2013年のAMDは・・・

 さてと、今更ですがCESで見えた~その後のAMDの今年の展開でもちょっとまとめてみますかね。

 まずはAPU。
 今回一番注目されていたのは今年前半に製品が出るというJaguarですな。Bobcatの流れの低消費電力プロセッサで、PS4だとかXbox720もCPUコアはコレだなんて噂もあったりしたり。
 で、BobcatもAtom以上Celeon以下ぐらいの場所でぼちぼち使われていたが、IPC改善に加えて4コア、そしてHSA対応というのがJaguarのポイントかと。これが予定通り出荷出来ればAtomに普通に対抗出来る仕上がりなのでモバイル分野でのシェア向上も狙えるし、HSA対応ということで他の使い方もありそう。SoCなので目立たないだろうが、AMDの業績改善にはかなり貢献するんでないかな。

♯個人的にはコレ積んだMini-ITXボードが出回るの期待します、はい。一時期E-350とかE-450積んだのが流行ったみたいな感じで。

 で、あまり注目されなかった方、TrinityのマイナーアップデートであるRichlandはノート向けに既に出荷開始済み、デスクトップもそう遠くないうちとのこと。
 まぁCoreは所詮PiledriverなのでCPU性能が劇的に改善しているとも思えないが、AMDにはuncoreの改良だけでZambeziから10%近くIPCを引っ張り上げたなんて実績もあるので、今回も全く手を入れてないということはないでしょう。まぁ最低でもクロック引き上げ分は素直に性能に出るので、5800よりは演算性能も多少上がるか。
 グラフィックについてはRadeon 8000番台を名乗るようだがこちらは中身はVLIWという噂。このタイミングならGCN載せてきても良いて思うのだが、HSAと合わせてってことですかね。パフォーマンス増分はクロック向上とGPUの改良で稼ぐってことかな。

 一方、Steamroller+GCNで本当の意味でのTrinity後継、Kaveriについては年内狙いとのこと。まぁノート優先だろうからデスクトップ版はギリギリ年末商戦か、来年送りでしょう、きっと。
 で、コレについては個人的にはソケットは変わらない、変える理由も無いと思うのだが、世間ではソケット変えるぞという話も。まぁ一つ話として分かるのはDDR4への対応というのだが、時期的にFM2のソケット設計段階でその辺りは考慮に入れてあるだろうと。なので、万が一あっても「FM2+」(DDR3/DDR4両対応)であって「FM3」ではないと思うのだけどね。んで、当分はDDR3しか使わないので事実上は「無印」FM2のまま、てな展開に・・・あってもこの程度でないのかねぇ。

 ♯メモリ帯域不足を少しでも補うためDDR4が欲しいというのはAPU的には切実だが、一方でお値段の問題もまたとっても切実なのであり。

 次にFXとサーバ用。
 取り敢えず・・・Steamrollerは年内は無いということね、コレは。というか、ヘタするとSteamrollerが単品で出るかどうかすら怪しいとか言いたくもなるよね、こんなんじゃ。
 あ、勿論、サーバ向けでSteamrollerが出るのが100%確定している以上、FXが更新されないことはあり得ないですよ。時期的に最後のDDR3対応、最後のNorth独立チップかも知れないし。

 ・・・というか、Steamrollerをホントに早く投入しないとAMDのサーバ部門がいよいよヤバいのでは。
 今のところコア数の多さが効く特定ジャンルの仮想化サーバ(仮想端末集約系ね)では唯一辛うじて選択肢に入るものの、Steamrollerが遅れたらこの「最後の取り付く島」すら無くなっちまうし。急げ急げ、息のあるうちに。虫の息とはいえあるのと無いのは雲泥の差。

 最後にGPU。
 Radeon 8000系はもう規定通りというか予定通りというか。
 ちなみに久々に400番台(映ればいい系。6450とか)もリフレッシュがかかって上から下まで完全にGCN血統になるようですな。
 ・・・ちなみにその「8470」、中身は7750の丁度半分とか。演算コア数よりメモリ帯域が気になったり。

 ◇

 以上、こんな感じですかね。
 まぁ一行に要約するなら、こんなん↓で。

 JaguarとKaveriが予定通り出せれば、少なくとも去年よりはマシな年。

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あのRAIDCoreがAMDプラットフォームに。

 さて、CESではイロイロとモノが出てきましたな。
 1TB SSDはMicronが最初ですか。え、まぁ960GBだけど、許してよそこは。
 でもまぁ$599っぽいので、ホントにモノが出たら各社追随するでしょう。2番手は何処になりますかね。

 そしてAMDのプラットフォーム戦略がアップデートされまして。
 まぁこのネタは後に回します。正直、去年よりは希望が持てる感じかな。

 そんなことより、ですよ。奥さん(違。
 AMDがAシリーズ用チップセットにあの「RAIDCore」を組み込むそうですよ。

 余りにも懐かしい名前が出てきたので、思わずエントリを書いてしまいましたよ。

 皆様覚えているでしょうか。「Hardware RAID並の性能をSoftware RAIDのコストで」というウリ文句で華々しくデビューしたものの、妙なケチが付き続けて結局メインストリームになれなかった3枚のRAIDカードのことを。
 そうです、あのRAIDCoreが帰ってくるんです。

 つか、RAIDCoreって、本当に不幸続きなんですよ。
 世間には不幸萌えってのがあるらしいが、だったら相当萌えられるのでは。

 ◇

 そもそもRAIDCoreは高性能なSoftware RAIDを開発したベンチャー。
 このSoftwareにMarvellチップに組み合わせたRAIDCardは前述の通り華々しくデビューしましたよ。

 ところがこの製品、何とMarvellチップのバグのせいでアレイ崩壊&データ化けというトンでもない事態が発覚。
 データ保護とかいう以前にストレージコントローラとしてあり得ない状態で、これじゃ売れるワケがない。

 こうしておカネが尽きたところをBroadcomに買収(2004)される。
 Broadcomはこの頃自社のストレージ関連ポートフォリオの強化を狙っていた模様で。
 こうして、BCM5770というBroadcom製(=ServerWorksのLogicCoreね)のROC(RAID-ON-CHIP)製品が出ましたよ。

 ところがコレも商売的に大失敗。
 当時は現在とは段違いにSoftware RAIDのイメージが悪かったというのと、強気過ぎた値付けが失敗の元かと。
 モノはまぁそんなに悪くなかったと思うのだけど。

 で、これでストレージは飽きたのか、BroadcomはRAIDCoreの資産を手放してしまうんですな。
 買収(2006)したのは箱物ストレージの企業、CIPRICO。

 CIPRICOも狙っていたのはストレージ関連ポートフォリオ。
 落ち目だった箱物ストレージに代わる収益源として本気でRAIDCoreを育てようとしていたようで、IDCでIntel Chipsetに対するNative Supportを発表したりもしたのだが。

 ♯当時Intel Chipsetにエントリサーバ向けのRAID Softwareを供給していたのはAdaptecとLSI。この辺りと張り合うことを狙ったんですな。

 が、本業の箱物ストレージの売上減が止まらず、CIPRICOはChapter11、つまり倒産。
 この時、RAIDCoreの資産は同じく箱物ストレージ企業のdotHILLに買収(2008)されましたとさ。

 こうしてRAIDCore SoftwareはdotHILLのものになり、同社のブランドである「Assured」シリーズに取り込まれ「AssuredVRA」という名前で扱われ。
 この度、AMD Aシリーズチップセットに載ることになりましたとさ。

 ◇

 まあこの話、普通に考えていいことです、はい。
 プラットフォーム全体として魅力を引き上げていくというAMDの戦略として、ストレージ関連の強化は良いことでしょう。

 ♯次にはSATA IFの速度向上が必要ですな。
  SSDもこれだけ流行ってるし、SATA 3.0ポートも8ポートと増やしてしまったんだし、CPUとChipset間もPCIe 2.0×4の現在の状態では帯域不足でしょ。

 にしても、Aシリーズに組み込むということは、要するに今まで使ってきたPromise RAIDを捨てるということで。
 まあPromise RAIDはもうこれ以上強化されることも無いだろうし、乗り換えるなら今、と考えたってことでしょうな。

 そして将来はサーバ向けにもAシリーズと同一のチップが使用されるだろうから、サーバ向けもそうなると。
 どちらかというとサーバ向けの方がウケそうな気がするけれど。
 ・・・あれ、本命はこっちかも?

 まあ兎にも角にも。
 Intelチップセットに載る夢は露と消えたが、AMDチップセットには載ることになったRAIDCore。
 今度こそ日の目を見た、と思って、いいんだよね。きっと。

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自作PC「だけ」且つハードウェア「だけ」の観点から2013年を予想してみる。

 新年一発目もまたしてもこんなエントリで。
 管理人の願望や偏見も混ざっているが、まぁ気にしないで。

 それでは始まり始まり。

 1◇自作PCというジャンルの地盤沈下は加速する。

 自作PCが安かったのは遥か昔。いわゆるメーカ品PCに存在しない尖ったPCが欲しくとも、ホワイトボックスなBTOを使えば99%は間に合う時代。
 そして残るのは本当に「自作が好き」なヲタクだけ。ウダウダと能書き垂れながら大して性能差もないパーツを持ち上げたり貶したり、メーカだのアーキテクチャだのに信者が付いたりアンチが付いたり、ある意味懐かしい「あの時代」の再来ではある。

 既に2010年には確たる方向性を持って動き出しているこのトレンドは、一昨年、去年と加速してアキバのパーツ店を次々と吹き飛ばしている。
 そして2013年も新年早々早速1店舗を吹き飛ばすことが昨年のうちに確定しているが、正直これだけで済むかどうか。

 2◇小型フォームファクタの躍進が止まらない。

 NUCはIntel独占なので大したことはないだろうが、Mini-ITXの躍進は続くでしょう。
 やっぱり選べるパーツが増えてきたということが大きい。

 例えばフルサイズではやたら¥の高いLian-LiのケースもMini-ITXサイズだとまぁ許容出来る価格。マザーも随分と種類が増えて選べるように。
 従来では結構難しかったCPUクーラ周りも、最近妙に充実してきて、よっぽど窮屈なケースにでも入れない限りは大型+静音+薄型でケースに収まるものがそこそこの価格で手に入る。
 ついでに、流れでACアダプタ駆動も増えてくるのでは。

 ちなみに、代わりにラインナップが削られるのはATXスタンダードサイズだと思われる。
 MicroATXは元々ボリュームが少ないしMini-ITX「よりは大きい」というポジションがあるので、恐らく削られない、というか削られるような中途半端なポジションのラインナップが存在しないのでは。

 3◇システムドライブはSSDが当たり前に。

 既になっているという気もするが。
 2013年はいよいよシステムドライブはSSDが「常識」に。

 極端な低価格品以外はSSD+HDD構成、ヘタしたらSSD Onlyが常識になるでしょう。
 同じカネかけてのメモリ増設やCPUランクアップより体感には効くしね。

 4◇ThunderboltはFirewireと同じ道を突き進む。

 「同じ道」は言い過ぎか。
 Firewireよりももっとマイナーのままかも。
 USB3.0が互換性というアキレス腱を抱えながらも怒涛の値崩れであっという間に普及したのは対照的な展開になると予想。

 現状では、バスとしての素性がどうのという以前にコスト高過ぎるのと、大多数が外部バスにそこまでの性能を求めていないところが実に何とも。
 勿論ゼロではないので一部ニッチ用途には重宝されるだろうが、それって現状のFirewire800なんかと立ち位置変わらないよね、と。
 あと、現在Thunderboltで出ている製品の数々。Firewire初期に何か見たことあるようなモノばっかりなのは気のせいですかね。

 5◇Full HD超のディスプレイとFull HD程度のタッチ対応ディスプレイが値崩れ開始、でも注目されるのは前者だけ。

 恐らく今年はFull HD超ディスプレイとタッチ対応ディスプレイの値崩れが始まると思われる。どちらもボリュームが出始めるということで、前者はパネルメーカの思惑、後者はWindows 8絡み。

 といってもWindows 8+タッチパネル環境が自作で大流行するという意味ではなく、All-In-One PCのディスプレイ用にタッチパネルが大量に生産され、それが流用される形で20~22インチ程度・1680×1050~Full HD程度のタッチ対応ディスプレイが従来と比べて低価格で出て来るのではないか、ということ。

 とはいえ現在の自作の潮流ではタッチ対応ディスプレイよりも高精細ディスプレイが注目されるでしょう。
 自作PC=据置デスクトップなので、価格性能比を考えるとタッチ対応なんて限りなく優先度が低いと思われるので。

 ちなみに、Full HDを超えるとHDMIが帯域限界に当たってしまうので、DisplayPortがジワジワとシェアを上げて来ることも予想される。
 まぁ勿論DualLink DVIでも良いのだが、最近ではなんだかんだでDisplayPortのケーブルも入手性が良くなっているので、高くて太くてゴワゴワなDualLink DVIケーブルより好まれるのではないかと。

 6◇LGA1150で今年もIntelはマザボ総入替。

 これは規定路線。
 個人的には当初予定より多少遅れてくると思っているが、遅くとも秋までにはマザーも石も揃うでしょう。
 まぁ今Intelが本気なのは対ARMだし、AMDがアレなのでx86で焦る理由も無いしね。

 7◇Richlandこと6000シリーズAPUの登場、一方Steamrollerはスリップで年越し。

 こちらも規定路線。
 6000シリーズAPUは現行のものから劇的な性能改善は無さそうなので、世代が変わっても現在の立ち位置は変わらないと思われる。市場シェアという意味でも現在とそう変わりそうにないですな。

 8◇Sea Island/Radeon8000 vs Kepler refresh/GTX700 は「一回休み」的ポジションで。

 CPU以上にプロセス改善に依存してきたGPUの進化は、プロセスが足踏みする影響をモロに喰らって今年は一休みという状況に。
 勿論両陣営から新製品は出てくるが、どちらもダイ面積当たりの劇的な性能改善は無く、内部構造はGPGPU用途の本格化時代に向けた改良、販売戦略的には「ラインの調整」によるお買い得感の演出がメインに。

 つまり、前世代同価格ライン品と比べてShader増えて性能上がってます、でも良く見たらGPUダイが大きくなって消費電力も上がってます、という話。
 これはつまり、純粋なGPU性能だけ欲しければ値崩れした旧世代GPUも値段次第ではアリという意味で・・・あれ、そいえばちょっと前にもそういう時期ってありましたな。

 9◇DDR3-1866ネイティブメモリ、低価格4TB HDD、メジャーライン1TB SSDの登場。

 DDR3-1866ネイティブは未だ試作品状態だが、LGA1150でIntelの正式サポートが入る模様なのでその頃には製品も出回り始めるでしょう。伴いOCメモリでは2133がまぁ扱い易いレンジに降りてくる。

 降りてくるといえば4TB HDD。1TBプラッタが大量生産で安定して量が取れるようになってくるのと、3TB HDDの値崩れによる単価下落を補うため、WD GreenやBarracuda 7200.14といったデスクトップラインに4TB HDDが登場するでしょう。

 そしてもう一つ、これは結構悩んだが、恐らく2013年中には一つは製品が出てくると期待しているのが、メジャーラインでの1TB SSD。
 現在でも特定用途というか、大容量特化型のようなラインには1TB SSDが存在するのだが、いよいよPlextorとかSamsungとかOCZとか、この辺りから「512GBモデルの上位品として」1TB製品が出て来るのでは。

 10◇アーリーアダプタ向SFF-8639接続SSDの登場。

 最後の最後、これも年内ギリギリの駆け込みで2013年に間に合うのではないかと。

 実はMS製ドライバも既に存在するし、試作品レベルならSSD側も昨年中に完成している。残る問題はマザーボード側の対応がだいぶ遅れそうということなので、過渡期としてPCI-Expressスロットに変換ボードを挿す形で実装される、(恐らく)SATA-Express対応のSSDがキワモノ的立ち位置で登場すると予想。メリットはSATAを超える帯域で、いよいよ「1台のSSDで600MB/S超え」の時代に。

 ちなみに相も変わらずテキトーに書かれているエントリが多いが、SFF-8639とSATA-Expressは別物ですよ。
 前者はコネクタのみ、後者はコネクタや信号線も含めたシステム全体の規格名ね。
 SFF-8369自体はSATA-Expressの上位となるエンタープライズ用PCIe 4レーン規格(こちらはまだ統一呼称が無い模様)でも採用されているので、ね。

 ◇

 さて、予想と言いつつ確定事項も多数混ぜ込んでしまったけど、どうなりますやら。

 兎にも角にも、今年も多分こんなノリでいきますので、よろしくお願いします。

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レイテンシと帯域幅とHyper TransportとFreedom Fabricと。

 個人的にどうしても気になる話があるので一つエントリを足しておこうかと。
 まあ年内最後ということでこんなすかしっ屁みたいなエントリでもいいよね。

 ◇

 季節柄、これからを振り返る~将来を見る、のようなネタが多い今日この頃。
 兎に角色々と瀬戸際なAMDプラットフォームについてもまぁ散々に言われている・・・が。
 AMD関連については兎に角テキトー、というか恐らく書いてる方が理解してない記事も多いので、どうにも酷過ぎる部分にちょっとコメントしてみる。それがコレ。

 Freedom FabricはInterConnect技術であって、CPU-Direct Transport技術でないよ?

 勘違いしている記事多過ぎやしません?
 AMDがInterConnectを手にしてARMの大規模クラスタを作れるようになったのは事実なのだが、これがHTの代替になる・・・ワケないでしょ、と。
 まあ帯域はバス幅で稼げるにしても、兎に角レイテンシ(=遅延)とコストが違い過ぎる。これは物理メモリが各プロセッサノード=ソケットにぶら下がる上に、普通にCPU跨いだメモリ空間にデータ展開されちゃったりする現在のx86の複数CPU構成では致命的問題なんですよ。
 具体的に製品を見ても、4ソケット使用を想定しているOpteron6000シリーズががわざわざHTを4系統も持っているのは「全てのCPU=メモリコントローラに(別CPUを経由することなく)1ホップで辿り着く為」で、仮に2ホップ接続としてしまったらそれだけでシステム性能に影響が・・・ってぐらい、レイテンシの問題ってのは重大なんですわ。

 ♯つかなんでIntelのQPIに何も言わない連中がAMDのHTは無くなるとか言っているんだろ?
  ここが理解出来ない。いやマジで。

 ◇

 一方、ARM版OpteronがIOにHTを持たなくともむしろその方が自然だし、下手したらオンチップでFreedom Fabric用の実装を持っていたとしても全然不思議ではない。

 それは何故かというと、そもそもARM版Opteronではプロセッサノード間のメモリ共有なんて想定されないだろうから。
 逆に言うとIOだけなので、多次元クロスバー構成のFreedom Fabricのような接続形態が実に理に適ってるワケですな。

 AMDが想定しているのはARMのクラスタリングで、メモリ境界は各プロセッサノードで独立している構成でしょう。例えばWebサーバなんて、「256セッションを超強力な1ノードで処理」するのが良いのか、「16ノードの小さなクラスタで各16セッションずつ処理」するか、最近の流れだと後者の方が良さそうだ、って話なので。

 ◇

 とはいえ、実はこれソフトウェア側から見ると結構大変なことなのよね。
 現在のソフトウェアは「256セッションを超強力な1ノードで処理」するのに熟成されていて、「16ノードの小さなクラスタで各16セッションずつ処理」というのはまだまだ開発途上。
 まぁ世間では「クラウド」の分散処理が持て囃されているが、現状のアレはものすごく粒度が大きいので、そのまま現状のARMに喰わせるのはかなり微妙なトコロ。

 そこで期待されているのが、多くのコアを一つのプロセッサノード=ソケットに封入したメニィコアなARM CPU。
 ノード内では複数コア間のメモリが共有なので、単一のプログラムでノード超えの高レイテンシ高コストなメモリアクセスを想定する必要がなく、現在のマルチスレッドプログラミングの延長線上で開発が出来る。
 幸いARMのマルチコアは立ち上がったばかりなので、x86のように「少数の複数コアには最適化」という中途半端な状態に留まることなく、一気にメニィコアに飛ぶことも出来る。

 ・・・というか、そっちの方に今何とか飛ぼうとしている。
 この辺りはハードウェアが先かソフトウェアが先か、みたいな面があり、また実際製品が出てきたところで処理性能どうなるんだ、ということもあり。
 実際いくらARMとはいえ例えば64コアでメモリ共有なんて言い始めたら帯域的に相当苦しいのは目に見えてるし、とはいえ現在のARMの性能考えたらこれぐらいは集積しないとサーバにガンガン使えるノードにならんし、そうなると1チップ当たりの集積コア数は減らしてメモリ帯域を確保する方向に走るか、それとも多chメモリプラットフォームを新しく作るのか・・・と。

 まあどちらにしろノード=ソケットを超えるメモリアクセスは想定されない筈。ノード間でのメモリ共有ってのは実は結構コスト高だし、そんなことしなくとも単一ノードの中に多数のCPUコアと十分なメモリ容量があり、それらをどうやって振り回すかソフトウェア屋は頭を抱える筈。

 ◇

 まぁこんな感じで、AMDが飛びついたARM Serverについても決してラクな道のりでも何でもなく、もしろバクチに近いってのが正直なところ。
 そして来年も、GFのプロセスは相変わらずgdgdのようだし(とはいえ28nは諦めて次で何とか立て直そうとはしている模様)、TSMCの28nは今以上に受注パンクって話だし(慌ててキャパ増やそうとしているがそんな簡単に出来る程甘い世界ではない)、AMDにとって「いい話」が聞こえてくる前兆は残念ながら見えていない。

 ♯結果としてPiledriverは32nのまま出荷だし、次世代APUとSteamrollerは28nだが前者は製造キャパ、後者はそれに加えて物理設計完了時期にまで不安を抱えるというハメになりそう。

 まあ兎にも角にも、2013年も「踏みとどまる」しか見通しの無い、AMD。
 残念ながらこの「来年の見通し」については当方も世間の大多数に同意せざるを得ない。

 幸い、奈落の底に落ちる前に何とかデスクトップ版Trinityで「蜘蛛の糸」を掴んだのが今年のAMD。
 来年も何とかこの細い糸を切らさずに、少しずつでもプレゼンスと収支の改善をして欲しいところなのだが・・・さてどうなることですかね。

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PiledriverなFXの立ち位置は。(続続・FX-8350とSABERTOOTH 990FX R2.0で組んでみた。)

 AMD FX Logoさて、前回の記事でFXシリーズの電力爆喰いの謎はほぼ解けたと思っている。
 それでは最後に、事実を踏まえて「PiledriverなFXシリーズの立ち位置」ということを考えてみますか。

 ◇

 まず、実際にFX-8350というCPUを使っていて思うこと。
 世間で言われている程悪いものではないよ、コレは。

 8コア構成はベンチ数値より体感が優秀だし、多数の一般ユーザには十分なパワーとレスポンスがある。同価格帯のIntel Coreと比べても総合性能で遜色はない。
 そして全力で振り回すと電力爆喰ってのも事実だが、省電力管理のお陰で平均消費電力はだいぶ抑え込まれているのもまた事実。デスクトップユーザが8コアを全力で振り回す時間が果たしてどれだけかと。

 #そもそも当方は元々910eなんて「低消費電力版」CPUを使っていた人間なので消費電力と騒音には結構うるさい方だと思うが、それでも「125Wって額面の割には普段は大人しいもんだ」ってのが正直な感想だし。「普段は」ね。

 とはいえ、24時間365日全力駆動なバッチメディア変換系や演算サーバのようなものには、FX向の最適化でもされていない限りは向いていないですな。要するに消費電力・発熱量・絶対性能って辺りがクリティカルな問題になるケースね。
 まあでも・・・そもそもそういう用途には最初から選ばれないよね、実際問題として。

 ◇

 とまあここで、ちょいと視点を変えまして。
 同じPiledriverコアを採用しているTrinityが、世間で好評価を得ているのは何故だろうと考えてみる。

 ・高性能なVGAと統合することで圧倒的なコストパフォーマンス=おトク感を演出
 ・電源周りも新設計とすることで電力爆喰い状態を回避
 ・K型と65W版との2系列、更に超低価格版も揃えて幅広い層にアピール
 ・プラットフォーム刷新で過去の評価を引き継がず、イーブンからスタート

 この4つがキーとなり、Piledriverコアを採用することも大きなハンデとはなっていない。
 ここで重要なのは最初の「おトク感を演出」と3番目の「幅広い層」の部分だと思われる。

 同じ着目点でFX-8350を捉えてみると。

 ・8コアというお得感を打ち出すも従来形ベンチの数字が伸びないためヲタ層に響かず
 ・電源周りが旧設計のプラットフォームを引き継いだため電力爆喰い状態
 ・FX-8350以外は実質的に空気で選べる選択肢が無い
 ・プラットフォームと一緒に初代Bulldozerの低評価まで引き継いでしまい、マイナスからのスタート

 あっちゃ~、な感じですな。
 このうち最初と最後の項目については半ば風評被害的な側面もあるのだが、真ん中2つは事実そのまんまなので。
 兎にも角にも、実際の製品の出来以上にマイナスに取られている面は大きいと思われる。

 漸くというか、FX-8350になってAMDも「おトク感」をアピールする戦略に切り替えてきた。
 既にこれ以外にAMDに道は残っていないと言ってはアレだが、やっと現実路線に戻ってきたという気がする。
 選択肢についても、漸く8コア95Wという「実質的に選択肢になり得る」SKUが出てくるようだが、値付け次第では速攻で空気化しかねないというのもまた事実なので、そこは頑張って貰わないと。

 とはいえ、Trinityと比べるとPiledriverは圧倒的に「差を付けにくい」商材。
 つまりは非常に「売りにくい」というのが本音な気がする。

 ◇

 結局、FXの立ち位置はこんなところではなかろうか。

 「Intelより安くて、性能も程々に十分で、しかもで遊べる」=「3点揃っておトクな感じ」

 3つの項目は全て重要。
 金銭的なおトク感、日常使いでのおトク感、倍率フリーというプラスアルファのおトク感。
 個々の項目が強力なアピールポイントにならない以上、全てが揃って、総合力で、初めて売上に結びつく。
 そんな気がする。

 #AMDのセールス担当は苦労する日々が続きそうですな…。

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