月別: 2011年3月
[マニアック注意] PCI-Express バス実装トポロジを確認してみる。
さてそれは、ふとした疑問。
手元のAsus M4A89GTD PRO/USB3の、NECのUSBチップがぶら下がっているのは890GXの下か、SB850の下か、どっち?
一昔前のマニュアルにはブロックダイアグラムが載ってて当たり前だったけど、最近はそうでもない模様。
仕方ないので、Windowsでのデバイスリスティングを頼りに、PCIeバスの接続を割り出してみますか。
ちなみにこの手法はx86 PCでは汎用的に通用するので、例えばIntel Chipsetのマザボで「このPCIeスロット、直接CPUにぶら下がっているのか、それとも(圧倒的に帯域の狭い)DMIの先にあるのか」なんてことを判別する際にも使えますよ、念のため。
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ということで、まずはハードウェア側の基礎知識から。
PCI-Expressには「レーン」と「ポート」という2つの概念がある。
「レーン」というのは信号線の数。PCIe x16とかx1とかいう、アレ。よく見ますな。
対して「ポート」というのはやや分かりにくいのだが、簡単に言うとデバイスを接続出来る数。
例えば「16レーン」且つ「1ポート」では、PCIeカードは1枚しか挿せない。
ところが同じ「16レーン」でも「2ポート」では、「8レーン」+「8レーン」でPCIeカードを2枚挿せる。
こんな感じ。
次。
PCI-Expressはソフトウェア的にはPCIと同一に見えるように工夫されているため、全ての「ポート」に対して「PCIバス番号」が振られる。
これどういうことかというと、CPU側から見た場合、例えばPCIバスが3本あるのと、PCI-Expressが3ポートあるのと、同じに見えるんですわ。
なので、例えばPCI-ExpressでVGAを挿してポート1を使用した場合、PCIバスの1番目にVGA挿してあるのと同じようにCPUからは見える。
◇
次、Windows側の基礎知識。
前述の仕組みのお陰で、WindowsからはPCI-ExpressとPCIとは区別されずに見える。
そして、個々のデバイスの接続模様は、デバイスマネージャから個別のデバイスの「プロパティ」ダイアログを開き、「詳細」タブの「プロパティ」を開いて「場所のパス」という項目から確認出来る。
♯Windows7の場合。他も大体同じだと思う。
するとこんなのが見える筈。
PCIROOT(0)#PCI(0100)#PCI(0000)
コレを読み解けば良いのですよ。
ということで、以下読み方。
◇
PCIROOT(0)
まず最初のコレ、CPUから見たPCIバスの1つ目(0から始めるので)という意味。
普通のPCだとまず見ないが、サーバ系だと1つのCPUに複数のバスが接続されていることも。そういう場合、ここにPCIROOT(1)なんてのが出てきたりする。
#PCI(0100)
次に来るコレはノースブリッジに接続されたPCIバスの番号。16進数で、上2桁と下2桁で意味が違う。
上2桁はスロット番号で、1から始まる。0は自分自身という意味。
下2桁は機能番号と言い、1つのPCIバスに1つのデバイスしか接続されていない場合は0。
複数のデバイスが1つのPCIバスに接続されている場合、ここの数字を変えることで区別する。
#PCI(0000)
最後のコレは、PCIバスに接続されているデバイス自身のこと。
例によって16進数で、上2桁と下2桁で意味が違う。
上2桁は、上記したように0は自分自身を示すので、ノースブリッジの下に自分が居ますよ、という意味。
下2桁は、機能番号なので、1つのデバイスが1つの機能しか持っていなければ00だけ、2つ以上の機能を持っていれば00、01・・・という風に増えていく。
以上により、こんな風に解釈される。
PCIROOT(0)#PCI(0100)#PCI(0000) → CPU:ノースブリッジの1番目のポート:単機能PCIeデバイス(拡張カード)
◇
もし間にPCIeブリッジなんかが挟まると、一項目増えることに。
PCIROOT(0)#PCI(0400)#PCI(0000)#PCI(0000)
→CPU:ノースブリッジの4番目のポート:PCIe/PCI-Xブリッジ:PCI-Xデバイス
ポイントは2つ。
繋がってるのが全部で4項目になっていること。
PCIeブリッジ自体は、0000と表示されていること。
PCIeブリッジの表示が0000なことについては、正直良く分からないのだがこれそういうモノらしい。
ここから先は別のバスになります、ということで区切っている、のかな?
ちなみにPCIeブリッジがPCI-Xを2ch持っていると、0000と0001となります、はい。
◇
そしてサウスブリッジに内蔵された機能の場合は、例えばこんな風。
PCIROOT(0)#PCI(1402)
→CPU:サウスブリッジの20番目のポートが内蔵する2番目の機能
この場合、サウスブリッジに内蔵された20番のポートに内蔵された2番目の機能、という意味。
何で最後に#PCI(0000)が付かないかというと、PCIeバスに「接続された」デバイスではなく「内蔵された」機能のため。
◇
さて、ここまでは長~い前振り。
以上の前提を以てデバイスマネージャを開いてチェックすると、M4A89GTD PRO/USB3では以下のようになっている模様。
0100 – 内蔵VGA
0200 – PCIe x8 (スロットはx16)
0300 – PCIe x8 (スロットはx16)
0400 – PCIe x4
0900 – オンボード NEC USB3.0
0A00 – オンボード JMicron JMB361
1100 – SB850 RAID
1200 – SB850 OHCI
1202 – SB850 EHCI
1300 – SB850 OHCI
1302 – SB850 EHCI
1400 – SB850 SMBus
1401 – SB850 IDE
1402 – SB850 HD-Audio
1403 – SB850 ISA (LPC)
1404 – SB850 PCI → 0700 – VIA 1394
1405 – SB850 OHCI
1500 – オンボード ギ蟹
1501 – PCIe x1
1600 – SB850 OHCI
1602 – SB850 EHCI
890GXは22レーン/8ポート(A-Link相当分を除く)。3ポート余ってます(0500、0600、0700)な。
そして0800が欠番に見えるのは、これ多分内部的にノース・サウス間のA-Link(=PCI-Expressそのもの)用に使っているんでないかね。
そして1100以降1602までSB850が占有しているので、その中にある1500と1501に関してはSB850配下のPCI-Express Busということが判別出来る。
にしても、PCIeスロットがSB850配下ってのはちと想定外だった。これ要するに、PCIe-x1カードを挿す場合でも、空いているなら他のスロットを使った方がよろしいということですな。
◇
ということで、結論。
M89GTD PRO/USB3のUSB3.0は890GX直下にぶら下がっている。
以上。
Windows7 on 3TB+SiI3124+SiI3726、ALL OK。
本日は以前からTwitterでぽろぽろ触れていたHDD話でも。
ついにというかとうとうというか、買ってしまいましたよ3TB×2。いい感じに値崩れしてきたので。
ブツはWDのWD30EZRSDTL、そして日立のHDS72030ALA640。
前者は5000rpm(らしい)で750GBプラッタ、ピーク転送速度130MB/S。Rocket620のオマケ付。
相変わらずのWD Green、性能よりも容量と省電力。
とはいえプラッタ密度のお陰で直線速度はそこそこ出ているし、最近のWD Greenって一昔前程静かでも省電力でも無いような・・・ってコレはWD Greenが悪化したんでなく、WD Green「以外が追いついてきた」ということですな。
後者は7200rpmで600GBプラッタ、ピーク転送速度が160MB/S超という、SATAでは恐らく直線最速のHDD。
前作7K2000の「熱い、うるさい」という悪評を吹き飛ばす、7200rpmとは思えない静かさと省電力性もポイントが高い。いや実際コレ、ここ数年の7200rpmドライブの中では最高傑作かも。
・・・そして漸く「基板が裏向き」になった。
#3.5インチSATAでは、これで漸く全メーカで信号処理基板の部品面が内向きになりましたよ、と。
外向きが当たり前で、ぶつけたりするとチップ部品を壊すから取扱は慎重に・・・なんてのも今は昔。
ちなみに前者はADF、後者は従来型フォーマットということでプラッタ上の実際の記録密度は数字程違いませんよ、はい。
あと、WD30に関してはどう考えてもIFオマケ付パッケージがお得。Marvellチップ搭載のSATA3カードを単独で買うと安くても¥4Kぐらい取られるが、現状の店頭でオマケ無とオマケ付の価格差は¥1K未満なので。
#現状で3TBを買うような物好きは基本的にSATAカードが手元にあっても困らないというか、あったらあったで便利だと思う人種なんじゃないですかね。
但し、一つだけ注意。WD30EZRSDTL、つまりIF付のパッケージなのだが、これ兎に角箱がデカい。
日立のリテール箱なんてメじゃない。実測値で175×105×230mm・・・えーっと。
プチプチ巻きで良ければ2つ入れても未だ余裕ですがな。
#現物はHDDを浮かす形の緩衝材が入ってます、はい。
◇
閑話休題。
問題はこの3TBを正常に手元の環境で使えるか、ということ。
手元にあるのはSiI3124搭載SATA IF、Lycom PE-124。
Intel製のPCIe to PCI-X ブリッジとSiI3124を乗せたカードで、特に癖も無くそこそこの速度で動作するため、いろんな型番が付いて各社にOEM供給されているモノ。
コレのファームウェアは6.4.0.9。これに関しては注記有で、当方の環境ではBIOSを切り離している。
ドライバの方は1.1.15.0。2009/4/21の日付で、非RAIDとしてはこれが最新。
#ファームの最新は6.6.0.0だが、手元の環境ではBIOSを切り離している都合上あちこち手を入れないとアップデートが出来ないので、古いままなんですよ。
そしてSiI3726搭載HDDケース、玄蔵X4。
PMP搭載ケースとしては国内では最初期の製品で、そろそろ(経年で)電源がヤバくなってきている個体も少なくないという代物。当然ファームウェアも古いまま、というかSiI3726自体ファームウェアが2006年から全然更新されていないので、まぁなんと言うか「古いモノ」ということで。
#というか手元のもそろそろ電源がヤバい。省電力なWD Greenだから辛うじて何とかなっているという状況。
最後にOS、Windows7 x64 SP1。
#にしてもSP1パッチ当ては時間かかったなぁ(当方実測で3時間程度)・・・ってそれは兎も角。
以上の組み合わせで、果たして3TBは正常に認識され、正常にRead/Writeされるか。
結論としては、まあ問題無いです、はい。
念のため2TB超領域に書き込んだファイルにベリファイテストもしてみたが、バイナリ一致を確認しているので。
取り敢えず作業途中のスクリーンショットをいくつか取ってみたが、正直代わり映えしないので画像貼り付けは取りやめ。
どうしても見たい人はこの辺りからどうぞ。
◇
ちなみに「まあ」と断っているのは、HGSTのHDDは作業中に何度か認識に失敗して、Windowsが青画面になることがあったため。
但しこれ、原因は恐らく6Gbps対応ということ。というのは、テスト中に延長SATAケーブルを使っている時には何度かこの症状は出たが、短いケーブル1本だけで接続する(ケース内)本来の状態に戻したところ、さっくり安定してしまったので。
まあ・・・いかんせん電源はヘタっているので、その悪影響もかな~り考えられるのだが。
・・・つか早くこのHDDを3Gbpsに固定するFuture Tools最新版を公開してくれ、HGSTよ。
WDのHGST買収とSamsung 4TBに見る、HDD業界の未来。
さて、まさかこのテに出てくるとは思いませんでしたよ。
WDがHGSTを買収するとな。
とはいえ、結果だけ見てしまうと極めて合理的な経営判断であり。
何しろ、WDと言えば・・・
コンシューマー向け大容量HDDの大量出荷で「低価格、中品質」と「利益の出し方」は極めたものの。
「高価格、高品質」なエンタープライズ製品は最近始めたばかり、しかも未だ軌道に乗ってないどころか苦戦中。
片や、HGSTというと・・・
コンシューマー向け製品はぶっちゃけ得意じゃない上に、商売だってヘタクソもいいところ。
但し「高価格、高品質」なエンタープライズ製品はお手の物で実績も相当あり、ぶっちゃけコレで喰い繋いで来ました、ハイ。
両方が上手く組み合わされば・・・
コンシューマー向け大容量HDDの大量出荷で「低価格、中品質」と「利益の出し方」を極めつつ。
「高価格、高品質」なエンタープライズ製品もバッチリ売って更に利益上乗せ、儲けウハウハ。
・・・になるのかねぇ。
少なくともWDの経営陣はこうなることを期待している筈。
◇
さてこうなると、微妙に気になるのが他社への影響。
順番に見ていきましょうか。
◇
まず、Seagate。短期的にはプラスだが、長期的にはどうだか。
理由はというと、まずWD+HGSTという形でHDD供給を受けていたメーカがWD&HGST+Seagate、という形に乗り換えてくるのが相当数見込めるため、短期的にはプラス。何だかんだで現時点ではSamsungよりは信頼されているし。
一方で、長期的にはというと・・・ここ数年の品質&開発能力の低下からいつ復活出来るかにかかっていますな。個人的にはもう少し時間がかかると思うが。
現状はというと、「カネはかかるがコレをやらないと生き残れない」という高密度プラッタ開発競争で既に最前線から脱落済の上、大騒ぎになったファームウェア問題も記憶に新しいところ。
具体的な製品で見ていけば、低回転品のBarracuda LP(Green)で667GBプラッタを漸く採用するも、WDからは出遅れること半年以上。
3TB HDDについてはBarracuda XTがアナウンスこそ早かったものの、600GBプラッタの安定に手こずり、大量生産の見込みが立ったのは本当に極最近という有様。
というか・・・一昔前のSeagateの天下っぷりを見ていた身としては、なんだかなぁ・・・と。
#HGSTですら7200rpm/667GBプラッタの大量生産がイケイケ状態なのに。
◇
次、Samsung。こちらも短期的にプラスだが、長期的にもプラスの可能性が高いと思われる。
理由は。短期的にはWD&HGSTに加えてSamsungを選んでくる会社も多くはないが少なくもないだろうという予想から。
価格競争になると頑張ることが多いので、価格重視のベンダ系にはウケが悪くないのよね、Samsungって。
昔に比べれば品質も接続性も安定してきたし。
一方、長期的には。
個人的にはデスクトップ分野では今後確実にシェアを上げて来ると思っている。理由は「ライバルのSeagateが自滅中」且つ「価格競争を諦めるつもりは無い模様」だからで、正直な話製品自体の競争力が強くなったとは思っていない。
そして、Samsungの財力+日本のパーツメーカの技術力、という後ろ盾を最大限活用した結果、プラッタ密度競争でも現状悪くない立ち位置をキープしているのもポイント。
特に先日の展示会に1TBプラッタの試作品を出してきたということは、製品化の目処も立っているという意味で、ヘタすると世界初の1TBプラッタ採用品出荷会社になる可能性も。
#このプラッタは昭和電工製というウワサもあるが、未確認。
同社のプラッタは密度競争ではWDと並んで世界の最先端を走っており、Samsung製HDDの多くで採用されているという事実がウワサに信憑性を与えている。
ちなみに1TBプラッタはHGSTも既に試作品を完成させているという話もあるが、こちらもあくまで根拠無しのウワサだけ。
◇
最後、東芝。・・・短期的には影響無し、長期的にはマイナスか。
東芝はWDがメインにしていたデスクトップ分野には参戦していなかったんですな。ノート向け2.5インチと、富士通から引き継いだサーバ向けのみ。
まぁノート向けではWD&HGSTからの乗り換え組が来る可能性はあるが、WDのノート向けは数量で見るとたいした数ではないので。
そういう意味で、短期的に「おこぼれ」を授かるチャンスは無いと言っていいと思われる。
そして長期的には・・・WDのカネとノウハウで旧HGSTのエンタープライズ部門は競争力を強化してくるだろうからその分不利になるのは確実。
更に、もしSeagateが復活してくるとこれまた不利に。
専業のWDやSeagate、国策Samsungと違って、他にもイロイロやっている東芝にはHDD事業を死ぬ気で維持する気合いも根性も無いだろうし。
個人的にはSamsungと我慢比べ状態に突入した挙げ句、先に音を上げるんじゃないかと思っていたりする。
その時の市況次第ではSamsungが買うかもね。
◇
最後に、おまけ。
実はWDとHGSTの3TB HDDを少し前に購入済みだったり。
取り敢えず問題無さそうですが、詳細は次回の更新ででも。