さて、前回の記事でFXシリーズの電力爆喰いの謎はほぼ解けたと思っている。
それでは最後に、事実を踏まえて「PiledriverなFXシリーズの立ち位置」ということを考えてみますか。
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まず、実際にFX-8350というCPUを使っていて思うこと。
世間で言われている程悪いものではないよ、コレは。
8コア構成はベンチ数値より体感が優秀だし、多数の一般ユーザには十分なパワーとレスポンスがある。同価格帯のIntel Coreと比べても総合性能で遜色はない。
そして全力で振り回すと電力爆喰ってのも事実だが、省電力管理のお陰で平均消費電力はだいぶ抑え込まれているのもまた事実。デスクトップユーザが8コアを全力で振り回す時間が果たしてどれだけかと。
#そもそも当方は元々910eなんて「低消費電力版」CPUを使っていた人間なので消費電力と騒音には結構うるさい方だと思うが、それでも「125Wって額面の割には普段は大人しいもんだ」ってのが正直な感想だし。「普段は」ね。
とはいえ、24時間365日全力駆動なバッチメディア変換系や演算サーバのようなものには、FX向の最適化でもされていない限りは向いていないですな。要するに消費電力・発熱量・絶対性能って辺りがクリティカルな問題になるケースね。
まあでも・・・そもそもそういう用途には最初から選ばれないよね、実際問題として。
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とまあここで、ちょいと視点を変えまして。
同じPiledriverコアを採用しているTrinityが、世間で好評価を得ているのは何故だろうと考えてみる。
・高性能なVGAと統合することで圧倒的なコストパフォーマンス=おトク感を演出
・電源周りも新設計とすることで電力爆喰い状態を回避
・K型と65W版との2系列、更に超低価格版も揃えて幅広い層にアピール
・プラットフォーム刷新で過去の評価を引き継がず、イーブンからスタート
この4つがキーとなり、Piledriverコアを採用することも大きなハンデとはなっていない。
ここで重要なのは最初の「おトク感を演出」と3番目の「幅広い層」の部分だと思われる。
同じ着目点でFX-8350を捉えてみると。
・8コアというお得感を打ち出すも従来形ベンチの数字が伸びないためヲタ層に響かず
・電源周りが旧設計のプラットフォームを引き継いだため電力爆喰い状態
・FX-8350以外は実質的に空気で選べる選択肢が無い
・プラットフォームと一緒に初代Bulldozerの低評価まで引き継いでしまい、マイナスからのスタート
あっちゃ~、な感じですな。
このうち最初と最後の項目については半ば風評被害的な側面もあるのだが、真ん中2つは事実そのまんまなので。
兎にも角にも、実際の製品の出来以上にマイナスに取られている面は大きいと思われる。
漸くというか、FX-8350になってAMDも「おトク感」をアピールする戦略に切り替えてきた。
既にこれ以外にAMDに道は残っていないと言ってはアレだが、やっと現実路線に戻ってきたという気がする。
選択肢についても、漸く8コア95Wという「実質的に選択肢になり得る」SKUが出てくるようだが、値付け次第では速攻で空気化しかねないというのもまた事実なので、そこは頑張って貰わないと。
とはいえ、Trinityと比べるとPiledriverは圧倒的に「差を付けにくい」商材。
つまりは非常に「売りにくい」というのが本音な気がする。
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結局、FXの立ち位置はこんなところではなかろうか。
「Intelより安くて、性能も程々に十分で、しかもで遊べる」=「3点揃っておトクな感じ」
3つの項目は全て重要。
金銭的なおトク感、日常使いでのおトク感、倍率フリーというプラスアルファのおトク感。
個々の項目が強力なアピールポイントにならない以上、全てが揃って、総合力で、初めて売上に結びつく。
そんな気がする。
#AMDのセールス担当は苦労する日々が続きそうですな…。