AIRのXpand!2は、やっぱりどう聴いてもHypersonic3だった。

 さて、少し前にM-AudioのUSB Audio I/Fにバンドルされ「うぉー、UR12買ったの早まったか」とか思ってたところに、Plugin Boutiqueで99%OFFとかいうトンでもないセールが始まったAIRのXpand!2。

 値段が値段なのでセール開始初日にお買い上げしたところ、ライセンスシリアルナンバーだけメールされる方式にも拘わらず「在庫切れなので後日発送」とか言われてしまった辺り(翌日には届いたけどね)相当数が出たのではないかと。

 まぁそんなブツなので今更ではあるが、簡単にレビューでも。
 また例によって長いので、取り敢えず3行。

 ・軽いSubtractive+FMシンセ。
 ・音数充実、シンセ系の音はいい感じ、生音も意外とこれが。
 ・¥100(ぐらい)のうちに取り敢えず買っとけ。(~8/31@Plugin Boutique)

 ◇

 さて、ここからはだらだらと。

 このXpand!2という音源、昔WizooのHypersonicを使ったことのある古い人間(自分含む)には「要するにHypersonic3」と言えば通じるのではないかと。まぁそれぐらい「まんま」ですよ。

 で、上記のネタが通じないもう少し普通の人に向けて書いてみますか。

 一言で言ってしまえば、ちょっと古い軽量なSubtractive+FM音源。個人的には、画面デザインから受ける印象と音の印象はそう違わない。
 稀に勘違いした記述を見かけるが単なる「ロンプラー」ではないよ、念のため(Sample Playbackもあるけど)。

 ♯ハードシンセ(=キーボード)を知っている人だと「デジタルナントカ音源とかデジタルコントロールナントカとか一時期流行ったよね」の正にその「一時期」の感覚そのまんまだと思って貰えば。

 CPU軽量で音数は結構豊富、最大4レイヤの音色を重ねて使えるが、音色のエディット幅はそこまで広くない。
 音質はシンセ系は「いい感じ」で生音は「そこまでリアルではないがソツなく意外と悪くない」。全体として「十分使える」。

 この出音の良さを支えるのが、Subtractive・FM・Sample PlaybackにVirtual ToneWheelまで揃えたハイブリッド音源と、元Wizoo=現AIRのエンジニアの音源の使い方の上手さ。
 サンプル容量が1.5GB程度とコンパクトでCPU負荷が低いにも拘わらず悪くない音がするのは、ある意味匠の技みたいなもの。

 ちなみにこういうある意味「伝統的な構成の」音源が今主流ではない理由はというと、いい音を作るのも、それをエディットするのも難しいから(と個人的には思っている)。
 今時全盛のサンプリング音源は素材さえ良ければまぁまぁの音が出てしまうし、フィルター等で加工する(=音を「削っていく」)のも操作と結果がほぼダイレクトに結びつくので、扱い易い。リアルな音も、加工した音も、どちらも出し易いのですよ。
 一方でSubtractiveでは生音のような複雑な倍音を含む音を作るのはそもそも苦手だし、そうでなくとも狙った音を作るのは簡単ではないので。FMなんて何をいわんや、ということ。

 ♯自分は初期のデジタルシンセの「頑張ってる感」=「デジタルシンセ臭い」音が好き、且つFM信者なので、多少の贔屓目はあるかも知れないが、デモ音源やデモムービーをチェックすればXpand!2が「古臭い音源」ではないことは十分伝わるかと。

 とはいえ、今時音源なんて多種多様ある中、さすがに定価(99.99$)で買うのはねぇというも確か。
 なので、今回のような特売だったり、或いはUSB Audio I/Fにバンドルで付いて来るとしたら要チェック、と。

 ♯今回の特売を見送った後やっぱり欲しくなってしまったらM-AUDIOのUSB Audio I/Fをチェック。

 最後に一つだけ。
 何故かTracktion5ではロード出来ないという謎の症状あり。
 他のDAWだと問題ないようなのだが・・・少なくとも自分は他のDAWでは聞いたことない。

 ◇

 まぁ取り敢えず紹介としてはこんな感じですかね。
 取り敢えず何か気になるところがあったら買っておきましょ、激安のうちに。

Share

Tracktion 5はPC音声出力にVSTエフェクトをかけるのに最適だという話。

 今回もまたダラダラと長いのでまず3行で。

 ・VST使ってPCサウンド出力にエフェクトかけたい
 ・VSTHostはお手軽だが音声が遅延でどんどんズレる
 ・タダで使えるTracktion5を使えば問題解決

 以下、長文。

 ◇

 以前ここでVB-CableとVSTHostを使ってPCの音声出力にエフェクトをかけるというネタを出したが、さてこの方法、お手軽なのは良いのだがこれまた良く知られている大きな欠点があるのであり。

 それはずばり、VSTHostのオーディオエンジンの出来のイマイチさ。
 具体的には暫く使っているとどんどん音声が遅延してくるというもの。

 どうもコレ内部的に処理落ちすると発生するようで、オーディオエンジンをリセットすればその時は収まるのだが、また暫く経つと・・・といった感じ。
 純粋に音声だけの垂れ流しではあんまり困らないかも知れないが、困るのが例えば動画の音声にエフェクトをかけているような場合。音声側は横取り処理をしている以上どう頑張ってもレイテンシが出てしまうので、動画再生ソフト側では逆に映像を遅らせる(または音声を先行させる)ことで結果的に映像と音声で同期を取っているのに、コレが崩れてしまうんですな。この状態で映像なんて見てると実にキモチワルイ。

 で・・・自分も少々長い動画を見ている時に、このキモチワルイ状態にしょっちゅう陥るという状況になってしまい。正直たまらんので、VSTHostに代るソフトを探してはみたものの・・・シンプル且つタダで使えるVSTホストって見当たらないなぁ、と。

 ♯カネ払う前提ならBlue Cat AudioのPatch Worksなんて悪く無いと思うが、どう考えてもオーバースペック。

 そんな自分が辿り着いた先は、何とまぁ普通にフル機能のDAWソフトウェアでありましたとさ。
 具体的にはTracktion 5。

 メアドとパスワードを登録すればタダで使えます、はい。
 独特のGUIは初めて使う人にはややハードルが高く、CubaseやSONAR等の「一般的な」DAWソフトに慣れている人だと尚更首を傾げる気がするが、一度このソフトの流儀を理解すれば全く問題無い。
 というか、個人的にはこれ一度シグナルフローさえ理解してしまえば相当使い易いと思うのだが。

 フル機能がタダで使えるDAWといえばStudio Oneも有名だが、アレは有料の上位版でないとVSTが使えない。
 一方少々年寄だと古いReaper(Ver0.999迄は無料だった)を思い浮かべる人も居るかも知れないが、こちらは凄まじく音が悪いので今更引っ張り出す理由は何処にもない。
 ということで、事実上の一択ですがな。

 更にDAWソフトなので、オーディオエンジンの安定性も全く問題無し。
 VSTHostだと確実にボロボロになってしまうCPU負荷が100%に近い状態で暫く流してみたが、音飛びこそ出たものの音声の遅延増加は発生せず。

 ということで、Tracktion5をこんな使い方しているのは国内どころかWorldwideでもそう居ないような気がするが、自分はこれで漸く幸せになれました、とさ。
 

Share