000。
 → GDI 16000、Direct2D 2700、OpenGL 3800。

 参考値>AMD PhenomIIX4 910e(2.6GHz 4Core4Thread)
 → ALU 40000、FPU 39000、Memory 31000。

 整数演算のIPC(クロックあたりの命令実行効率)はDenebと比べて2割減といったところの模様。
 Deneb 2.6GHzとタメになるのはPiledriver 3.1GHz程度と想定される。
 なのでクロックダウンを行い、実際に検証してみた。ついでにCore i3とクロックも揃うし。

 CrystalMark 2004R3(3.1GHz固定 2Unit4Thread)

 → ALU 40953、FPU 33109、Memory 29243。
 → GDI 8739、Direct2D 2515、OpenGL 3726。

 うん、こんなもんだ。
 一方、泣きたくなるのが対SandyBridge。
 ぱっと見るPiledriverの方がおおよそ10%減、まぁこの程度なら・・・とも思いきや、コア数が倍違うんですよコレ。

 更にオマケ。2.6GHzまで落としてみた。

 CrystalMark 2004R3(2.6GHz固定 2Unit4Thread)

 → ALU 34011、FPU 27391、Memory 27306。
 → GDI 7877、Direct2D 2390、OpenGL 3676。

 う~む。正直コメントしづらい。なので、話を進めて。

 浮動小数点演算のIPCを見てみると、対Denebだと約3割減、対SandyBridgeで4割減といったところか。
 構造的に浮動小数点演算を「見捨てて」いる形にも関わらずこの数字というのは、個人的には善戦していると言っていいと思う。

 #というか、ここまで割り切った構成で且つこれだけの成績を出せるってのは、ある意味整数演算よりPiledriverの思想を体現している気がする。

 とまぁ、こんなところで。
 Piledriverは良くも悪くもBulldozerのマイナーバージョンアップである、ということを再認識しましたとさ。

 その2◆消費電力はどうよ?

 取り敢えず他に思いつかないのでOCCTを使って試してみる。 

 4.2GHz → 128W
 4.0GHz → 122W (3.8GHz定格設定だがTurboCoreが効いて全コア4GHzで動作状態)
 3.0GHz → 108W

 3.8GHz →  40W (アイドル)

 当方の環境ではTurboCore ONにすると全コア4.0GHzで駆動する模様。最初のベンチでもTCで4GHzになっていたので。
 そういう意味では、TurboCoreって結構効き易い模様。

 但し全コア4.2GHzでVcore定格のままではかなりフラフラで、OCCT放置も1時間は大丈夫だったが2時間は超えられず。
 TC4.2GHzってコア性能をかなりギリギリまで攻めている模様。
 まあCPUの個体差もあるし、電源がヘボい(&くたびれてる)ということもあると思うので、もっとまともな電源使えば余裕なのかも知れないが。
 とはいえこの価格帯のシステム組む人が¥20Kを超えるような「しっかりした」電源を選ぶとも思えないので、一つの目安程度にはなるかと。

 #ちなみに、電圧盛ったら全コア4.2GHzでもさくっと安定したが、消費電力も盛り分にふさわしく増加。
  VCore盛りは2乗で消費電力に効いてくる、その分発熱にもダイレクトに反映される、のでね。

 一方で、クロックを3.0GHzまで落としても消費電力は意外と減らない。つかたった14W差?
 なんというか、この辺りがPiledriverのアキレス腱なのね、と納得してしまった。

 そもそも、CMOS回路の消費電力は大雑把に言うとクロックに比例し、電圧の2乗に比例する。
 ところが最近のCMOSでは微細化の影響で、この比例分に加えて「漏れ電流」という、常時流れっぱなしの電流による「使用電力の底上げ」があり、こいつがヘタすると比例分よりも大きかったりするというとっても辛い状態になっている。
 今回、CPUクロックという「比例分」を下げても消費電力があまり下がらないということは、要するに「漏れ電流」が多いということ。逆に言うと、消費電力全体のうちCPUが実際に使える分が少ないということでもあり、端から見ると「電力効率がよろしくないCPU」ということになってしまう。

 勿論、このままではモバイル等では使い物にならないので、実際には色々と工夫をして消費電力を押さえ込んでいるワケであり。

 その辺りの状況が垣間見えるのがアイドル時の消費電力の低さで、フルパワー稼働時との差分(と電源の変換効率)を考えると、これはかなり優秀な値と言っていい。
 実際に消費電力やクロック変動を監視しながらベンチ等を回してみると、「すぐに跳ね上がるがすぐに落ちる」という挙動を繰り返している様子が見て取れるし。

 その3◆Piledriverコアのまとめ。

 ・CPU性能では同クロック・同スレッド数のSandyBrigeと比較して、整数演算で1割減、浮動小数点で4割減。
 ・現在のソフトウェア状況を鑑みればコア構成も特に問題無いと思われる。
 ・TurboCoreって意外と効き易い。
 ・相も変わらず得手不得手が強烈。
 ・省エネ制御は優秀、けど本気出すとやっぱ熱い。やりくり上手の大喰らい。

 取り敢えずまとめるとこの辺りかな。

 まず、性能面。
 IPCとかコア絶対性能は確かにボロ負けだが、パッケージとしてのコストパフォーマンスという見方をすれば悪くない。
 この辺りはもうAMDは「織り込み済み」でしょう、この値段だし。
 これはコレでありだと思いますよ。

 #勿論もっと高性能なCPUコアが載っていれば嬉しいに超したことは無いのだけど。

 CPUコア・スレッド構成についても然り。
 WindowsXPが出回った頃と違って、Windows 7や8、そして最近のアプリなら4コア程度ならそこそこ効率的に回せるようになっている。
 なので、実際にシステムを使う状況では、Intel CPUとのコア特性の違いもあまり問題にならないかと。

 #逆にこの時代だからこそPiledriverコアでも許されるというか。
  これが8コアとか言い始めるとまたおかしなことになるのだが・・・FXシリーズはここがネックだよなぁ。

 あと、TurboCoreは意外と回る模様。
 当方はSAMURAI MASTERという時代物を取り出したが、世間を見ればこれより冷えて静かなCPUクーラーなんかいくらでもある。
 かなり多くの環境でTCの恩恵にあずかれるのでは。

 更に、相も変わらず得手不得手は強烈。
 消費電力を監視していると面白いのだが、ベンチ全力で回している筈なのに電気全然喰ってないよ何コレ、という状況が結構見られる。
 要するに命令デコーダが追いついていなくて実行ユニットがサボっている、或いはその逆になっている状態になっているということで、そんな状況では勿論ベンチの値も低い。

 #これでもBulldozerより改善されたらしいので、そうなるとBulldozerって…(以下略。

 最後に、省エネ制御については優秀だという感想。
 かなり細やかに制御していて、何としても最低限の電力で動かそうと涙ぐましい努力をしている様子が伺える。
 が、フルパワーを出すとIPCの低さが露呈してしまうワケで。
 一言で言うなら「やりくり上手の大喰らい」というところか。

Share