検証まとめ・・・ Trinity APU の立ち位置は。(Trinity Review No.5)

 さて、Trinityシリーズも5回目。そろそろ〆といきましょう。
 今回はTrinityの用途とか、適したフォームファクタとか、そういう話。

 その1◆Trinityのキャッチコピーを考えよう。

 「どうせ買うなら、楽しい方」

 現在のTrinityの立ち位置を一言でまとめるなら、こんなキャッチコピーになるのでないかと。

 #何だかクルマ風だけど。

 パーツ一式揃えてから、Win8環境でのテストも兼ねて普段使っているアプリの類(非ゲームばかり)を触ったりもしてみたのだが。
 およそ一般的な「ビジネスアプリ」では力不足を感じることは無く、概ね快適に使えてしまった。
 また、電力管理はさすがに完成度が高く、全力稼働時の消費電力は低くないにも関わらず、通常使用では平均消費電力はかなり抑えられている。

 更に、GPUの項目で取り上げ損ねたが、GPUの動画再生支援能力もかなり強力。
 30fps・3MbpsのFull-HD mp4(YouTubeの前面展望動画)を再生して、CPU負荷が3%ってのはさすがにどうかと。

 #ちなみにRadeon 6450+Phenom IIX4 910eだとCPU負荷15~20%程度。

 一方で、CPUの演算能力はというと、はっきり言ってIntelに全然敵わない。
 確かに「大抵の用途で間に合う」レベルには達しているが、でも決して「パワーが溢れている」状態ではない。

 こんなことを考えていたら、何となく最初に書いたキャッチコピーが浮かんだワケですよ。

 その2◆最適な用途は。

 HTPCと、非ヲタク系PCユーザーの普段使いPC。

 「HTPC」

 まずは本命、ホームシアターPC。映像出力が強いのだから、これは当然の帰着点。
 強力な動画再生支援に、充実したデジタル出力。オーディオは何ならお気に入りのDACをUSBにぶら下げましょう。
 プロジェクターや立派なオーディオ機材が無くとも、自宅TVがある程度大きかったり、ちょっと高いヘッドホンを持っているなら、HTPCの楽しさに入門することは出来ますよ。

 ・・・とはいえこれは当たり前過ぎる話。
 個人的には次が本命だと思っている。

 「非ヲタク系PCユーザーの普段使いPC」

 Trinityの性能バランスを見れば見るほど、ヲタよりも非ヲタにこそウケがいいのではないかと真剣に思ってしまうのであり。

 何しろ、日常での使い方を前面に押し出す非ヲタ向けのアピール方法ならば、CPU性能がネックになる場面は圧倒的に少なくなる。
 今時非ヲタでもYouTube・ニコ動・USTREAM辺りはほぼ常識だが、強力な動画再生変換支援はCPUの弱さを十分にカバーしてくれる。
 デスクトップでのアプリ画面描画も、何しろGPUが強力なのでサクサク動く。

 これがヲタ向けとなると、途端に「CPUが弱いから・・・」という話になる。

 なので、非ヲタに売るPCにこそTrinityは向いている筈。ここはAMDの営業が頑張ってPC各社に売り込むべき。

 #「低価格エンターテイメントPC」は全部Trinityで良いと思うんだ。

 その3◆最適なフォームファクタは。

 Mini-ITX。これしかない。

 全部載せで、小さくて、楽しくて、AV機能の充実したマザーが欲しい。
 3画面フルデジタル出力と高音質HD Audioは最低限、Bluetoothや無線LAN辺りも積んでると嬉しい。
 リモコンなんか付いていると更に遊べるかも。

 こういうマザーに65W版のTrinity、この組み合わせが恐らく一番「Trinityの強み」を活かせる組み合わせだと思う。

 #この記事を書いている時点で未発表だが、個人的にはAsusとかZOTAC辺りに期待かな。GIGABYTEはどうかしらん。

 それともう一つ、Trinityに絶対に必要だと思うマザーがある。
 それは、OC可能なフル装備Micro-ATXマザー。

 MicroATXというお手頃サイズで、ちょっとしたOCも楽しめて、且つ安定度は抜群という一品。

 というのは、TrinityにATXマザーは「大きすぎる」と思うので。
 何しろCPUとオンボードでほぼんでしまう。ストレージもSSDなら小さくて済む。
 単品GPUを追加するにしても、他に刺すものが無ければMicroATXマザーで十分。

 コンセプト的にはMAXIMUS IV GENE辺りに近いが、アレよりはもう少しお手頃に。
 手元の GA-F2A85X-UP4 のまんまmicroATX版、なんてのがあるとドンピシャかと。
 値段は10K台前半で。フォームファクタ考えればチップセットはA75でも十分かも。
 そんなコンパクトなマザーにA10-5800「K」を載せて、ちょっとしたチューニングを楽しむ、ぐらいの方が「丁度いい」。

 何しろこのデフレ、そして自作PC離れ時代。
 自作PCの醍醐味である「チューニング」を低価格かつお手軽に楽しめる、そんなプラットフォームがあっていい、いや必要だ。
 APUはもうそこにある、値段も悪くない。ケースもCPUクーラーも電源も、SSDもHDDも選択肢はいっぱいある。

 後は、マザーだ。
 APUの魅力を最大限引き出せるマザーが出るか、これがTrinityの命運を握ると言っても過言ではないと思う。

 ◆

 ・・・まぁ、こんな感じで。
 取り敢えず、5回続いたTrinityな連載も今回が最終回。

 次回は「ついでに」AMDのプラットフォーム戦略をちょっと考えてみることにしましょ。

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