HDDってどうよ、という話(後編)。

 取り敢えず、当方のHDDについての「実感」をちょっと書いてみる、続き。
 今回はHDDを長持ちさせるコツと、物置に使うのってどうよ、という話。

 ◇

 Q6:HDDが長持ちするコツは?
 A6:適温適湿適気、強固な固定、良質な電源、連続稼働、適時書換。

 HDDって使い方次第で本当に寿命が変わりますよ。
 ということで、取り敢えず以下5項目を挙げておきます。

 1・適温適湿適気。

 諸説あるが、当方のお薦めは30~35度ぐらい。温度高過ぎは当然駄目だが、流体軸受の流体=オイルは低温だと粘性が高くなるため軸へのストレスが高くなると言われているので。

 #ちなみに出始めの頃の流体軸受は時間経過による劣化が激しく、特に低温では粘性が急激に高くなってスピンアップ出来なくなるという障害が多発した。
  対策としてHDDを余熱して振動を与えてから起動する、というバッドノウハウがあったり。
  最近はここまで酷い話はあまり聞かないが、それでも流体軸受の経年劣化そのものは程度の差こそあれ現在でも不可避とのこと。

 また、湿度が低く、空気がキレイなことも重要。温度変化も少ない方が望ましい。

 あくまでも感覚値なのだが、ホコリっぽい部屋で使っているHDDは早死にし易い気がする。
 逆にホコリが少なく温度変化も少ない真っ当なデータセンタでは故障率が低いような。
 まぁ「ストレージが設置されるのにホコリっぽい場所」というのはご想像の通り一般的にその他の条件も劣悪なので(温度変化が大きい、雨が降ればすぐ高湿になる、床から振動が来る、電源フラフラ等挙げればキリない)、ホントにそれだけが原因かと言われると・・・だが。

 2・強固な固定。

 要するに振動を抑え込むということ。PC筐体に共振してブンブンいっするようなのはもう最悪の例。

 最近のデスクトップ機は防振ゴムを挟んで固定する方法をよく見るが、筐体に共振しないメリットがある一方で、設計がマズくてHDD自体は却って振動し易くなってしまっているという代物もあったりするので、その辺りは注意かな。

 3・良質な電源。

 ノイズやリップル、電圧変動が少ない電力を供給してあげましょう。

 4・連続稼働。

 先に書いた通り、起動停止の時にトラブる可能性が高いので、逆に言うと起動停止させなければトラブる可能性は低いということ。

 5・適時書換。

 これには2つの理由がある。以下の通り。

 理由1・磁気記録は経年劣化するものなので、劣化してエラーが出る前に新しいデータで上書きしましょう。
 理由2・頻繁に読書することでファームウェアがプラッタ記録状態を検査するタイミングを増やし、エラーセクタが出る前に代替させるようにしましょう。

 細かいことは次項で書きます。モロ被りなので。

 ◇

 Q7:HDDを光ディスクの代わりにデータ保存用にするのは?
 A7:はっきり言ってお薦めしない。

 最近HDDをストッカにしている人が増えている気がするが、HDDというのはデータ保存には向かないんですよ、ホントに。
 理由は以下の通り。

 ・HDDプラッタは通常数年程度、ハズレを引くと半年程度しか記録データが保たない。
 ・HDDの軸受は経年劣化する上、劣化すると直接的に物理クラッシュの原因になり得る。

 そもそもテープと比べても部品構成的にデータ保存向けではない上に、設計でもそんな用途は想定していないんですわ。
 それでもどうしてもHDDをストッカにするなら、以下のような点に留意して運用すると多少はマシではないかと。

 ・数か月に一度は全セクタのリードチェックを行い、更に暫く通電しておく。

 HDDは磁気記録である以上、記録原理「時間が経てば記録データが弱くなる」ことは避けられない。そしてデータが読み出せなくなればそれはエラーとなる。
 とはいえ通常は一度記録すれば数年程度なら全く問題無く読み出せるので、普通はあまり意識する必要はない。
 だが、希に半年程度で読出エラーになってしまうハズレなHDDがあるのもまた事実で、しかも実際にエラーになってみないとハズレであることが分からないという。

 ♯安かろう悪かろうのデスクトップ機だけなら兎も角、希にエンタープライズ機でもハズレが混ざってきたりするから油断ならない。

 そこで、数か月程度のインターバルでリードチェックをする意味はというと。
 昨今のHDDはリードしながら記録面の状況をチェックしていて、明らかに劣化しているようだと実際にエラーが出る前にセクタ代替したりセクタ上書きしたりしてフォローする仕組みになっているのですわ。
 この仕組みに発動してもらって、データを保全しようという話。
 暫く通電しておくというのは、このデータ保護の仕組みが「アクセスが暫く来ない時に動き出す」というファームウェア実装のHDDに対応する為。

 ♯RAIDでよく動いている冗長性確認のベリファイにはRAIDの論理整合性確保の他にこのデータ保護効果もあるのです。

 勿論この仕組みも完璧ではないので、HDDをデータ倉庫に使うことは本当にお薦めしないのだけど。
 昨今では他に大量のデータを安価&コンパクトに保存する方法も見当たらなかったりすることもあるので、仕方ない面もあるのかな・・・と。

 ◇

 まあ以上うだうだ書きましたが、最後には結局コレの要素が相当大きいです。

 「運」

 今更ソレかよ、と言われるかもしれないが、実感なんだから仕方がない。
 それだけバラツキの大きい製品なんです、HDDって。

 そういうモノとしておつきあいするのが一番大事、だと思います、はい。

 ◇

 最後に、例の会社(BlackBlaze)から新ネタで、機種別のレポートが出てきたので一言。
 かなりアクセス負荷軽い使い方してるんだろなと・・・24時間通電している以外はデスクトップに近い使い方に見える。

 そして各モデル別の故障率でも、当方の感覚と大方ズレてはいないかな、と。
 HGSTはハズレ機種&初期不良を喰らわなければ安定して長持ちするとか、WD Green 3TBは腐ってるとか。
 そして7K2000・7K3000・5K3000のド安定っぷりも数字で証明されてしまいましたと。
 逆に、ST3000DM001なんてもう少し安定していると思ってたのだが、結構壊れているのね。そんな印象無いのだけど・・・。

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HDDってどうよ、という話(前編)。

 某社がHDDの故障率がどーたらこーたらというレポートを発表したおかげで、これを話のネタに取り上げている各所で何か妄想繰り広げている人達が居た模様。
 エンタープライズHDDはカネの無駄だとか・・・まぁこういうこと言うのはモノも現場も知らない人間とほぼ相場は決まっているんですが。

 ♯これだけコスト削減圧力が強い中、ホントに無駄だったらエンタープライズHDDなんてとっくに消えてますわな。
  あとあのレポート、入っている情報量が少な過ぎて、正直何の参考にもなりませんて。

 取り敢えず、当方の「実感」をちょっと書いてみる。
 まあ結構な数のHDDを扱っているとはいえ、真面目に統計を取ったワケでもない「実感」なので。取り敢えず世間ではこれを出しておけばいいらしい?

 「意見には個人差があります」

 ということで。
 何か文章でちんたら書くとひたすら読みにくいので、QA方式で。

 ◇

 Q1:エンタープライズHDDは故障しないの?
 A1:がっつり故障します。つかホントもう少し故障率下げられないのかいな?>各社

 Q2:エンタープライズHDDは故障しにくいの?
 A2:ある程度負荷がかかる状況なら明らかに。

 ※当方には違和感があるのだが、最近ではニアラインもエンタープライズの領域に入れてしまうらしいので、以後そういう扱いで。

 本当に負荷が軽い使い方なら、デスクトップHDDとニアラインHDDで大差はないですな。
 だが、ある程度負荷がかかる(アクセス頻度が高い、使用時間が長い)使い方をするなら、エンタープライズ品の方がやはり優位と。

 ♯所詮は選別品でも、その程度の差は出るぐらいに品質のバラつきがあるんですよ。

 但し最近では、この辺りの考え方も変わってきていたりするのも事実ではある。

 一般的に、エンタープライズ品の価格の高さは、保証期間の長さや故障時の対応の手間というモノと引き換えというか釣り合いになって許容されている。
 この理屈が成り立つには、故障した時に交換出来るのは同一のHDDに限るとか、HDD交換の後はRAID再構築等の後処理が必要だとか、色々前提がついているのですよ。

 それでは、この前提が無ければどうなるか。
 故障したらその時一番安いHDDに交換すればいい、後処理は勝手に行われるから何も考えなくてよい、となると、デスクトップHDDが激安な故に故障率が高くとも結局トータルコストでは安くなる可能性がある。
 そして分散冗長化ストレージ等、そういうストレージを実現する仕掛けや仕組みもここ数年で俄然「使える」ようになってきた。

 レポートを発表した某社も結局この「実はデスクトップHDDを使い潰していった方がトータルコストで安い」というセンを狙っていて、今のところそれは上手くいっている、ということでしょう。

 ◇

 Q3:HDDが一番壊れやすいタイミングは?
 A3:スピンダウン・スピンアップ時。

 要するに物理的に大きな負荷がかかるタイミングですよ。

 プラッタという静止物を動かし始めるという慣性の法則に加え、軸受の摩擦もあるので、モータには一番負担がかかる。
 更に今では主流のランプロード方式でもプラッタに激突しないというだけで(注:語弊あり)、ヘッド待避・復帰には相応の負荷がかかる。

 #某社のIntelliParkのデフォ値は正直やり過ぎだと思う。

 あと「電源入れたら故障したので起動しない」という言い方を良く聞くが、結構な確率で「実は前から故障していて、再度電源を入れたからそれが発覚した」というのが正しい。
 メカ系にダメージが来ている場合、動かしている間は何とかギリギリ踏みとどまっていたが、電源を落としたら最後もうどうにもならない、再起動しようがない、なんてことは珍しくないので。

 ◇

 Q4:トラブルの原因で一番多いのは?
 A4:駄目ファーム。

 これはもう圧倒的に、ファームが原因のトラブル。
 一般にはIFとの相性程度で済むのだが、時々「特定のアクセスパターンを繰り返すと挙動が怪しくなる」なんていう超絶駄目ファームウェアすら平気でリリースされることすらあるのがこの業界ですよ。
 更に、ファームウェアのバージョンが変わったところで変更内容なんて公開されていないので、特定の不具合や相性が解消されたと思ったら今度はドライブの「癖」まで変わってしまって慌てる、なんてことも実際あったりする。

 注)デスクトップユースでは「あんまり」問題になりません。
   この項目についてはここの管理人の過去のイロイロな経験の恨み、ではなく感想が・・・。

 ◇

 Q5:最近のHDDカチャカチャうるさいのは何故。
 A5:プラッタ回転数を落として省電力モードに移行出来るよう、ヘッド退避させてるから。

 WDのIntelliParkが有名だが、それより前から2.5’では省電力と衝撃対策の為に実装されていたし、最近ではWDだけでなく他社でも実装されている機能。
 一定時間アクセスが無いとヘッドを退避させている音ですな。
 でも、何故ヘッドを退避させる必要があるのかってのは意外と知られていないらしいので。

 理由はというと、プラッタ回転数を落とすため。
 回転数が落ちればモータに供給する電力は少なくて済むため、省電力になるというワケです。

 但しこんなことをするとヘッドを浮かせるための浮力も不安定になっていまうため、放っておくとヘッドがプラッタに激突してクラッシュしてしまう。
 それでは困るので退避させる、というワケですな。
 同時に耐衝撃性も高くなるワケですが、3.5’ではあくまで副次的な効果なのに対し、2.5’では結構重要なポイントだったりします。

 ◇

 何か長くなってきたのでここで分割。
 お次のネタは「HDDが長持ちするコツは?」と「データ保存用にHDDってどうよ?」という話で。

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Steamroller 16Core Opteronは死んでいない?!

 ・・・マジですか。

 CESでもあんまり楽しい話は無かった上に、国内PCパーツは為替の影響で値上がり傾向、NAMMまで楽しいそうな話は聞かないかな・・・なんて思っていたところに、とんでもないニュースが飛び込んできましたよ。

 AMDが開発者向けに公開している「プロセッサの仕様と癖のまとめ」というドキュメント(Optimization Guide)が、2年ぶりに改訂されたんですが、その中にこっそりととんでもない表記が。

 >Rev 3.08 Extended coverage to Models 30h–4Fh 

 AMD Family 15hというのは要するにBulldozerで、10hが初代Zambezi、20hがPiledriver、30hがSteamroller(先日発売されたKaveriがコレ)、そして40hがExcavator(予定)なので、このドキュメントが正しいのであれば、パフォーマンス向けCPUをまだAMDは諦めていないということになる。

 但しこのテのドキュメントについては「仕様は出たけど現物は?」ということも往々にしてあるので、過度な期待は禁物なんですよ。
 世の中にはサンプルチップどころか実動する開発用ボードまで出来たのに結局お蔵入りってブツすらあるんだし。

 ・・・でも、でもね。
 こんな具体的なこと書かれてしまうと期待しちゃうじゃないですか。

 ・Steamroller、Excavator世代は1ダイで16コア
 ・1ダイに2つのHTリンク、1つのPCI-Expres 3.0リンク、2つのHT/PCIe3.0切替式リンクを装備
 ・CPUコア、メモコン、IOリンクをクロスバー接続

 ちなみにこれ、昔一瞬名前が出てすぐ消えた、Socket G2012のスペックそのものです。

 ぶっちゃけこんなサーバ用途しか考えていないCPUがAM3+に来るとは思えないが、GF 28nmが使えればSteamroller 16コアを3GHz超で回しても115Wで収まる筈なので(現行6380は2.5GHz/115W)、同一消費電力枠ならばクロック向上+コアのIPC改善で最大40%程度の処理能力向上が期待出来る筈。これ結構な違いですよ。

 ♯まぁ勿論これでもコアあたりの実行効率ではHaswellには追いついていないが、Zambeziのようにダブルスコアなんて差をつけられることは無くなるだろうし、その分物理コア数でカバーするのがBulldozerなので。

 更に希望的観測に妄想が入った状態で書き続けると、Bulldozerのコンセプトは登場当時より現在の方が「比較級で」受け容れられ易くなっている。IntelですらXeon E5でコア数を急速に増やしているように、既にそっちの方向でしか処理速度の向上は望めないという事実が漸く浸透し始めたので。

 ・・・さて、Socket G2012は日の目を見るのか。
 CPUは発売されるのか。どっか付き合ってM/B出してくれるOEMはあるのか。
 というか、こんな状況でTyanとSupermicroがAMDサーバ部門にお付き合いしてくれるのか。

 新年早々、ちょっとだけ妄想のネタが増えて嬉しい管理人でした、とさ。

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自作PC「以外」且つハードウェア「だけ」の観点から2014年を予想してみる(ARM編)。

 前々回、前回に引き続いて、自作とはやや遠いがハードウェア系で個人的に気になるネタをいくつか。
 最後にARM編。2014年はx86とARMが本気で正面衝突する元年でもあります。

 D◇nVIDIAからTegra4iとTegra5登場、この製品の居場所はあるのか?

 ARM市場、実に混沌としております。2013年の市場シェアを上から並べるとQualcomm(お馴染みSnapDragon)、Apple(まぁ何といいますか)、MediaTek(PCヲタには光学ドライブ制御チップでお馴染み)、Samsung(Exynosは自社製品搭載割合がダントツ)、Spreadtrum(中華な製品)。上位80パーセントをこの5社が占めているとはいえ、それ以下の所にもまぁ有象無象が蠢いているワケで。
 そしてPCユーザにお馴染みのnVIDIAはというと・・・まぁ、圏外です、はい。

 こんな市場で、冗談ではなく生き残りを賭けて、nVIDIAが今年2製品を投入。
 去年Intelと同じ失敗をしたnVIDIA、今年巻き返せないと結構本気で厳しいことになります、はい。
 が、どちらも「出遅れ感」が漂うというか・・・。

 ♯ちなみにIntelと同じ失敗というのは「LTEモデムが完成しなかった」。
  Tegraはポジション的にはSnapDragonと同じトコを狙っているのに、片やLTEモデム内蔵の全部入り、片やモデムは別会社製品でね、じゃ勝負は見えてるワケです。

 まず一つ目の製品はTegra 4i。
 モノ自体は2013年の早いうちに発表されていたが、現物が出るのは今年に入ってから。
 その間にこの製品のポジションもミッドハイからミッドローに落っこちてしまったが、価格さえ間違えなければチップそのものの競争力は十分に残っているかと。

 もう一つの製品はTegra 5。
 こちらがnVIDIAの本命ですな。
 高いGPU性能はRetinaディスプレイの駆動にも威力を発揮するが、何より現在x86で展開しているCUDAをARMの世界に持ち込むという意味が(nVIDIAにとっては)大きい。

 但しこのチップの立ち位置は、x86なBayTrailとモロに競合する。
 仮にWindowsRTが大成功していたりしたらこの製品の立ち位置も安泰だっただろうが、そちら方面はもう絶望的なので、そうなるとこの製品は相当微妙な感じでは。
 何しろボリュームを出さないと元が取れないのだが、現在の市場を見るとそのボリュームを出すのが難しい。

 ♯前回も書いたが当方は「高価格タブレットではWindowsが動くx86か、AppleのiPadしか生き残れない」と思っているので。

 しかもこのチップ、CPUが32bit ARMなんですよ。
 今年はハイエンドからミッドレンジまで一気に64bitに切り替わるので、32bitでハイエンドを名乗り続けるのは苦しいかと。
 nVIDIAの64bit ARM統合は次世代のTegra 6で、コレはGPUがMaxwell世代になるので早くとも2014年内ギリギリと言われていて、それまではこのチップで戦うしかない。

 ちなみにnVIDIAはチップ採用メーカへのサポート体制の悪さには定評があったので(サポート体制の良さもQualcommの一つのウリ)、コレをどうにかしない限りいくらチップが良くとも顧客は付かないのだが、この辺りがその後改善してきたのかは不明。
 また、nVIDIAはSHILDやTegra NOTEといった自社ブランド製品を出してきているが、コレも悪く言えば「誰も買ってくれないから自社でTegra採用製品を作るしかない」ということでもある。同じ自社製品採用でも世界中で怒涛の数を売りまくってるSamsungとは話が違うワケで。

 ・・・さて、Tegra4i&Tegra5採用モデルはどれくらい出てきますかね。
 個人的には相当厳しい戦いだと思いますよ。いや本気で。

 ♯最低でも相当なディスカウントが必要なのではないかと。

 E◇MediaTekから64bitARM&LTEモデム入りチップ登場、国内製品に採用されるか。

 MediaTekというとCD-Rを思い浮かべるのは年寄りで、最近は比較的高性能な中華ケータイの中身は大抵コレが入っています(先程取り上げたSperedtrumはもう少し低価格で、その下にはまた有象無象が続く)。中華ケータイは今まで3Gだけあれば良かったので、LTEが入っていなくとも十分商売になったんですな。

 ところが今年このMediaTekから、いよいよLTEモデム内蔵チップが出ます。
 このLTEモデム、実はDoCoMoとその仲間達=国内メーカ連合が開発した技術がベースになっているんですよ。

 ♯ライセンス供与したのは2010年、当時はDoCoMoも国内メーカもここまで市場が変化するとは思っていなかったんでしょうなぁ。

 しかも、Big-LittleのOctaCore構成ということで、CPU部分の性能も悪くない上に、SnapDragon等と比べて値段も比較的安くなりそう。
 今のところLTEが無いばかりに中華ケータイ以外では殆ど見かけなかったMediaTekの「世界進出戦略」チップなのです。

 で、個人的にはコレ搭載製品が国内デビューする可能性は相当高いと思っていますよ。
 少なくともDoCoMoのLTE回線との相性という意味では折り紙付きだし、最高性能ではないけれども相当コスパの高い製品が作れるし。

 同じセグメントにSnapDragon410という対抗製品を(ハイエンド&ドル箱なSnapDragon800の更新前に)速攻で投入してきた辺り、Qualcommも相当警戒している。
 それだけの完成度と言われている製品なワケです。

 F◇AMDからSeattle登場、64bit ARM Server市場立ち上げという博打に臨むも、2014年中には特に動きなし。

 最後にARMサーバの話を。

 2014年、ARMのサーバ向けチップがいよいよ登場。IntelのATOMとの勝負に挑むワケです。
 対するIntelの先制攻撃はというと、正直相当強い。Silvermontは出来が良いし、この後もAirmont、Goldmontと続いていく。
 しかもこの市場、ARMを敢えて選ぶ理由が見当たらない。
 前回のエントリでは「スマホでx86を選ぶ理由が無い」と散々書いたが、同じことですわ。

 なので、この市場はそう簡単に立ち上がらないと思いますよ、自分は。
 2014年中には、そもそもこの市場が立ち上がるかすら分からないかと。

 一方で、例えば去年「googleがARMペースの独自チップを開発する」という噂が出たように、より高い電力効率を目指して汎用品から専用品に切り替えようという動きが出始めているのも確か。
 そうなってくると、カスタマイズが簡単で既に多種多様な目的に特化したチップの実績もある、ARMの強みが活きてくるかも知れない。

 ♯AMDはx86でもカスタムチップは作れるし、現にPS4にもXBox Oneにも提供した実績があるので、別にARMでなくとも・・・という気もしなくもないけど。

 まぁ何れにしろこういう動きも本格化するのは早くとも2015年以降だと思うので、やっぱり2014年中には何も起こらないのではないか、と。

 ♯googleが本気でARMカスタムチップを作る気になった時、それをAMDが取れるかどうかは(AMDのARMビジネスにとって)相当大きなポイントになるとは思うけど。

 ◇

 さて、以上色々うだうだと書いてきましたが、皆様の予想はどんな感じでしょうか。

 ARM近辺は兎に角動きが激しいので、下手すれば1年で市場を失う可能性もあるし、逆に1年でシェア上位に躍り出てくる可能性すらある。
 そういう意味ではx86より遥かに「熱い」世界なのです。

 それでは、3回続きネタもこの辺りで終わりです、はい。

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自作PC「以外」且つハードウェア「だけ」の観点から2014年を予想してみる(x86編)。

 前回に引き続いて、自作とはやや遠いがハードウェア系で個人的に気になるネタをいくつか。
 主としてIntelの動きが目立つのだが、ARM陣営だって黙っちゃいないですよ。
 これまた長くなってしまったので、x86編とARM編に分けます。

 A◇Intelから14nmプロセスAtom、Airmont登場。

 IntelのAirmontは現在のSilvermontのシュリンク版で、タブレット向けはCherryTrailとなり、Windowsタブレットが更に省電力高性能に。
 また組み込み向けでも更に低消費電力を実現する、Intelにとって期待の星。

 ♯そして極一部(当方含む)のオモチャ好きにも期待の星。つかSupermicroのRangeley搭載マザーが欲しい・・・。

 とはいえx86組込市場でそこまで高性能なCPUが要求される場面というのは実は多くはなく、現行Avoton/Rangeley(Atom C2000)~次世代(Atom C3000?)の使命は64bit ARMが来る前にマイクロサーバ&高性能組込市場(高性能NAS等)を席巻すること。AMDのARM Serverへの先制攻撃でもあったり。

 B◇Intel怒涛のスマホ市場攻略。Merrifield、Moorefieldを立て続けに投入予定、でも成功見込は・・・。

 あのIntelが未だに攻略出来ていない「最後の聖域」、スマホ市場に向けて2014年は怒涛の製品投入が予定されていますよ。

 まぁ何しろ既にARMでガチガチに固まっている市場、何とか潜り込もうとここ数年色々手を打っているが、どれも上手くいっていないんですわ。
 理由は簡単で、業界の常識であるARMを捨ててまでIntelを取るメリットが何もないから。ぶっちゃけ製品も全く競争力無かったし。
 それに、ARM近辺のプレイヤーは一度x86に乗ってしまうとIntelに全て吸い尽くされるというのを横目で見ていたPC市場で既に学習しているので、心理的抵抗も物凄い。

 既にx86なTablet等を出荷しているメーカをよく見れば、全て昔からPC市場でお付き合いのある会社だったり。
 結局PCのチャンネルを活かして怒涛の「補助金」を流し込むしか市場攻略の方法が無かったというのが丸分かりなのだが、そこまでしててでも何としてもスマホにx86を入れない限り、x86の出荷は先細りする未来しか見えていないのでIntelも必死なんですわ。

 ♯x86サーバ市場は利率こそ高いが絶対数量を考えるとね。

 そんなIntelだが、2014年には一つのターニングポイントが。
 というのは、今年漸く製品に欠けていた要素が揃い、製品ラインナップで「スタートライン」に立つことが出来る見込みなので。

 その要素というのは、具体的には「LTEモデム」。要するにケータイとして肝心の電波周り。
 実は現在世界で一番LTEモデムの実績を持っている会社=Qualcomm、そしてこの会社はスマホでお馴染みARMな統合チップSnapDragon販売元。なので、普通に考えたら「んじゃ全部入りのSnapDragonでいいや」となりますわな。

 ♯ちなみに最新のiPhoneはQualcommのLTEモデムが入ってます。Appleは意地でも自社製CPUを使いたいので。

 これに対抗するには自社でLTEモデムを持つ必要があるワケなのだが、LTEモデムの開発ってのはカネも時間もかかります。今まで継続的に時間とカネをかけてきたことがQualcommの強さの理由なので。
 そこでIntelはどうしたか。大方の予想通り、カネにモノを言わせてLTEモデム開発部門を当時業界大手(昔のiPhoneはここのモデムを使っていた)Infineonから買収、湯水のように開発費を流し込んで漸く自社製LTEモデムを完成たワケですわ。コレが2014年いよいよ量産に入ります。

 まぁ要するに、漸く「Intel製品だけでまともなスマホ・タブレットが作れる」ようになるのが今年なワケです。
 でも、それでx86なスマホやタブレットが増えるかと言われると、個人的には「それはないな」と。

 ♯念のため、3Gで良ければモデムは既にIntelは持っていましたよ。
  でもIntelがターゲットとするハイエンドスマホ市場に今更「3Gだけです」なんて製品は出せないよね、という話。

 C◇Intel製Apple印ARM CPU登場と、外部ファウンダリ製Intel印x86統合チップSoFIAの登場。

 そして今年Intelについてはもう一つ、従来から完全に方向転換した新戦略が発動する。
 Intelの競争力の源となっているFabでの製造受託規模を拡大すること、そしてIntel自身が外部Fabを使った製品を作ること。

 この辺りは要するに、最近の半導体プロセスの開発費がトンでもない金額になってきたということですな。
 金額が跳ね上がり過ぎて、金満Intelですら自社だけでは限界が見えてきたということ。
 なので、他社製品の受託生産も受け入れて、少しでも多くの製品を作り、投資を回収する必要に迫られているというワケです。
 勿論、この先万が一自社製x86ハイエンドCPUの生産が減少することがあっても会社として利益を出し続ける為の保険という意味もあります。

 そしてもう一つ、IntelのFab(半導体工場)には泣き所があるんですわ。
 それは何しろコストが高いということ。高性能高価格を地で行ってるワケです。
 世間には「28nm以降はコストが高くなり過ぎて元が取れるかどうか疑問」なんて声もある中、この馬鹿高い生産プロセスに見合うだけの価格で製品を買ってくれる客を捕まえる必要があって、実はそういう顧客は世界中見渡してもあまり多くない。

 ♯GFやTSMCが20nmを安定させるのに四苦八苦している中、Intelが22nmのBayTrailを大量出荷出来ているのも一重にカネの力でっせ。
  プロセスというのはある程度数を作らないと安定しないので、製品にならないゴミを大量生産してでも早期にプロセスを安定させるのがIntelのやり方。
  おカネが大事なGFやTSMCはそんなにゴミを生産出来ません、はい。

 そんな自社工場で製品を作ってしまったら、性能は良いがどう頑張っても値段を下げようがない。
 ところが世間では今やハイエンド市場は極少数、圧倒的に薄利低価格のボリュームゾーンを取らないと市場で生き残っていけない。その市場では性能は二の次、まずは価格が重視される。

 そこでIntelはどうするか。
 自社設計のx86コアに、そこらのメーカが売っている低価格なIP(部品みたいなもの)を組み合わせて低価格なファウンダリで生産するという、ファブレス企業と同じことを始めるってんですよ。

 ♯なりふり構わぬってのは正にこのことだが、こういう決断が出来てしまうことがIntelの強さでもあるんだろうなぁ、と。

 勿論コレにはかなり博打要素があって、IP組み合わせやファウンダリ生産には今までIntelは持っていなかった経験やカンが必要だし、組み合わせに失敗すると本当にゴミみたいなものしか出来なかったりするし、結果的にIntelブランドに傷がつく可能性もある。
 また、今までのIntelの「高利益前提の高額投資で製品価格を維持する」という戦略も通用しない。タイムリーに低価格な製品が投入出来るか、それが全てと言っても過言ではない。
 それでもこの市場を取りに行くというのがIntelの決断なんですな。

 ♯つかIntelは昔から買収や外部購入では失敗が多いのよね。前述したInfenionのモデム部門だって3G時代はQualcommと張り合うレベルだったのにLTEでは完璧に出遅れたし。

 そしてその最初の製品が、早ければ2014年後半に登場予定。それがSoFIAというワケです。
 とはいえ個人的にはコレ・・・ぶっちゃけ売れないと思うんだよなぁ。

 ♯だって巷にごろごろしているARMの統合チップで困らないやん。
  敢えてx86取る理由が無いし。

 ◇

 とまぁ、こんなところで。
 ARM編に続きます。

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