Intel AMT7.0の出来が良すぎて(以下略。

 とある因果でIntel vProの最新版のことを色々と調べていたのだが、結論としてその出来の良さに驚愕してしまったというか、圧倒されてしまったというか。
 以下、備忘録。

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 AMT7.0の恐ろしいところは、従来は相当な金額をかけても色々制限がかかっていた「デスクトップで実用になるグラフィックス性能」と「リモート管理」がほぼ制限無く両立出来ていること。

 リモート管理自体はサーバ向では今時出来て当たり前だが、これはiKVM専用チップを使用したもの。これはリモートで接続出来るというメリットこそあるものの、その性能はあくまでおまけ、デスクトップ使用なんて論外。
 一方で、デスクトップ使用自体をメインにすると、ヘタすると本体より高い外付けのiKVMを使用するということになるが、これで使い物になるのはアナログVGAのUXGA(1600×1200)まで。最近流行のHDMI@Full-HDなんてどう頑張ってもムリ。
 従って、リモート接続とデスクトップ接続は低コストに両立は出来ない、というのが従来の常識だったのですよ。

 ところがAMT7.0では、これが両立出来てしまう。つまり、普段はWindowsのAero他デスクトップをフルに使いつつ、いざという時はリモートから全て面倒を見る、ということが現実的に出来てしまうということ。
 分かる人には分かるが、このインパクトは相当なモンでっせ。

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 とはいえ、現状ではこのAMT7.0、自作ではそう簡単にECCメモリとの両立は出来ない。

 現状、自作でAMT7.0を有効にしようとすると、Q67搭載のIntel純正デスクトップマザー(Mini-ITXが1枚、Micro-ATXが2枚)とvProに対応出来るCPUを組み合わせることで実現可能。65W版の2500Sか2400Sがド定番といったところですか。ちなみにグラフィックス強化版の2405SはvPro非対応です、はい。

 ところが、Workstaion用マザーではAMT7.0が有効になっているものが存在しない。ハードウェア的には対応出来るC206を積んだ搭載マザーは、AsusからP8B WSってのが出ているが、コレについては現状AMT7.0対応という話が無いので、まぁ対応していないと思われる。

 とはいえ製品自体は存在するのがまた何と言うか・・・ということで、ブツが無い、というワケではない。
 例えばIEI製工業用マザーIMBA-C2060/IMBA-C206。何れも正式にECCメモリとAMT7.0をサポートしていて、価格は$500前後。

 ちなみにメーカー製WorkstationではHP(Z210)と富士通(CELSIUS W510/J510)はvPro対応を謳っているが、これもAMT7.0に完全対応しているかどうかは不明。更に悪いことに、こういうメーカー製Workstationでは¥が相変わらずトンでもないし、筐体は非常に中途半端だし、おまけにHP製品ではDual Display接続は正式サポート外らしい(BIOSで設定を変えれば表示は可能らしい)。

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 最後に、これは本気でIntelにカンベンして欲しいと思ったこと。

 ・同じCPUシリーズでクロックやコア数以外のスペック差があり過ぎる。
  せめて型番で分かるようにしてくれ。

 ・メーカー製PCなんかで「Intel i5 vPro CPU」という表記があるが、そんなCPUは存在しない。
  つ~か頼むからシリーズブランド名をCPU名に入れ込むクソ面倒なことはやめてくれ。

 以上、まぁこんなところで。

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何故自分がECCメモリを信仰しているのか、或いは信仰を継続出来るのか。

 本文は長ったらしいので、まずまとめ。

 メリット
 ・メモリチップ故障他トラブル発生時に検出出来る可能性が高い
 ・ソフトエラーに対する耐性が向上する

 デメリット=維持コスト
 ・十分高品質なnonECCメモリと同等品質のECCメモリの値段差はそこまで大きくない
 ・低価格なマザーボードとCPUという選択肢も未だ残っている

 結論
 メリット>デメリット、よって信仰は継続する

 以下、うだうだ。
 長文駄文注意。

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 まず、メモリチップ故障検出について。

 実は当方がECCに一番期待しているのはコレだったりする。メモリ故障や相性トラブル等が発生した際、それが検出出来るということ。

 個人的な感覚かも知れないが、PCを使っていて一番イヤな状況は「データが無くなる」ではなく「データが化ける」ということなんですな。
 というのは、一般的に「データが無くなる」ってのは明確な故障やトラブルで、実際にデータがロストした場合そのことを直ちに認識する確率が非常に高く、慌ててリカバリをかけることが出来る。
 ところが「データが化ける」というのは一般的にその状況がその場では認識できず、ヘタするとずっと気づかず、いざ気づいた時には既に手遅れ、という状況に陥る可能性が決して低くない。俗に「サイレントクラッシュ」と言われる状況、これはホント勘弁して欲しいです、はい。

 #他にもパリティを使うRAID(RAID-5/6)では管理or運が悪いと発生する可能性がある。ので、個人的にはRAID-5/6はあんまり好きではなく、単純ミラーのRAID-1が好きなのよ>自分。

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 次に、ソフトエラーの確率について。

 現在のDRAMは一時期の製品よりソフトエラーの発生確率が抑えられている模様。というか、プロセス微細化に伴いソフトエラーの影響を受け易くなり過ぎたため、メーカが慌てて対策を取った結果として一昔前のレベルに戻せた、というのが実際のところらしい。
 それでは、現在のDRAMではどうなんだろう・・・ということで、色々と資料を当たってみたところ、一応こんな感じの数字が出てきた。

 海抜0m地点で、1年間に1つのチップでソフトエラーが発生する確率は2%程度

 ところで、DRAMモジュールには大抵16個(両面実装)のチップが貼り付いている。最近の大容量メモリ搭載傾向に合わせて、両面実装のDRAMモジュールを4枚=64チップ実装した状態を想定すると

 海抜0m時点にあるPCを1年間稼働しっぱなしにした場合、ほぼ確実に1ビット以上のデータ化けが発生する

 ちなみに宇宙線の影響ということは海抜が影響するということで、例えば富士山の頂上ではこの確率は10~15倍に跳ね上がるし、そこまで行かなくとも海抜の高い土地、例えば富士吉田や清里といった場所でも東京の3~5倍程度にはなる。

 さて、この確率を高いと見るか、低いと見るか。
 個人的には正直「気分的にイヤだな」程度。連続稼働を前提にしないなら特別気にする必要もないが、連続稼働する前提だと対策が出来るならしたいよな、とかそんな感じで。

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 最後に、上納金?御布施?について

 現在のところ、このECCメモリ信仰を継続するコストは、大したことは無いんですな。

 というのは、唯一ASUSだけとはいえ通常のデスクトップ向けAMDプラットフォームでECCメモリをサポートしている上に、きちっとしたメーカーブランド品であればnon-ECCとECCのメモリの値段差、実は大したことが無いんですよ。

 #但し、それなりに賢い買い方をした場合に限る。ECCメモリは一般的には「特殊品」なので流量も少なく、何も考えずにそこらのパーツ屋の店頭で買おうとするとトンでもない値段を吹っ掛けられることも少なくないので、念のため。

 更に、ECC信者には最近嬉しい傾向が一つ。
 というのは、SupermicroやTyanといったメーカの1P Xeon/1P Opteron対応マザーの値段が以前と比べればだいぶ下がってきている上に、本家Intelですら1P XeonのCPUの「プレミア」価格をだいぶ下げてきたということ。
 おかげで、使用している部品の品質や装備している管理機能等を考えれば、個人ベースでここら辺のマザーを導入しても十分に元が取れる状況が増えてきたのであり。

 例えばTyanやSupermicroではオンボードLANはIntelかBroadcomが普通だし、SASといえばLSIのチップが載っているのが定番。ここら辺のモノを単品の拡張カードとして普通のデスクトップ用マザーに追加するコストを考えると、これらのチップが最初から載っているTyanやSupermicoのマザーを買うのと殆と変わらなかったりする。しかもその上、特にSASなんてのはデスクトップ用マザーでは相性問題を起こし易いので、組み合わせはある程度慎重にならざるを得ないが、最初からオンボードなら少なくとも最低限の相性問題はクリアしている。

 #とはいえ2P以上は相変わらずウホウホなお値段。1Pだけ下がってるのは各社の意図というか戦略だとしか思えん。

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 とまぁ、そんなところで。

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SSDと部品屋とSeagateとSamsungと。

 少し前に「Samsungは頑張るんじゃないかね~」とか書いた途端にSeagateがSamsungのHDD部門を買収って・・・
 まぁ何だかなぁなんですが、これでまたHDD業界が「ちょっと面白い」ことになってきたので懲りもせずまた書いてみます。

 HDD事業自体の採算がどうだとか、規模と競争力とか、その辺りの当たり障りのない話は既にあちこちで散々出ているので放置するとして。もっと面白いのはこれで見えてきた「各社の将来戦略」だと思うのだけど。

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 Samsungは赤字減らし、Seagateはボリュームやアジア地域でのシェアを獲得・・・なんて某所で面白くもなんとも無い記事があったが、個人的にはHDD事業の移動については「おまけ」だと思っている。
 SeagateとSamsungの両者の真の狙いは、ずばり。

 Samsung製のSSDの拡販

 だというのが、自分の感想。

 ・まともな自社製SSDが作れず将来戦略が描けていなかったSeagate
 ・Intelを敵に回して戦えるだけの販売チャンネルとブランドが欲しかったSamsung

 の利害が一致した、そういうことだと思っている。

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 とはいえHDDについても結構面白いことが起こってしまったのであり。

 というのは、Seagateに限らず、WDも旧HGSTも、大手HDDメーカは何処も今まで「全部品の自社&系列内開発を原則優先」という体制をとってきていたのですよ。そしてSeagateは開発費をケチって技術開発でWDに突き放された、と。

 ところがここで、「原則として部品は社外調達」という体制でやってきていたSamsungを統合することに。
 こうなると、部品調達に関して「直近」と「将来」という二つの問題が出てくる。この問題をどうするかこそが、Seagateにとって会社の命運を将来にわたって決めかねない、極めて重要なお話。

 とはいえ、製造キャパシティを考えると直近としては部品を外部調達せざるを得ないので、一時的にせよ部品の外部調達率が跳ね上がるのは間違いない。
 また、今後数年というスパンではこの辺りは変えられないハズ。何故って、従来Samsungに部品を供給していた各社もそれなりに投資をしているワケだし、契約的にもそう簡単に「やっぱやめた」と言えるようにはなっていない筈なので(主として金額的に)。
 更に、幸か不幸か、現在のSeagateの自社内開発部門がWDと比べて立ち遅れているために、従来Samsungに供給されていた部品(主として昭和電工のプラッタとTDKのヘッド)が直近では対WD戦の武器になる、という事実が。

 さぁ、どうするSeagate。これからの選択肢は4つだ。

 1.あくまで自社開発生産にこだわり、研究開発投資を増額し、部品工場を拡張する
 2.あくまで自社開発生産にこだわり、研究開発投資を増額するが、部品工場は部品メーカーから買ってくる
 3.部品メーカーの製造部門と開発部門をセットで買収し、自社内に取り込む
 4.自社部門をコスト優先、外部調達を性能優先という風に、ポジションをズラして平行存続させる

 研究開発の効率という意味では4は厳しい。どうしても重複して無駄な部分が出てしまうので、それがコストに跳ね返る。
 とはいえ一種「保険」になるのもまた確かであり、全てが上手く回れば低コスト品を大量に供給することでWDからシェアを奪い返すきっかけが作れるかも知れない。

 幸い?Seagateは当分株式公開企業のままでいそうなので、この辺りの決断が実際になされれば、決算その他の公開情報から推測出来ると思われる。それぐらいデカい話だし。

 ということで、これから暫くのSeagateの挙動にはちょっと注目、かも知れない。

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 注目といえば、先日Seagateが出した「世界初の1TBプラッタHDDを開発」というプレスリリース。
 コレ、Samsungを買収した「外部部品の調達」の最初の成果、なんでしょうな。

 3プラッタで3TBということで、4プラッタ4TBにしないのは軸※の問題だと思われるが、これ普通に考えると自社開発でないことは明らか(自社技術では現在のところ667GBの量産がやっと)。
 なので、次世代Barracudaの構成は以下のようになると予想。

 ・3TB品についてはプラッタ外部依存、1TB×3枚。

  恐らく昭和電工プラッタに関してはこの1機種向けだけで供給数量が限界になってしまうのと、Seagate側の「ボリュームゾーンの製品で部品外部依存度を高めたくはない」という判断が働くだろうという想像。

 ・2TB品は漸く安定が見えてきた自社667GBプラッタ×3枚。

  漸く安定してきた667GBプラッタを大量生産することで、自社技術の開発継続、ライン構築コストの回収、ボリューム確保といった課題をクリアするだろう、という想像。
 ちなみにSeagateの667GBプラッタは未だにBarracuda LPだけで7200rpm品は出荷されていません、はい。3TBなXTは600GBプラッタだし。

 ・1.5TB品には自社500GBプラッタ×3枚。

 667GBが安定出来るなら750GBプラッタの生産も選別品扱いなら何とかなる筈だと思うし、2プラッタにすると単純に原価が下げられるのだが、数量が出せるかどうかとなると微妙な気がするので、まぁこの選択肢は無いかな、と。

 その点、500GBプラッタなら既にニアライン向にも採用している程実績があるし、ある意味現在のSeagateでは「安全パイ」ライン。単純原価を考えれば3プラッタはデメリットだが、生産量や品質等まで考えたら十分アリかと。
 更にSeagateは今までもこの「安全パイ」な選択をしてきた実績があるので、今回またこの選択が発動してもおかしくない。

 ※軸について
 3プラッタと4プラッタではプラッタ重量も軸長もだいぶ違うので、当然要求される精度も違うし、これはコストにも跳ね返るということ。
 逆に言うと、高密度プラッタで要求される高精度で且つ4プラッタ乗せられる軸は、未だ量産技術が確立していないか、コスト的に割が合わないか、のどちらかと推測出来る。

 ちなみに、WDが以前の4プラッタ品ではStableTracなんて名前の軸押さえを導入していた(WD製HDDの黒いフタのような部品のこと・・・過去形)のもこの精度絡みの話。
 勿論、これが5プラッタなんて言い出したら更に軸精度が要求されるワケで、そういう意味では5プラッタ品を惜しげもなく市場に投入してきているHGSTはこの辺りの精度出しには「手馴れている」とも言える。

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 さて、以上全てをひっくるめて、WD-HGSTの方も見てみましょうか。

 HGSTのEnterprise SSDってIntelと共同開発していたこと、覚えている人はどれぐらい居ますかね。
 またWDは過去にSSD屋を買収してもいます。組込系しかやっていなかった会社なので日本じゃほぼ無名でしたけど。

 まあそんなWDだが、メインストリームのSSDについては・・・という状況。製品としてはWD SiliconEdge Blueというラインを立ち上げてはいるものの、生産量的にも少ない上に、正直あまり「売る気」も見えない。

 ♯ちなみに中身はJMF612+128MB~512MB Cacheらしい。

 なので、もしSeagateが本気でSamsung製SSDを全世界で展開し始めたら、WDは相当厳しいポジションに追い込まれる可能性も否定は来ない。
 何しろ自社で持ってるSiliconSystems製コントローラをメインストリーム方向に展開しなかったということは、まあそれなりの理由がある筈で。
 もし(真っ先に想像される)コストがその理由だとすると、一式を全て自社で揃えて来るSamsung-Seagate連合と戦うのに相当厳しいことになりかねない。

 ・・・この際SandForceでも買収する?
 個人的には十分アリだと思うけど、問題はそもそも買収に応じてくれそうにないってことだろうな。

 ♯Indilinxは既にOCZに買収されちゃったしねぇ。
  HDDではHGSTの買収で完全全方向展開(低価格低性能~高価格高性能まで)で死角無しになったんだけど。

 ◇

 更にここまで全部ひっくるめて、東芝について考えてみたら。
 えっと・・・以前より更に手の打ち様がなくなったというか、ぶっちゃけ八方塞のような。

 いやほんとに、HDD事業を本気で続けるだけの理由ってどっかにあるのかしらん。
 ボリュームおよび利益の薄さが圧倒的なデスクトップ用HDDがラインナップに存在しない分、今のところ順当に利益が出ているようだが、Samsung-SeagateとWD-HGSTの圧倒的な物量作戦を相手に、これがどれだけ持ち堪えられるか。

 実際赤字になり始めたら、それでも維持するメリットってのが本気で何も思いつかない。
 しかも東芝は自社でコントローラもFlashも、ついでに生産設備まで持っている。ストレージ市場での存在感という意味では、HDDがダメになったらSSDを前面に出して戦うことも出来る。

 ・・・やっぱり、HDD事業にこだわる必要性が見当たらない。

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 とまぁ、今回もダラダラと駄文を書いてみましたが、いかがでしょ。

 実際に1TBプラッタが7200rpmで回るドライブが出たら、連続転送速度の最外周値では200MB/Sの大台に乗せて来る可能性もそれなりにあるワケで、本当にそうなったらちょっとしたモノかも。

 ♯HGSTの600GBプラッタが7200rpmで160MB/S近く出せるので、プラッタ密度1.6倍をトラック幅と直線記録密度で平方根して1.26倍。160×1.26=201.6・・・ギリギリ何とかなるかも?

 まあそんなプラッタ容量競争もアリだが、個人的には4TB HDDがいつ出るかにも興味がありますな。
 以前、旧HGSTが800GBプラッタ5枚の試作品を完成させている、というウワサが出たこともあるので、「非1TBプラッタ」のままWD-HGSTが4TBを先行発表する可能性も十分あると思いますよ、えぇ。

 まあ、兎にも角にも。
 事実上二社の「寡占状態」になったHDD業界、明日はどっちだ。

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