続続・再びAMDの「ブロガー勉強会」行ってきて、技術話に萌えてきた件。

 AMD FX Logoさて、余りにも長過ぎたので3本目になってしまいましたが。
 前々回「個々の内容は次エントリに持ち越します」と書いたネタ、後編。
 ASUSセールスのセッションと、最後のゲストトークについて。

 ◇

 三番目、ASUSのセールス担当によるアピールタイム。

 まずは「少ないけども明確な方向性を打ち出したマザーを取りそろえてます」というラインナップの話は横に置いといて、ASUS製品独自の機能「USB BIOS Flashback」について。
 いやね。この機能の説明を初めてWebで見た時、ホントに思ったんですよ。「これが欲しかった」そして「何で今まで無かった」。

 当方はOCマニアではないのでOCでBIOSを吹っ飛ばすことはまあ無いのだが、困るのがCPUアーキテクチャやリビジョンが変わった時。必要な時に必要なCPUと必要な環境が手元にあると思うなよ・・・というのは、ある程度濃い自作erでは分かるのではないかと。

 そんな中、正に「究極のBIOS復旧機能」なのがコレ。CPU不要、メモリも不要。電源とUSBメモリがあればBIOS強制上書きが出来る。ステキ過ぎる。
 勿論、OCでBIOS吹っ飛ばしたような場合でも復旧出来る。

 仕組み的にはオンボードに載せているシステム管理用のマイコンにBIOS Writerの機能も持たせてみました、というところ。
 濃い自作er以外にもWhiteBoxを出しているSIerには相当ウケると思うんだが、世間の評判はどうなんだろうね。自分的には感涙モノなのだけど。

 そしてこの後は今回の「お土産」、SABERTOOTHシリーズのアピールとか。

 まずは部品にも品質チェックにも良いモノを使っています、という話。品質チェックにサーバ用コンポーネントと同一基準を使っているというのは、サーバ用でもOEM/自社ブランド含めて実績のあるASUSだからといったところか。
 次、セラミックコーティングで表面積を稼いでいるヒートシンクは実際冷えまっせ、というのは「へー」としか。セラミックコーティングと言われるとフライパンしか思い浮かばないのだが、実際効果があるなら面白いですなコレ。

 最後に、オンボードに多数の温度センサを配置してあって、それがWindows上から監視出来ます&ファン制御と連動出来ますという「TUF Thermal Rader」機能。システム温度の監視が出来れば最適なクーリングも出来るということで、これは中々面白いかと。着想自体はサーバでは当たり前のコンポーネント温度監視辺りからかね。

 とまぁここまで製品のアピールをやって、最後にASUSブランドとしてのセールスアピール。
 「ASUSはTCOを推進しています」

 法人相手にこの話をしても「何を今更」という感じでウケないそうだが、DIY市場に向けてもアピールしています、とのこと。
 とはいってもDIY市場に向かってTCOといってもキーワードとして通じにくいだろうなぁ、と思う正直。余りにもビジネス臭いし。
 ということで、もう少し簡単に言ってしまうのはどうだろう。要するに

 「安物買いの銭失いをする前に、ちょっと高いけど高品質で安心のASUS製品を買ってね。後々のことまで考えたら結局お買い得だから」

 こんな感じ?。
 まあ「安かろう悪かろう」を選べるのも自作の楽しさの一つではあるのだが、そっち方向は現状でも選びたい放題なので(ぉぃ)、ASUSには是非カタい商売を続けていただきたいところ。

 まあこんな感じで、セッションが終わって質疑応答になったので、以前から思っていた件を一つ要望として出させて貰いましたよ。
 それは「説明書にブロックダイアグラムを入れて」ということ。

 昔はASUSも含めて殆どの会社のマニュアルには必ずブロックダイアグラムが載っていたのだが、最近では逆に載せている方が少数派。
 主としてオンボードデバイスやスロットの「ぶら下がり方」を確認するのが目的で、購入前にはこれを見てマザーの選択したり、購入後はどのスロットに拡張カードを挿すか検討するしたり、場合によっては拡張カードの種類や採用チップを検討するのにも必須なのだが。

 #勿論、購入後にWindows等のOSを入れてしまえば接続方法は調査可能だけど。

 この件についてのセールス担当者の回答がはっちゃけまくっていたのでその部分は飛ばすが、要するに大人の事情ってヤツで意図的に載せてない、今後も載せるのは相当難しいとのこと。なんでこんなことになってしまっているかというと、ユーザが確認したい「オンボードデバイスやスロットのぶら下がり方」そのものがメーカのノウハウとなってしまってるから、だそうな。

 確かに言われてみれば、IntelのメインストリームCPUは直結PCIeが16レーンしか無い、しかも分割は2本のみにも関わらず、何故かオンボードデバイスてんこ盛りなマザーの多いこと。あの帯域のキツさで大量のオンボードデバイスをどうやって振り回すか、についてはノウハウ必要だよね・・・確かに。

 #普段自分がチェックする範囲とは完全に反対方向なので気づかなかったよ。
  スループット・コンピューティング信者には広帯域バスは必須でございます。

 勿論要望としては伝えていただけるそうなので、まあそういうユーザの声もあるということだけでも知って貰えれば。

 ◇

 最後、TGNのMatsujun氏による酷使PCあるある話。

 そもそもeSportsになんて言っている時点で既にPCは全力でブン回しているのだろうなとしか思えないが、ゲームをプレイしている裏で(動画保存用の)録画して(放送用の)エンコード回して・・・なんてのはもう完全に「酷使」の状態。
 しかもこの上、LANPartyやったり、或いはスタジオにPCを持ち込んだりするとなると、スポットライトがガンガン当たって温度急上昇、なんて状況にもなっていたりするそうで。

 で、まあ当然といえば当然な気がするが、こんなことやってると大体1年でマシンが不調になるそうで。
 そりゃそうだわなぁ・・・メーカにしても想定外だろそんな状況でブン回されるのは、とか思いつつ。
 「ASUSのセッションの中で(セールス担当者が)『普通のマザーは3年ぐらいで不具合が出始める』とか言っていましたが、正直絶対そんなに持たね~とか思ってます」なんて発言が飛び出して笑いが起こったり。

 そんなゆる~い雰囲気のトークでしたとさ。

 #つかホントにそんな条件で日常的にPCを振り回しているなら、ASUSは是非TUFマザーを提供して「ホントに丈夫で長持ちします」ってのをフィールド実証して貰えば良いと思った、うん。

 ◇

 ま、今回のイベントレポートはこの辺りで。

 「豪華なお土産」でPCを組んでみたレポートについては、また後で。

Share

続・再びAMDの「ブロガー勉強会」行ってきて、技術話に萌えてきた件。

 AMD FX Logoこのエントリは前回の続き。「個々の内容は次エントリに持ち越します」と書いたネタですよ。
 ということで、テクニカルに濃いところ、がっつり行きましょう。

 ◇

 二番目はAMD Japanで普段はOEM(=PCメーカね)のテクニカルサポートをやっているという方が登場。
 PiledriverがBulldozerに比べてどう改良されたか、という話を中心に、AMDのアーキテクチャの変遷なんかも交えた話をしてくれました。

 まずは軽く、AMDのコアアーキテクチャの変遷について。
 AMDの屋台骨を長く支えたのはK7から始まるアーキテクチャの流れ。K7(Athlon)をベースに64bit拡張とメモコン統合化したのがK8(=Hammer)(Athlon 64)、それを更にブロック化して各所に改良をかけたのがGreyhound(Athlon X2~Phenom)。ここまでは基本的には「改良」ということで血統が繋がっていたのだが、ここで打ち止め。「革命的」デザイン変更が行われたのがBulldozerアーキテクチャ。

 #ちなみに世間では良くGrayhoundアーキテクチャを「K10」と呼んでいるが、AMD社内ではK10とは言わないとのこと。
  一方、BobcatはNexGenのNx686に発端を持つK6アーキテクチャに近い、と。

 Bulldozerの設計上の特徴は電力効率とダイ面積使用効率を追求し、使用率の低いユニットを2コアで共有すること。
 ・・・まあその初代実装であるZambeziについては(以下略。

 で、Zambeziをベースに細かい改良を積み重ね、IPCで10%改善という数字をたたき出したのがPiledriver。
 この「細かな改良」は具体的に何なのか、という話が本題ですよ。
 さすがにここで全部は書けないが、通しで聞いての正直な感想は「思ったより小規模だな」といったところ。「アンコア」部分(メモコン等)については全く変更ないし。
 だからこそAMDとしては異例の速度でZambeziからPiledriverへ移行出来たのだろうが、逆に言うとこれだけで10%もIPCが改善されるとは、Zambeziって・・・。

 #同一アーキテクチャで実IPC 10%改善ってかなり凄いことなのですよ。

 ◇

 そして一通りの話の後に、質問コーナー。
 ここぞとばかり訊いてみました、はい。

 Q:ボトルネックになっている命令デコーダについてZambeziから改良されているのか?
 A:追加命令対応のみで速度改善は無い。ボトルネックになっていることは把握しているが、ここに手を入れるとマイナーチェンジでは済まないので今回は見送っている。

 AMDの答えはSteamroller(=次世代Bulldozer)でデコーダを演算コア毎に分離するということ、な模様。

 Q:PiledriverコアはOCでの性能伸びが非常にリニアで、当初の設計ターゲット周波数は現行製品より高いと思われるが、ボトルネックはプロセスか。
 A:その通り。

 結局、GF 32n SOIではこの辺りが限界で、GFもAMDも苦労しているらしい。
 OCで性能がリニアに伸びるということはクロックを上げても足を引っ張る部分が内部に無いということで、これはアーキテクチャとしては非常に優秀だということなのだが、高クロックで回すと加速度的に消費電力が上がる特性のプロセスに実装されると(以下略。
 この辺りはAMDも相当シリアスに考えているようなので・・・まあ色々とウワサも出てくるんですな。

 Q:これだけの処理性能だとメモリがボトルネックになる場面が少なくないと思われるが。
 A:本音を言うと帯域はもっと欲しいが、チャンネル数を増やすのはコスト的に無理なのでハイクロックへ引っ張ってる。ハイクロックメモリの規格策定のためにパートナー企業との協力やJEDECへの積極的な働きかけ等を行っている。

 Q:DDR4への移行は。
 A:トレンドに遅れることはない、状況次第では他社に先駆ける。

 メモリ周りの話。本音はやっぱり帯域欲しいそうです。
 そしてDDR4の話で「先駆ける」というのは、現在のTrinityで既にメモリ帯域が限界になっていることを念頭に置いているのかな、と。ソケットFM3?ではDDR4なんて話が見えてくるのかも。

 ◇

 とまあこんな感じで、とっても濃ゆい時間は終了。

 あと、ちょっと面白い話を一つ。

 前回ネタにしたTrinityの省電力管理が非常に優秀だという件。
 これは「省電力はモバイル用CPUの生命線」ということで、AMD Japanの技術スタッフの頑張り分が相当入ってるそうな。
 成る程、Trinityが神経質と言ってもいいぐらい細かく電力管理していた裏には、日本人の芸の細かさというかコダワリというか、そういうものが入っていたのね。

 ◇

 ・・・って、ここまで長くなってしまったので、ASUSのセールスセッションとゲストトークについては次項目へ。

Share

再びAMDの「ブロガー勉強会」行ってきて、技術話に萌えてきた件。

 AMD FX Logo今回のネタは←こいつ、FX-8350こと「Vishera」です。
 ということで、タイトルに書きましたとおり、勉強会にいって来ましたので、前回に続いてレポートしますよ。

 って、本文入る前に、取り敢えずネタが一つ。
 12月8日土曜日、アキバでAMDが何かするつもりみたいですよ。
 内容はまあ、Piledriverの遊び方、みたいな感じの。

 とまあそれ兎も角として、レポート開始。

 ◇

 前回は新宿だった会場は、今回は10月半ばに丸の内に移転したというAMD Japanの新オフィスへ。
 例によっての大会議室、定員20人も入ればまあそこそこの入っている感の部屋にて。

 #ちなみに「耐災害性は高まったが賃料が上がったため事務所は狭くなってしまった」そうな。

 本日も1900開場・1930開始で2100終了予定・・・が思いっきり突き抜けて、実際に終わったのは2130頃。
 毎度お馴染みの時間超過、盛り上がっているから仕方ないんですけど。

 そして今回のイベントは3部構成+α。

 といっても最初は営業担当からのFXのショートタイムアピールで、スライドもつい先日のアキバでのイベントで見たものと一緒。まあ要するに「遊べるてお買い得なCPUですよ」ということで、さくっと流し。

 次、本日のキモは、Piledriverのハードウェアアーキテクチュアのお話。
 正直かなり濃いというか技術志向で、万人受けはしないだろうが、当方のような人間にはもう大好物でございます。

 その次、マザーを提供した「特別協賛」Asus「エイスース」営業担当のプレゼン。
 本日アピールしたかったことは「エイスース」の統一名称(違

 最後にプラスα、本日の特別ゲストはTGNのMatsujun氏。
 e-Sportsを日本で広めようとしてたり、LANParty主催してたり動画配信していたりする、そちらの分野では結構名の売れてる人ですよ。
 今回は酷使PCのあるある話で、開場がゆる~く盛り上がりました、はい。

 #例によって個々の内容は次エントリに持ち越します。
  それぞれ面白い話だったので、あんまり短くまとめると勿体ない。

 ◇

 まぁこんな感じで2時間があっという間に過ぎまして。
 一言で言うと今回も「面白かった」です、はい。

 個人的にはアーキテクチャをやっている担当者の話が聞けたってのが一番のポイント。
 そして、前回に引き続いてセールス担当や他の担当の人がが色々と語ってくれたこと。多方面に遠慮しまくる必要のあるアキバのイベントより一段濃い話が聞けます。

 「色々」具合は、例えば今回はこんな発言が飛び出したりとか。
 『Trinityについてはシェア30%という夢にまで見たといっても過言ではない数字が出せました』(by セールスの森本氏)

 いやね、「夢にまで見た」の部分の発言に実感がこもりすぎていて、まぁ何と言いますか。
 ちなみにアキバのDIY市場でのAMDシェアはTrinity発売前に10%前後~直前に9%まで落ちていたのが、瞬間風速(スパイク)では35%ぐらいまで伸びたそうな。BCNの記事では24%となっているのでこれはその初動の瞬間部分が取り除かれた数字なのだろうが、にしても確かにTrinityは売れているようで。

 #いやだって、低価格デスクトップ向けにはホント良いものだと思うよTrinity。
  サーバ用途とECC信者(自分の他に居るのかこんなの)以外には本気でお薦め。

 あと、今回は特別協賛でASUSの担当の人が製品アピールに来ていたけれど、こういうコラボ?もいいですな。
 アキバの「リナカフェ」でのミニイベントが流行っていた頃はこういうコンポーネントメーカが参加することもそれなりにあった気がするが、あの場所が無くなってからすっかり見なくなってしまったしまった気がするので。

 まあ、そろそろネタも尽きてきた気がするので次はRADEON 8xxx系発売時なのかな?とか思いつつ。
 AMD自体財務状況はあんまり宜しくない状況なのでお財布的には結構厳しいかも知れないが、今後もこのテのイベントは是非継続して欲しいところ。

 ◇

 ちなみに本日の軽食は中華弁当、豪華なお土産は

 FX-8350 と SABERTOOTH 990FX R2.0

 でしたとさ。

 まぁこれだけでも十分に豪華なことは間違いないのだが、今回はサプライズが付いてまして。
 ジャンケンに勝てた人には、AMD Memory(遠目で見た限りではPatriot製?)、Sapphire Radeon 7870(!!)、7950(!!!)という更に豪華なお土産が追加になってました。

 んで自分はジャンケン弱いので(以下略。

 ♯Memoryぐらいならまぁ兎も角、7950までお土産ってのは正直おったまげたなぁ、マジで。
  つーかFX-8350とRadeon 7950の組み合わせって言ったらゲーム以外やることないやん<偏見。

Share

AMDのプラットフォーム戦略を考えてみる。(Trinity Review おまけ)

 さて、Trinityのレビューが終わったついでに、AMDプラットフォーム戦略を考えてみる。

 ◇

 まず、現状分析から。

 新プラットフォームであるFM2の上で第二世代APUであるデスクトップ版Trinityを走らせ、IntelのIvyBridgeに対抗しようというのがAMDの戦略。

 まあAMDが現在持てる体力出来ることは精一杯やっている印象はあるが、既に限界も見えているのが厳しいところ。
 それは「CPUアップグレードパス」が存在しないこと。
 これがAMD APUのOEM(メーカ製PC)採用にブレーキをかける一因にもなっている。

 何より、もうすぐ出てくる第二世代FXシリーズがAM3+だということが厳しい。
 だが、これは現在のAMDにとってそうせざるを得ない理由があってのこと。
 サーバ向けのG34/C32にはPiledriverをさっさと投入しないと話にもならない。そうなるとバスはHyperTransportになるので、基本コアが共通なFXもバスはHTとなり、PCI-Expressしか出ていないFM2にはどう頑張っても乗せようがない。

 勿論、以前Socket C2012/G2012と呼ばれていた次世代になれば、AMDもCPU側にPCI-Express IFを突っ込むことになるので、FM2にもFXシリーズの純粋なCPUが来ることが期待出来る・・・筈だった。そして同時にAM3+は漸くプラットフォームとして終了する、筈だった。
 ついでに、この世代では構造的にPCI-ExpressとHTと両方を持つことになるので(AMDにとってのHTはIntelにとってのQPI)、現行G34/C32/AM3+ソケットにも「最後の製品」として出して、それが世代間の橋渡しになる、筈だった。

 #昔どっかで出ていた「FM2+」ってのは恐らくFM2にPCI-Express 3.0と高TDP対応を突っ込むモノだったのではないか・・・と推測。APUしか無いFM2で高TDP対応ってのはマザーボードのコスト的にも許されないだろうが、単品CPUが来るなら許されるので。

 が、C2012/G2012は既に「無かったこと」に。DDR4への移行がズレこんでいるのも理由だろうが、兎に角、パフォーマンス向けコアへのPCI-Express Bridge統合は当分無くなった。
 結果、FM2への単品CPU投入も、AM3+の打ち切りも、当分無くなった。

 こんな状態で、AMDはTrinity一本のFM2で持ち堪えられるのか。いや、ムリだと思う。

 #しかしサーバ市場でのPCI-Express 3.0対応はどうするんだろ・・・新ノースブリッジ作るしか無いんだが。
  サーバ向けは兎も角、デスクトップAM3+向けに新ノース投入なんてやった日には、いよいよ以て誰もマザー作ってくれない気しかしない。

 ◇

 というワケで、当方が思う現状打破の切り札は

 「AMDデスクトップAPU・CPUの、早急なFM2プラットフォームへの統一とAM3+廃止」

 新しくダイを起こすのが無理なら、FXコアとNorthBridgeの両方をMCMで載せてでも、プラットフォームを統一すべき。
 何しろ、現在のAMDにはデスクトップ向けでAM3+とFM2という2つのプラットフォームを維持するだけの体力は無い。
 共倒れという最悪の結果になる前に、早急に決断すべきと思われる。

 こうしてAMDデスクトッププラットフォームがFM2で統一されれば、メーカPCでも採用例の増加が期待出来る。
 APUを積もうがCPUを積もうがマザーが1種類で良いので、同一マザーでもAPU・CPU性能で製品バリエーションを増やすことが出来る。この柔軟性はOEMには評価される筈。

 同じことは自作PC市場でも言える。
 現状では最上位APUのCPU性能に満足出来なくなった場合、プラットフォームごと変更する必要があり、これがFM2プラットフォームを評価する際にマイナス要素になってしまっている。
 だがここに十分な性能の単品CPU+十分な性能の単品GPUというアップグレードパスが存在すれば、構成の柔軟性が評価されるし、購入者がも安心してFM2プラットフォームを選択出来る。

 更に、マザーボードメーカーもソケットが1種類しか無ければ少品種大量生産によるコストメリット等を得易くなる。

 まあこういうことをするなら、150Wぐらいは喰わせられてPCI-Express 3.0対応な「FM2+」規格を本気で作るしか無さそうだが、それがFM2と互換性を持つなら市場もそんなに混乱せず移行するのでは。

 ◇

 まあ兎に角、AMDの状況は現状でも決して良くない上に、来年になれば更に厳しい状況が待っている。
 それは、Intelの次世代CPU、Haswell。

 Intelとしては久々の大改良モデルで、実IPCでも対IvyBridge比で10%程度は改善してくることが予想される。
 これは主としてCPUコアの強化によるもので、要するにシングルスレッド性能向上の為の重装備化をIntelは更に進めるということですな。
 対するAMDはPiledriver。シングルスレッド性能と従来型命令MIXでの処理効率を犠牲にしてまでダイ面積を削ったコアですよ。

 この時点でも、IntelがAPUの実装や思想に追いついてくることはないし、GPUとしての処理性能でもAMD側の方が優位なことは変わらない筈。
 が、CPU性能ではIntelが圧倒してくる。ダブルスコアとは考えたくないが、圧倒的な差が付くのは確実。

 この状況で、Haswellが製品として出た時、AMDがどこまで踏ん張れるか。
 いや、つかマジで踏み留まって貰わないと困る。
 ここで押し切られたら最後、VIA/CyrixのC3のように、ズルズルとPC市場から退出を迫られかねない。

 兎に角、「PC」の将来の為にも、x86の将来の為にも、AMDがこれからも一定以上のプレゼンスを持ち続けることを切に願う。
 いや、最低でも今以上のプレゼンスは絶対に必要だと思う、本当に。

 #Intelは独占市場では物凄いお値段付けてくるし。
  まぁ商売的観点からしたら当たり前なんだけど、さ。

Share

検証まとめ・・・ Trinity APU の立ち位置は。(Trinity Review No.5)

 さて、Trinityシリーズも5回目。そろそろ〆といきましょう。
 今回はTrinityの用途とか、適したフォームファクタとか、そういう話。

 その1◆Trinityのキャッチコピーを考えよう。

 「どうせ買うなら、楽しい方」

 現在のTrinityの立ち位置を一言でまとめるなら、こんなキャッチコピーになるのでないかと。

 #何だかクルマ風だけど。

 パーツ一式揃えてから、Win8環境でのテストも兼ねて普段使っているアプリの類(非ゲームばかり)を触ったりもしてみたのだが。
 およそ一般的な「ビジネスアプリ」では力不足を感じることは無く、概ね快適に使えてしまった。
 また、電力管理はさすがに完成度が高く、全力稼働時の消費電力は低くないにも関わらず、通常使用では平均消費電力はかなり抑えられている。

 更に、GPUの項目で取り上げ損ねたが、GPUの動画再生支援能力もかなり強力。
 30fps・3MbpsのFull-HD mp4(YouTubeの前面展望動画)を再生して、CPU負荷が3%ってのはさすがにどうかと。

 #ちなみにRadeon 6450+Phenom IIX4 910eだとCPU負荷15~20%程度。

 一方で、CPUの演算能力はというと、はっきり言ってIntelに全然敵わない。
 確かに「大抵の用途で間に合う」レベルには達しているが、でも決して「パワーが溢れている」状態ではない。

 こんなことを考えていたら、何となく最初に書いたキャッチコピーが浮かんだワケですよ。

 その2◆最適な用途は。

 HTPCと、非ヲタク系PCユーザーの普段使いPC。

 「HTPC」

 まずは本命、ホームシアターPC。映像出力が強いのだから、これは当然の帰着点。
 強力な動画再生支援に、充実したデジタル出力。オーディオは何ならお気に入りのDACをUSBにぶら下げましょう。
 プロジェクターや立派なオーディオ機材が無くとも、自宅TVがある程度大きかったり、ちょっと高いヘッドホンを持っているなら、HTPCの楽しさに入門することは出来ますよ。

 ・・・とはいえこれは当たり前過ぎる話。
 個人的には次が本命だと思っている。

 「非ヲタク系PCユーザーの普段使いPC」

 Trinityの性能バランスを見れば見るほど、ヲタよりも非ヲタにこそウケがいいのではないかと真剣に思ってしまうのであり。

 何しろ、日常での使い方を前面に押し出す非ヲタ向けのアピール方法ならば、CPU性能がネックになる場面は圧倒的に少なくなる。
 今時非ヲタでもYouTube・ニコ動・USTREAM辺りはほぼ常識だが、強力な動画再生変換支援はCPUの弱さを十分にカバーしてくれる。
 デスクトップでのアプリ画面描画も、何しろGPUが強力なのでサクサク動く。

 これがヲタ向けとなると、途端に「CPUが弱いから・・・」という話になる。

 なので、非ヲタに売るPCにこそTrinityは向いている筈。ここはAMDの営業が頑張ってPC各社に売り込むべき。

 #「低価格エンターテイメントPC」は全部Trinityで良いと思うんだ。

 その3◆最適なフォームファクタは。

 Mini-ITX。これしかない。

 全部載せで、小さくて、楽しくて、AV機能の充実したマザーが欲しい。
 3画面フルデジタル出力と高音質HD Audioは最低限、Bluetoothや無線LAN辺りも積んでると嬉しい。
 リモコンなんか付いていると更に遊べるかも。

 こういうマザーに65W版のTrinity、この組み合わせが恐らく一番「Trinityの強み」を活かせる組み合わせだと思う。

 #この記事を書いている時点で未発表だが、個人的にはAsusとかZOTAC辺りに期待かな。GIGABYTEはどうかしらん。

 それともう一つ、Trinityに絶対に必要だと思うマザーがある。
 それは、OC可能なフル装備Micro-ATXマザー。

 MicroATXというお手頃サイズで、ちょっとしたOCも楽しめて、且つ安定度は抜群という一品。

 というのは、TrinityにATXマザーは「大きすぎる」と思うので。
 何しろCPUとオンボードでほぼんでしまう。ストレージもSSDなら小さくて済む。
 単品GPUを追加するにしても、他に刺すものが無ければMicroATXマザーで十分。

 コンセプト的にはMAXIMUS IV GENE辺りに近いが、アレよりはもう少しお手頃に。
 手元の GA-F2A85X-UP4 のまんまmicroATX版、なんてのがあるとドンピシャかと。
 値段は10K台前半で。フォームファクタ考えればチップセットはA75でも十分かも。
 そんなコンパクトなマザーにA10-5800「K」を載せて、ちょっとしたチューニングを楽しむ、ぐらいの方が「丁度いい」。

 何しろこのデフレ、そして自作PC離れ時代。
 自作PCの醍醐味である「チューニング」を低価格かつお手軽に楽しめる、そんなプラットフォームがあっていい、いや必要だ。
 APUはもうそこにある、値段も悪くない。ケースもCPUクーラーも電源も、SSDもHDDも選択肢はいっぱいある。

 後は、マザーだ。
 APUの魅力を最大限引き出せるマザーが出るか、これがTrinityの命運を握ると言っても過言ではないと思う。

 ◆

 ・・・まぁ、こんな感じで。
 取り敢えず、5回続いたTrinityな連載も今回が最終回。

 次回は「ついでに」AMDのプラットフォーム戦略をちょっと考えてみることにしましょ。

Share