「HGST ストレージ製品説明会 The First」に行ってきた。

 さて、今回は先日twitterではぽろっと出したHGSTのイベントに出てきた話でも。
 既に出ているITmediaとかImpress Watchの「当たり障りのない」記事とはなるべく被らない方向性で、つらつらと箇条書きっぽくに書いてみる。

 なお、当たり前だが、以下の記載内容については、当方のバイアスのかかった推測や補正込みの「印象」ということなのでお間違いなく。

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 全体としての印象は、HGSTの製品開発に対する姿勢というかポリシーは兎に角「カタい」ということを再認識。

 良い意味では「手堅い」ということであり、製品の品質といった部分ではHGST自身が絶対的な自信を持っているし、繰り返し出てきた「顧客のニーズ」「デマンド」「要望」といったキーワードをを取っても、本当に必要とされる製品を作ろうという姿勢はひしひしと伝わってくる。

 一方悪い意味では「固い」ということ。前述のひっくり返しではあるが、更に平たく言えば「面白みのない」ということでもある。これは更にひっくり返すと「面白みのある」製品がエンタープライズ市場で果たしてウケるのかという話でもあるのだが。

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 Heドライブについては、ユーザー側では当方も含めてヘリウム漏れの心配をしている声はやはり多いようだか、製造側としてはその要素についてはかなりの自信を持っている様子。ヘリウムシールの設計寿命は想定稼働時間5年に対して倍は見ているとか。

 ♯そしてヘリウム内圧は企業秘密。

 一方で2.5インチフォームファクタへのHe導入は今のところ考えていないそうで、理由としては2.5インチでは大容量のデマンドが非常に少ないから、だそうな。

 そして大容量といえば一般販売ではSeagateが先行しているSMRドライブだが、HGSTの現時点での姿勢は「特殊な用途向きで、直近で広く使われるものではないだろう」とのこと。
 HGSTとしては「大容量品でも今までと同じように使える」ことが重要だと考えていて、それ実際にHDDが使われる現場からのデマンドであり、正にそこにHeドライブの価値がある、ということらしい。

 HGSTはドライブメーカとして現在の旺盛な容量に対するデマンドは重々認識しているが、現状の技術ではどう頑張っても応えられていないのが現実、とのこと。

 次世代技術としてもHAMRやBPMRも勿論研究しているが、現状では研究室から出して製品化出来るレベルには達していないとのことで、特にストレージとして重要な信頼性という意味では・・・ということらしい。
 そういう意味で、現在の1.2TBプラッタ(密度)製品の販売期間は長くなるのでは、とも。

 一方で、現状以上にデマンドと製品の乖離が激しくなるようでは「プラッタを更に増やすという方向性も検討の余地あり」という風に解釈出来てしまう言い回しも。
 まぁ確かにプラッタ増やすってのは一番手っ取り早いテではあるし、HGSTが伝統的にプラッタ枚数マシマシ大好きなことを考えるとやりかねない気もする。が、現状7枚に更に追加って8枚ってことか?

 ちなみにヘリウム採用の決め手も結局「プラッタ増やすにはこれしかない」だったそうなので。
 ホントHGSTって多プラッタ好きだよね。

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 HGSTの現行ラインナップを見てみると、安売り競争となり利幅の薄いデスクトップ向けラインから手を引いたのは周知の事実だが、5K1500等の特色ある製品も整理されてしまったのは結局「ボリュームが出せないから」ということらしい。
 特に2.5インチについては大容量品へのデマンドは(コンシューマでも)殆んど無いそうで、逆に言うと、現在残っているTravelstarのラインナップ=デマンドがあるということらしい(具体的には500GB~1TBのライン)。

 5K1500については製品プロデュースを行ったHGSTの中の人としても思い入れはある製品で、購入者からも好評だったとのことだが、ビジネスとしての判断がなされたとのこと。
 また同じ理由で、個人的には大変期待していた5K2000も出ることは無い(現時点で製品企画自体が無い)とのこと。技術的には作ろうと思えばすぐ作れるんだけどね、らしいのだが。残念。

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 最後に、Ultrastar SNについてはNVMeやSCSI Expressの立ち上げ時期にフラッグシップとなる製品で特に(SSDの「見せ場」である)Queが深いトコでのIO密度が高いのがウリ、という位置づけのようだが、個人的に非常に気にしているハードウェア暗号化、具体的にはFIPS140-2やTCG Opal2、IEEE1667といったモノは実装していないそうな。その辺りは「これからの課題」らしい・・・う~ん。

 ♯SSD相手の高密度IOだとソフトウェア暗号化なんて全く歯が立たないので、個人的にはハードウェア暗号化は必須だと思っているので。

 また、この製品のEnduranceが3DWDなのは、HGSTとしてこのレベルを一つのスイートスポットとして見ているからとのこと。
 確かにIntelだとP3600がこの辺りの数字だったり、他社でも割とよく見る数字であり、やっぱ売れ筋なのかしらん・・・個人的にはエンタープライズで寿命を気にせず使い倒すには10DWDぐらい欲しい(Intelの3700とかがこの辺り)のだけど、やっぱり値段にも跳ね返ってくるし、ってことなんでしょうなぁ。

 ちなみに価格は「未定、検討中」とのこと。3.2TBのEnterprise SSDなんて、1台で100万は超えそうだが・・・。

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 以上、取り留めもない書き方ですが、当方の感想はこんな感じですかね。
 正直「マニアック」で、AMDがやってるAPUやnvidiaのGPUのイベントのようにライト層まで裾野広くファンが集うという性質のものではないとは思うが、それでも自分のような人間は「また新ネタが出来たらやってくれないかな」とは思いましたよ、はい。

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またSeagateの国内流通が妙なことに・・・。

 さて、SeagateのHDDというと、最近では「国内正規品」のシールが貼られているのが当たり前で、一部のショップが独自に海外から直輸入するとか、どっかの棚ズレ品がスポットで突然出てくるモノぐらいしか「並行輸入品」「組込品」が出てくることは無い、というのが当方の認識だったのだが。
 このところめんどくさいブツが国内市場で出回っているので、ちょっとメモ書き程度に。

 で、めんどくさいブツというのは、「国内正規品」のシールは貼られていないのにも関わらず、SeagateのサイトでチェックするとRMAがきちっと通るという代物。
 当方が見かけた限りではRMAチェックすると全てSYNNEX INFOTEC扱いですな。勿論正規代理店ですよ。

 今後全代理店がシール貼付を止めるのか(在庫限りってヤツ)、それともSYNNEX INFOTECだけが手を抜いているのかは不明だが。既にWDが国内正規品でもシール貼付を中止しているので、Seagateも貼り付けを止めたとしても不思議は無い。

 ・・・誰か真実を教えて下さいな。

 #当方が訊ける範囲ではどうにもあやふやな話ばかりで真実が不明なのですよ。

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 以下、ここからは古い人間のボヤキというか、昔話。
 暇人だけ読んで下さい。
 PCパーツを扱う人間ならお馴染み「SYNNEX」なんですが、コレ以前と今では全くの別会社なんですよ、というヨタ話ですわ。 
Continue reading “またSeagateの国内流通が妙なことに・・・。”

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テープメディア礼賛。

 ※予告しておきますが、この記事にはS.Kazの個人的嗜好によって成り立っております。

 さて、LTO7の実製品の登場が2015年中にはほぼ絶望的になり、個人的にも超ガッカリな状況なので、ここで日本では極少数派のテープメディア信奉者から、テープメディアがいかに現代のニーズとマッチしており、優れたメディアかということを力説してみようかと。
 ということで、普通の人はどん引きかも知れないが、所詮個人blogなので言いたい放題ということで。

 なお、S.Kazの言うことが信用ならんという人は、JEITA(電子情報技術産業協会)が作った資料がテープストレージ入門として非常に出来が良いので、これを読むべし。

 テープストレージ動向 -2013年版- ←JEITAのサイトよりpdfへリンク

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 まず、テープメディア信奉者としてもテープが万能であるとは思っていない。ここは誤解しないでいただきたい。
 が、現在のデータの爆発的増加の中では、テープの特性が最大限活きる場面が増えている、ということだけは間違いない。

 では、そのテープの特性が最大限活きる場面とは何かというと、これは「バックアップ」と「アーカイブ」です。
 これらのデータの保存、「静的保存」にはテープが最強と言い切ります、当方は。

 ではその「バックアップ」そして「アーカイブ」とは何か。
 「バックアップ」はまぁ説明不要だろうが、「アーカイブ」については少し説明をば。

 今時、大量のデータを個人でも抱える時代。その大量のデータを相手にするデータセンタの類では、桁の違う大量のデータを抱えることに。
 が、このデータのうち、保存されると同時に直ちに読み出される可能性の高いデータは、うまく分類さえ出来れば実は大した量では無い。とある調査ではデータセンタが抱える全データ量のうち、7割は「直ちに取り出される可能性は非常に低いが、保存しておかないといざという時に困る」データだとか。

 ♯これでも控えめな数字で、別の調査によると95%なんて話も。

 このような「直ちに取り出される可能性の低いデータ」は一般に「コールド・データ」と呼ばれ(逆に、すぐに取り出される・書き換えられる部分は「ホット・データ」と言う)、量が多いだけに保存コストが大問題となる。
 この場合のコストというのは一元的にはおカネ的な話だが、そのおカネがかかる元ネタを探すと、例えば土地代だったり電気代だったり、媒体そのものの購入費用だったりするワケで。
 で、このような「コールド・データ」の保存即ち「静的保存」に、テープメディアは最強なワケですな。

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 では、次に何故テープメディアが静的保存に最強か、ということを書いてみましょうか。

 1. テープは安い。

 エンタープライズクラスの信頼性を求めると、容量単価ではっきり言って勝負以前。テープの方が圧倒的に安い。
 特にLTO6では2.5TBの媒体が¥8,000程度で入手可能で、容量単価で見れば「信頼性って何ですか」なデスクトップHDDともいい勝負という。

 こんなに価格が違うのは、テープの構造が極めて簡単だから。
 メカ的な要素の殆どをテープドライブ側に持たせているので、媒体としてのテープは構造簡単&低価格に出来るワケ。
 片やHDDアーカイブでは全てのHDDドライブにモータやヘッドといったメカ的要素満載のため、必然的に構造が複雑で且つ高価になる。

 ♯昔はこのテープとHDDのイイトコ取りを狙った「リムーバブルHDD」という製品もあったが、今時のHDDはメカが繊細過ぎてこんな手荒な手法は使えない。というか当時から「リムーバブルHDD」というと価格は高く信頼性が低く、ヒットという程売れた製品は結局存在せず。

 もちろんテープドライブ自体LTO6では最安値でも¥40万ぐらい、ライブラリとなると¥100万からという話になるが、テープ自体が安価なのでトータルコストで見ると全く問題にならないレベル。
 というかHDDも実際使う為にストレージアレイ(装置)を買う必要があるので、これも正直安くない。

 2. テープはエコ。

 テープが安いのは構造自体が簡単だから。
 そして当たり前だが、テープメディア自体の保存には電力は不要。まぁ棚や金庫の類は欲しいかも知れないが。
 もちろん長期保存では時々テープのリテンションやエラーチェック作業か必要になり、テープデッキが電力を消費するワケだが、それでも常時通電中のHDDと比べると話にならない。

 一方のHDDはというと、最近でこそ一部HDDを停止させるようなシステムも出てきてはいるが、基本的にはHDDは通電しておく必要がある。理由は複数あるが、HDDは起動・停止のタイミングで故障する可能性が高いとか、通電しておかないとHDD自体のバックグラウンド処理が起動しないとか、システム自体がHDD常時稼働を前提に設計されているとか。
 まぁ要するに、普通におウチでやっている「書き込んだHDDをオフラインで保存する」という発想はエンタープライズでは通用しません、はい。

 3. テープはタフ。

 LTO媒体を例に取ると、おおよそ500回のフルアクセスをメーカー保証値にしていることが多い。つまり、寿命という言い方をすると2.5TB×500回=1.25PBとなる。
 方やニアラインHDDはというと、年間書き込み量が保証値では180TBとかその辺りに設定されているものが多い。これにメーカー保証期間である5年を掛けると、寿命は0.9PBとなる。
 てなワケで、保証の範囲内で使うのが大前提のエンタープライズ世界では、普通に寿命を考えるだけでもテープは優秀なんですな。

 え、保存寿命?もちろん長いでっせ。
 LTOならば媒体メーカーですら「10年で入れ替えてね」と言っている、つまり保存目的なら10年は大丈夫という意味。更に、メーカーの媒体実物保存試験では既に20年を超える実績値がある。

 その上に、磁気テープはHDDに比べ災害に強い。ケースに入っているので衝撃にも強いし(だからってラフに扱わない方がいいに決まっているが)、丁度読み書き中でもない限りは地震程度の振動でダメになることもない。更に、いざとなればケースから取り出してテープだけを丁寧に洗浄しデータを取り出す、なんて手法も使える。

#HDDもプラッタを取り外して洗浄後読み出す最終手段はあるにはあるが、テープの方が遙かに成功率が高い。それはヘッド等の物理的な危険物が同一ケース内に無いことに加え、テープの記録密度がHDDより段違いに低いからで、詳細は後述。

 4. テープは速い。

 LTO6では無圧縮でも160MB/S、2.5TBのテープを4時間半で駆け抜ける。
 勿論、IBMやOracleが売っている大規模エンタープライズ向け製品だと更に速い。

 一方、HDDアーカイブで使われているニアラインHDDでは、最近漸く1プラッタ1TB品が使われるようになったレベル。デスクトップ向けHDDで御存知の通り、1プラッタ1TBでは初速こそ200MB/Sを超えるものの、終端では100MB/S近辺まで落ちてしまう。

 ということで、テープが遅いというイメージは完全に勘違いであるのですよ、はい。

 5.テープはコンパクト。

 物理的サイズを見比べれば一目瞭然。
 LTOテープの体積は231立方cm、3.5インチHDDの物理サイズは379立方cm。
 小さいでしょ。

 そしてLTO-6は無圧縮で2.5TB、LTO-7は無圧縮で6.4TB(予定)。
 3.5インチHDDの現在のニアラインは6TB。

 ぱっと見だいぶ差がありそうにも見えるが、体積比で割ると3.6TB相当ということで、実はそこまで離されてるワケでもないんですな。
 ・・・だから早いとこLTO-7を商品化してくれと。

 6.テープは売れている。

 事実、テープメディアの出荷容量はどんどん伸びている。
 この辺りはJEITAやJDSFの資料でも確認出来るし、テープメディア専門でトラックしている調査などでも確認出来る。

 まぁ勿論、短期的には上下の波があったのは事実だが、トレンドという意味では上がり調子は間違いない。

 7.テープは将来性がある。

 このblogでも何度か取り上げているが、従来型HDDは既に容量限界が見えている。製品化の目処が立ってない実験室レベルの話でも、現在の7~8倍の記録密度までしか実証出来ていない。

 片やテープはというと、実験室レベルでは現在の60倍の記録密度、LTOカートリッジ1本で154TB超相当の記録再生に既に成功しており、まだまだ伸びしろがある。
 この理由は至極簡単で、LTOのテープというのは引っ張り出すと800m以上の長さがあるので、記録に使える面積という意味ではHDDとは格が違うということ。
 更にその面積の広さのおかげで、HDDと比べると記録密度は2桁も違う=密度が低く、その分余裕がある。
 その上、密度が低いので記録ヘッドもHDDではとっくに見かけなくなった旧式のものを使っていたりする。逆に言うと、記録密度を上げたければ現在のHDDと同じ方式のヘッドを採用するだけでもだいぶ違うということ。

 ♯何しろ現在市販されているテープ1本で2.5TBの容量のあるLTO-6ですら、1ビットは物理的にHDDの1ビットの300倍以上大きい。

 ちなみにこのテープの高密度記録技術を現在主に引っ張っているのはあの富士フイルムで、今や独走状態に近い。
 そしてLTOのロードマップが昨年9月に第10世代(48TB@巻♯無圧縮)まで伸びたのも富士フイルム(とIBMの)実証成功があったからこそで、更にはそれまでのロードマップでは第8世代(12.8TB@巻♯無圧縮)が最後となっていたのも、同じく富士フイルム(&IBM)が2010年に35TB相当の実証に成功しているからという。

 #テープといえばSONYも技術を持っているし、実験室レベルの研究成果出してはいるが、実証や製品化という話では富士フイルムにだいぶ後れを取っていると思う。

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 以上7項目、テープの優位性をくどくどと書いてきましたが、要するに。

 テープなめんな

 お後がよろしいようで(どこがだ)。

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静かで大容量で結構クセモノ、或いは、ST8000AS0002 First Impression。

 ということで、アキバにモノが来たので買ってきました。
 SMRな8TB、SeagateのArchive V2。
 自分的には初めてのSMRなので、ちょっと触ってみた感じでFirst Impressionを。

 まずは、取り敢えずの3行まとめ。

 ・静かで遅い
 ・挙動がキモい
 ・信頼性は未知数

 えと、こんな感じか?
 以下、もう少し細かく。

 1◇重くて静かで。

 実際に手にした最初の印象は「重い」。
 ここのところSeagateのコンシューマ向けでは軽量化=コストダウンを図ったものが多かっただけに、手持ち感がだいぶ違う。
 まぁそりゃそうだよね、プラッタ6枚も入っていれば。

 そして通電してみると、6枚とは思えない静かさ、そして「ドライブ自体の振動の少なさ」に感心することに。
 まぁ高密度プラッタにとっては振動は大敵なので頑張って調整して抑え込んでいるのだろうが、ここまで騒音と振動が低いドライブは久しぶり。
 特に振動という観点ではWD REDに圧勝という印象。通常時の騒音でも多分こちらの方が優秀だと思われ。

 #但しランダムアクセス時に時々大きめのヘッド動作音が聞こえてくる。ある意味Seagateの伝統芸のようなこの挙動が出た時は、明らかにWD REDより騒がしいので。

 2◇既にバランス崩壊済み。

 次に、8TBもあれば誰もが気になる転送速度。
 8TBを5900rpmで回しているだけあり、全セクタのRead/Writeに14時間半程度かかりました、はい。

 ・・・まぁなるべくしてなったとしか言いようが無いのだが、コンシューマー向けHDDの全周チェック所用時間としては最長記録では。

 ちなみに、シーケンシャルのゼロクリアではReadとWriteでは所要時間差は誤差程度。
 まぁゼロクリアなんてワンパターンなタスクはキャッシュが上手く捌いているのでしょう。

 3◇隠しきれない暴れ馬。

 さて、シーケンシャルでは殆ど感じさせなかった「SMRっぽさ」だが、ランダムアクセスを始めた途端にそいつは馬脚を現したのであり。
 従来型HDDと比べるとどうにも「キモチワルイ」動き、敢えて書くなら以下のような感じ。

 A.単純なRead

  密度高くともやっぱり5900rpm、やや遅い。
  特にランダムアクセスに「重さ」を感じるのはヘッドの位置合わせにでも時間がかかっているのかね。

 B.単純なWrite

  (基板上の半導体)キャッシュと(プラッタ上の)キャッシュエリアをコントローラがアグレッシブに振り回しているようで、本当に少容量だと(OSから見て)一瞬で書き込みが終わってしまう。

  #HDTuneで測ると「Writeの平均アクセスタイム:0.5ms」なんてとんでもない数字が出まっせ。

  また、HDD上のキャッシュエリアに収まる程度の容量だとシーケンシャルでもランダムでもほぼ同一速度で書き込めてしまう。
  但しこの書き込みも、ほぼ等速が続く従来のHDDと違い、書き込み速度が激しく上下する。
  とはいえこの程度なら普通にOS上から使用している分にはほぼ気にならない筈。

  #大袈裟に言うと「小刻みに息継ぎしているような」感覚。

 D.ReadとWriteの組み合わせ

  一番キモチワルイというかSMRらしさが炸裂するのが、この「小刻みなReadとWriteが連続する」アクセス。
  一言でまとめると「非常に遅い、アクセスがいちいち引っかかる」状況になります、はい。

  実際、こんな状況ではSMRなHDDのヘッドは「Read先」「キャッシュエリア」「SMRで上書きされてしまうトラック」「Write先」という4箇所を股にかけて動作している筈で、重くなるのは当然といえば当然なのだが。
  これが従来型HDDならヘッドは「Read先」「Write先」だけを往復していれば済んだ筈で、この差は歴然。

  そしてこのようなアクセスパターン、実は普段から珍しくもない。
  「OS起動領域」は当然として、「データ領域」でも例えばDB等は正にコレなので、実に普段使いには向いていないということですな。

 ◇

 以上、つらつらとこの「初物」について書いてみましたよ。

 個人的には「まぁ初物の割には挙動はまともかな」という印象がある一方で、「実際の書込タイミングががOS上の書込タイミングと乖離している上に処理状況がOSから見えない」キモチ悪さは拭いようがないのもまた事実。
 また、これだけの高密度プラッタだが、品質については全くの未知数の状態。評価が見えてくるまで最低1年はかかる。

 ・・・ということ、で。
 面白い商品ではあるが、癖も強い上未知数な部分も多いことをお忘れ無く、と。

 P.S.
 これがホントに最後、一点だけ。

 この製品に関して「エンタープライズ品並の品質管理」というSeagateの広報の台詞を肯定的に評価している人が多いようだが、この台詞をひっくり返すと、要するに

 「エンタープライズ品並の品質管理をしないとそもそも製品として最低限のレベルが保てない」

 ということですね。さすがにこの記録密度を出すのはまだ簡単ではないのでしょうな。

 実際、エンタープライズに直ちに持ち込めるだけの品質と自信があるならば、HGST対抗のニアライン向けラベルを貼って出荷すれば良いのですよ。
 Seagateのラインナップ的にも空きポジションだし、単価も高く出来るし、(Seagate的には)良いことづくめ。

 にも関わらず、何故敢えて、単価の安いコンシューマやライトユースNAS向けのラインにこの製品を放り込んできたのか。
 その辺りを考えてみるのも、面白いんじゃないですかね。

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2016年のAMDをCPU&APUから見てみる。

 前回のエントリでは2015年の直近のAMDのロードマップを見てみたが、今回はその続きというかその先のネタを。
 Project Skybridge、Zenコア、DDR4移行、ソケット移行と盛り沢山(の筈)の2016年を見てみましょうか。

 あ、念のため。意見には個人差があります、ということで。
 さすがに来年のこととなると半年も経てばまた書き換わっているかも知れないが、現時点で見えているのはこんな感じ、と。

 3◇Project SkybridgeとZenとFXとOpteronと。

 さて、デスクトップ版Carizzoをスキップする程開発リソースを喰われているx86版Project SkybridgeことSummit Ridgeだが、予定通りだと製品が実際に出てくるのは2016年。Zenコアはそれまでお預けですな。
 そして、今出ている情報を見る限りでは、次期FXは実質的にSummit Ridge=Opteronと同一コア。恐らくUP専用でソケットFM3?もOpteron・ARM Opteron・FX・A-Seriesで共通になると個人的には予想している。

 ♯今のAMDにはそんなに多くの種類のソケットをサポートする体力は無いし、別にする理由も特に無いと思っているので。
  Freedom FabricとDisplay Port辺りはARM OpteronとA-Seriesで共通ピン位置にしてマザー側実装でどちらを取り出すか決まる、なんてのでも困らないだろうし。

 ・・・なのだが、個人的には既に黄色信号が灯っているような気がして心配というか。
 最大の問題になりそうなのは、Project Skybridgeが14nmプロセスがターゲットだという話。

 何故って、2016年中にGFで14nmプロセスが本当に立ち上がるのか、個人的には非常に厳しいというかほぼムリだと見ているので、またしてもプロセスに足を引っ張られて、ということになりかねないと思っているのですよ。
 とはいえ、実際問題として28nmで作るのはあり得ないし、20nmでは使えるプロセスが無いし、14nm以外の選択肢は既に残っていないのが辛いところなんですな。

 4◇Bristol RidgeでSocketFM3&DDR4移行、Summit Ridgeへの足がかりに。

 さて、同じ頃に世間というかIntelはSkylakeをデスクトップに持って来ている筈なので、ここでDDR4への世代交代が起こる筈。
 ところがSummit Ridgeは前述の通り14nmという爆弾を抱えた状態で、これでDDR4へ移行というのはさすがに博打が過ぎるというのはAMDも理解している模様。

 一方、DDR4移行というのはGPUに必須のメモリ帯域が稼げるという意味でAPUにとってはかなりプラスで、そういう意味でも世間でDDR4が出回り始めたら出来るだけ早くキャッチアップしたいところ。
 今までこの「メインストリームのDDR4移行」についてはAMDはコードネームの類が出てこなかったので「まさかいきなりZenコアで16or14nmのつもりか?」とか思っていたのだが、最近ついにBristol Ridgeなる名前が出てきて、漸く「流れが出来た」な、と。

 このBristol Ridgeなるもの、一言で言うとCarizzoのDDR4版で、デスクトップ向け、そしてこの頃には既に時代遅れと言われているかも知れない28nm製造。
 いかんせんプロセスがアレなのでSkylakeに正面から対抗出来るのかというと厳しいトコというのが本音だろうが、そもそも製品が無いという最悪の状況だけは回避出来るかと。

 ♯メモリ帯域が広がった分、GPUを全力でブン回して「APUとして」のパフォーマンスを稼ぐ方向だとは思うが。

 ◇

 以上、AMDのDDR4移行戦略は今見えているトコではこんな感じかと。

 ・・・ん~、何というか、確かに「盛り沢山」ではあるのだが。
 それでも刺激は少ないよな、と思ってしまう自分は間違っているんですかね。

 まぁ、PC性能がホントに倍々ゲームで伸びていた時代を知っている年寄りの戯れ言ということで。

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