AMDサーバ用プロセッサロードマップ公開で、見えてきたAMDの戦略と現実。

 Twitterで絶叫してしまったが、このネタは外せない。
 AMDのサーバ用ロードマップが出てきて、見えてきた現実は、当方の思っていた以上にシビアだったという。

 ということで、ちょっと書いてみる。

 1◆Steamrollerパフォーマンスコアが出てこない?!

 何より衝撃的だったのはコレ。8コアSteamrollerが何処にも無い。
 これ普通にIvyBridge-EPとの勝負を投げたとしか思えないんですよ、自分には。

 まぁ意図して投げたというよりGFのプロセス絡みで投げ「ざるを得なかった」のだと信じたいが、とはいえPiledriver、しかも32nmでIvyBridge-EPと対抗しようというのはもう自殺行為にしか見えない。
 確かにGF32nmでもRichlandでTrinityから同一TDPで10%近くクロックを上げられたので、Opteronも(もしかしたらFXも)同程度のエンハンスメントは出来るだろうが、IvyBridgeが相手じゃその程度では・・・。

 #TSMC28nmで作れるようにするファウンダリ移行作業が全然進んでないのか、既に失敗してリカバリの見込みすらが立たないのか、最初からGF32nmと心中する気なのか、というかそもそもSteamrollerパフォーマンスコアなんてものが存在しないのか。

 また、FXシリーズのSteamrollerが出てくる可能性もこれで消えたと思っていい。
 所詮FXはOpteronの余り物なので、Opteronが出てこないならFXも出てこない。
 まぁAM3+も息長いし、Piledriverを最後にこのままフェードアウトってことですかね・・・。

 2◆Kaveriの姿が見えてきた。

 元ページにあるBERLINのブロック図。これはKaveriそのものでしょう。
 何故って、BERLINとKaveriを作り分ける理由が無いから。

 #勿論最終的にはアプリ認証とかで差が出てくるのだろうけど。現在のRadeonとFireProの関係と一緒。
  ・・・デスクトップ版でもECCメモリサポートして下さいお願いします(笑。

 で、このブロック図を見ると気になるのはこの辺りか。

 ・Steamroller 4コア。

 →以前6コア版が出るの出ないのという噂があったが、これ見る限りでは4コアで確定か。
  にしても演算性能は足りるんかいな?

 ・PCI Express 3.0。

 →AMDでもついにサポート入るよ~。

 ・DDR3-1866 Unbuffered ECCメモリサポート。

  →わ~い、DDR3-1866 Unbuffered ECCという「現時点では多分世界中でS.Kazぐらいしか欲しがっていない」製品がこれで出てくるぞ、きっと。

 ん~、よく言えば手堅い、悪く言えば新味の無い構成ですな。

 3◆FM2+はECCメモリをサポートする?

 Kaveriの話で敢えて触れなかったのが、正直よく分からないソケットについて。

 FM2+はFM2と基本互換の筈で、FM2にはメモリ用データ線が64bit分しかない(物理線的にECCメモリが使えない)という話を以前聞いたことがあることを考えると、FM2+でもECCメモリを挿すことは出来ず、サーバ用には新しいソケットを作るしかないということになる。

 が、現在のAMDの状況を考えると正直新しいソケットというのはハードルが高いし、FM2の設計時にAPU Opteronなんて当然視野に入っていただろうから、最初から何か仕込みがあっても別に不思議ではない。

 ・・・もしかして、FM2+ではReservedとかNCピンを活用して72bitデータ線を実現している?
 16ピン分何とか捻出出来ればいいワケで、これが一番「ありそう」なセンではある。
 ついでにPCI Express 3.0正式対応と電源周りの強化もするんだろうな、きっと。

 ♯あでもECCメモリがサポートされるのなら日常使いマシンはAPU化かな(笑。

 4◆Socket AM3+とSocket C32が消滅する?

 そして、上記の以下の項目を再整理すると以下の結論が出る。

 ・1P OpteronはAPUに移行する
 ・Steamroller パフォーマンスコアは出てこない

 →Socket AM3+とSocket C32は用無しとなり消滅する

 Socket AM3+は兎も角、Socket C32を見捨てるのは早いなぁ・・・と。

 まぁ現在のマーケットシェアではAM3+/FM2/C32/G34と4種類もプラットフォームを維持している方が異常且つカネの無駄なのであって、さっさと処置すべきなのだが、いよいよその時が来たか、と。

 そうなると5GHz Piledriverはいよいよ本当に「最後の華」になってしまうのかこれは・・・。

 ◆◆◆

 まぁそんなワケで、いよいよAPU1本に勝負賭けてきた、というかそれ以外のウリが無くなってしまったAMD。
 頑張れとしか言いようがない・・・。

 最後に、普段はこういうことはしないのだが、AMD Opteron blogのサーバロードマップ解説のエントリをそのまま超(適当)訳したものを載せてみる。皆さんはどう読みますかね。
 ちなみにこの英語エントリを書いているのはAMDサーバ部門のVP(副部長)。訳してる当方は専門家ではない上超速で書き殴っているので、明らかな誤訳があったら指摘していただれば。

 元記事>http://community.amd.com/community/amd-blogs/business/amd-operon/blog/2013/06/17/amd-reveals-plans-and-products-to-shake-up-the-enterprise-market-in-2014

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AMDが2014年のエンタープライズ市場を刷新するためのプランと製品を公開

 AMDは本日最新版のサーバーロードマップを公開しました。そこで今回は私達AMDが何を目指しているか紹介してみたいと思います。
 AMDは現在、ビッグデータ・クラウド・Webホスティング・仮想化等の現在急拡大しているコンピューティング用途に適した最新の技術を投入し、エンタープライズサーバ市場でのシェアを取り戻すことに注力しています。
 そしてその目的のため、AMDは2014年にはx86とARMの両アーキテクチャの3種類のプロセッサを発売する予定です。以下のスライドをご覧下さい。

 Berlin (APU Opteron)

 世界初のサーバ用APUである「Kyoto」の発表が成功裏に終わった後、AMDのx86ビジネスを更に強化するために用意するのが「Berlin」、更なる高パフォーマンスと電力効率向上を目指した製品です。この製品はCPUとAPUが用意されます。
 このプロセッサは次世代Steamrollerコアを4つ内蔵し、現在のOpteron 6386SEと比べて演算速度/消費電力比でおよそ8倍程度の性能を発揮します。
 そしてこのプロセッサはAMDの革新的なHSAアーキテクチャを採用する最初のAPUとなり、CPUとGPUの双方から同一のメモリ空間にアクセス出来る仕組みはプログラミングを劇的に容易にするでしょう。
 更に並外れた消費電力効率により、このプロセッサはラックへの高密度なサーバ実装を可能とします。
 登場予定の2014年前期をお楽しみに。

 Seattle

 一方、「Seattle」は現在の「Kyoto」の2倍から4倍というパフォーマンスと劇的な消費電力削減とを実現します。
 「Seattle」は業界で唯一の、サーバ用プロセッサ供給実績のある会社から登場する、64bit ARMアーキテクチャを採用したサーバ用SoCです。
 このプロセッサは128GBのメモリをサポートし、より高い電力効率とCPU負荷低減のため暗号化および圧縮専用のオフロードエンジンを備え、更に10Gbイーサネットも統合されています。更にこのプロセッサは高密度実装システムのために先進のFreedamFablicをも内部に直接統合しました。
 「Seattle」は今年後半に生産を開始します。

 Warsaw

 最後に、日々複雑になっていくコンピューティング用途に対するAMDの回答が「Warsaw」、次世代の2ソケット・4ソケット製品です。このプロセッサは2ソケット・4ソケットサーバに類を見ないコスト競争力を提供します。
 このプロセッサは現行のOpteron 6300シリーズと比べてより電力効率に優れ、且つOpteron 6300シリーズから容易にアップグレードが可能です。そして2014年の第一四半期に製品は提供開始予定です。

 世界今変化の最中です。より多くのユーザーが10億以上のデバイスをクラウドに接続するようになり、コンピューティング・ネットワーキング・ストレージの需要が急激に増加していますが、これらのプロセッサはそれらの処理を捌くのに最適です。
 クラウドコンピューティングの時代には旧来と同じやり方は通用しません。だからこそ私達AMDには新しい技術、製品、そしてビジネスモデルが必要なのです。

 私達AMDはx86ビジネスを強化し成功するため、クラウドやその他急激の増加するコンピューティング需要に最適化されたより電力効率の高いサーバの開発や、オープンコンピュート仕様のようなオープンな技術、オープンソースツールへの取組みを計画しています。

 詳細については、製品が出荷開始され私達の事業がまた一歩前進するその日をお楽しみに。
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NUC的な何かと、ゴミ箱と、G4 Cubeと、PCの未来と。

 さて、WWDCが終わりました。
 iOS 7はどうでもいいとして、絶賛放置中だったMacProラインに新機種の話が。

 ・・・何このNUCの親玉。

 これが当方最初の感想。
 そして、しばらく時間が経って漸くこの妙な既視感が「G4 CUBEってあったよね」ということに気が付く。
 そっか・・・そっち行っちまったのか、Appleは。

 ◇

 しかし・・・これは所詮人寄せパンダ的ネタ製品で、実際には従来型筐体の新機種も出るんだろうね、きっと。
 だってこれ、今まで一番Apple税を納めてくれていた純プロ&プロシューマには「使い物にならない」んだもの。
 CPUとGPUはそこそこだろうけど、それ以外の部分、つまりIOが致命的にダメ過ぎる。

 4枚しかないDIMM?それでメモリどうしろと。
 QuadRankの32GBなんてDDR3-1333ですらトンでも価格(ちなみに1枚750$程度)だが、合計3,000$払っても128GBしか積めないの?

 ♯PCなら3000$払えばDual CPUに256GBメモリ付(16GB DIMM×8枚×2CPU)。

 20GbpsのThunderbolt2だけってのも足周りとして致命的に遅過ぎる。
 これPCI-Express 3.0だとたったの2.5レーン分。帯域占有しても実効では2GB/Sがせいぜい。
 ここにストレージと4Kビデオストリーム(6G-SDI=6Gbit/S=750MB/S)を両方流せと?正気か?

 ♯PCならPCIe 3.0 x8の4本にGPU+GPU+SAS RAID+6G-SDI IFで、GPU2枚挿しでもストレージ6GB/S+6G-SDIの2ch (合計1.5GB/S)の帯域確保。

 もし万が一新MacProがコレだけだとなったら、俗に「クリエイター」と呼ばれる人の大半はMacを捨てるしかなくなるでしょうな。
 そんな状況になったら損するのはAppleだけなので、だからこそそんな状況にはならない、と個人的には思っているのだが。

 まぁうっかり万が一になったら、それはそれでそういう風景を見てみたい気もするが、そしたらいよいよMacってただのオサレパソコンだわな。
 そしてただのオサレパソコンはそのうちスマホとタブレットに喰われていくことに。だって大多数はスマホかタブレットで十分なことしか実際にやってないんだもの。
 ・・・iPad売りたいのは分かるけど、単価の桁が違うんだから高い「パソコン」も売った方がいいと思うんだけどねぇ。

 ◇

 で、そんな風につらつらと思ったのが「あでもそれってNUCの思想そのものだよね」ということ。
 Intelは昔から兎に角「足回り」を軽視する会社であると同時に、「足回り」にコスト(カネだけでなく消費電力等も含めて)がかかることもよく知っている会社。
 NUCの思想は正にこの「足回り」を最低限に抑えることで、小さい筐体や相対的に高い演算パフォーマンスを実現している。

 とはいえ、その方向に振り切ってしまうのはPCの自殺行為だと思うのですよ、自分はね。
 というも、最終的にPCがタブレット等と差別化出来る部分はこの「足回り」=「拡張性」しかない、というのが当方の持論なので。
 そしてこの差違こそ、多くの「クリエイター」がPCに求める性能、PCが道具たる所以そのもの。

 確かにThunderboltは「従来のIFと比べれば」速いし、それで十分な用途もいっぱいある。オーディオとかせいぜいHD程度の動画(HD-SDI=1.5Gbps)なら不便しないでしょう。
 けれども他のIF(PCI-ExpressやSAS等)も進歩しているし、その進歩のおかげで初めて実用的になる場面もいっぱいあるということ。
 そういうものを積極的に取り込んでいかない限り、タブレット陣営にPCは対抗出来ないでしょう。

 逆に言うと、当方はNUCのようなコンパクト筐体はヲタクのオモチャにはなるにしてもメジャーにはならないと思ってますよ。
 そしてPCのシェア自体はどんどん下がり、一昔前の「趣味と本気仕事の機械」という位置づけに戻っていく。
 PCを持っているだけでヲタク扱いされた、あの時代の再来でしょう。

 逆にタブレット(若しくはそれっぽい端末)は持っていないとお役所手続きすら出来なくなり、ヘタしたらお役所で配ったり、市町村の公営Wi-Fi APなんてのが出来るかも。
 既にその一歩手前まで寄ったような事例も見かけるし。

 ◇

 ん~まぁ、いつも通り取り留めのない記事になってしまったが。
 取り敢えず強引にまとめてみる。

 PCの一番のウリは拡張性の筈なのに、それこそがクリエイターの道具たる所以だというのに、仮にもクリエイター向けの筈のMacProで拡張性をばっさり切るってどうなのさ

 ということで。

 #コラ写真は色々あったけど個人的には炊きたて御飯と網焼の焼肉がヒットかな。
  あの大きさにあれだけの発熱源詰め込んであれば実は出来るんじゃね(ぉぃ。

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ラインナップがカオスになってきた3.5インチHDD。

 ・・・NAS HDDって何なのさ。

 それは兎も角、こんなモノが出てくるなんてよっぽど売れたんだねぇ、WD RED。
 デスクトップHDDの単価下落に対抗するにはこれ以上の「付加価値」は無いですな、いやマジで。
 原価大差ないのにこんなに高く売れるんだもの。

 ということで、Barracuda LP 改め Barracuda Green 改め NAS HDD なる代物がデビューしたそうな。
 血統通りの5900rpmで、恐らくVideo 3.5 HDDのファーム入替モデル。

 #このblog書いている時点でSeagateのサイトにはそんなモノ見あたらないのだが。
  Seagateのサイトは昔から「主要モデル」しか載せてないので、今回もそのパターンかも。

 ってか元々Videoシリーズって24×7稼働をターゲットとして開発している筈なんだけど。
 そういう意味ではメカはノータッチで行ける筈。ファームはちょっといじったのかね?

 ◇

 とはいえこのチョイス、「Seagateも中々上手いことやったな」というのが当方の感想。
 というのも、AFR=平均故障率をHDDのシリーズ毎に並べてみると以下のようになるんですわ。

 Samsung SpinPoint Fの血統であるConstellation CSはは1%越え
   ↑ 
 Seagate Barracudaの由緒正しいConstellation ES.3は0.63%
   ↑  
 Seagate Barracuda Greenの血統であるVideo 3.5は0.55%
 Seagate の最高速ドライブの血統 Cheetah 15K.7は0.55%
   ↓
 Seagate Cheetah の血統を受け継ぐSavvio 15K.3 は0.44%

 という訳で、Video 3.5シリーズってのは全力全開エンタープライズなCheetah 15Kと肩を並べる低故障率を誇る製品なんです。
 コレをベースにするんなら、そりゃ確かにAFRは低いだろうし、実際長持ちもするんでないかね。パフォーマンスは兎も角として。

 ・・・あ、勿論。
 24×7で動かすといってもVideo 3.5とCheetah 15Kは「想定する稼働状況」が全く違うので、仮にCheetah 15Kと同じ負荷をかけたりしたらVideo 3.5なんてあっという間に吹っ飛んでしまうよ、念のため。
 とはいえ、NAS用HDDがCheetahのような強烈なアクセス負荷に晒される状況というのも正直想像しにくいので、実際これで十分でしょうな。

 #にしても選別品のCSで1%越えじゃ、Desktop製品のAFRなんてどうなってんだろうねぇ・・・。

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多プラッタはHGSTのお家芸、ですな。

 いやマジで、さ。

 というのも、つい先日HGSTから発表されたのは「3プラッタだけど9.5mm厚」な1.5TB HDD。
 プラッタ密度上げてくるかと思ったら全く逆の方向性、ケース内構造を見直して3プラッタのまま9.5mmに押し込んできましたよ。

 いやね、知ってる人は知っているけど、IBMから続くHGSTの歴史って、ホントに「多プラッタドライブ」の歴史なんですよ。
 最近だって、SeagateとWDが500GBプラッタを使って4枚重ねの2TB製品を作っている横で、400GBプラッタを5枚重ねて2TBにしていた「7K2000」、WDが750GBプラッタを4枚重ねて3TBを作っている横で600GBプラッタを5枚積み上げていた「7K3000」なんてのを大量販売していたし。
 勿論、それ以前、IBMの時代にも他社より多いプラッタ数で容量稼いだ製品はいっぱいありました。

 ♯中には「やらかした」ことで有名な製品もあったよね・・・。

 兎に角、プラッタ枚数が多いと手間かかるし、軸精度は求められるし、ケース剛性も高くないといけないし、モータトルクも要求されるし、要するに全てのベクトルが「コスト高」「不良増」という方向だというのに。
 親会社のWDが5mm厚1プラッタの「激薄」HDDを発表したので、ヘンな方向にスイッチが入っちゃったのかね。
 「あっちが1プラッタで薄くするならこっちは同一サイズに出来るだけ多くのプラッタ詰め込んでやるぞ」「おー」
 みたいな。

 しかしまぁ、本当に3.5インチHDDの立場がどんどん削られているというか、なんというか。
 今のところ3.5インチディスクの天下なエンタープライズアーカイブ用途のディスク大量搭載ストレージにすら、じわじわと2.5インチHDDが進出し始めているし。省電力性と省スペース性が評価されているんですな。

 更に、SSDのエンタープライズ進出も2.5インチHDDの増殖に拍車をかけているこの現実。サーバ筐体も小型化・高密度化していく中で、SSDと物理サイズが共通で、コンパクトで発熱も振動も少なく扱い易く、その気になればSSDに交換することも簡単な2.5インチHDDの需要が高まるのはまぁ当然ですな。

 ・・・にしても、9.5mmで3プラッタ1.5TB入るなら、本気出せば12.5mmに4プラッタ詰め込んだ2TBも作れる気がする。
 まぁ本気出す理由は無さそうだけど、残念ながら。

 それに、3プラッタが9.5mmに収まったなら、あともう少しプラッタ密度上げられれば、いよいよ2.5インチ9.5mmというノート内蔵可能なHDDでの2TBが見えてくる・・・ってのはさすがに夢見過ぎ、かな・・・。

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6Gbps対応SATA PortMultiplierが勢力を広げてる件、或いはSATAストレージ関連チップが今やMarvell無双な件について。

 いやね、まさか出まいと思っていたのだが、ホントに製品が出てきちゃいましたよ。
 HighPointからゲテモノ2世が。型番はRocket 750、「40ポート」を名乗るHBAです。

 という訳で、こんなモノを見つけてしまったので勢いでエントリを書いてしまったり。

 ぱっと見では40ポートというインパクトが強烈だが、実態はこれ、8ポートSASコントローラの88SE94858の各ポートに1:5のPMPである88SM9705を繋いでいるという代物。
 力業ってか何というか・・・ねぇ。

 ところがこれが本当に凄いのは「2世」ということ。
 それではゲテモノ初代はというと、のHighPoint DC7280という「32ポート」HBA。
 コレはPMPが1:4構成だったので8ポートを分けて合計32ポートとなっていたが、更にPMP自体が3Gbpsチップというオチがついていたという代物。
 パフォーマンスという意味ではとうてい期待出来ないが、その分ポート数の割には安いという値段を全面に押し出していましたな。
 そんな代物の後継モデルが出たってことは・・・売れたってことなんだろうなぁコレ。

 ◇

 いやはや、SiliconImageはもう既に市場撤退済、JMicronもすっかりやる気の無い、6GbpsSATAの世界。
 ASmediaという新規参入もあったが未だ殆ど誤差の範囲で、事実上Marvellの天下。

 そんなMarvell、6Gbps 4ポートをPCIe 2.0 2xで束ねるというあんまりやる気のない(実効では全ポート合計700MB/sぐらいしか出ない)88SE923xというチップを販売していて、しかも他に選択肢が無いのでそこそこ売れているという状況であり。誰がどう見ても本気の新製品なんか出しようがない状況ですよ、これ。

 が、Marvellには別の計算と野望があったんでしょうな。
 んで、その野望の為にリリースされたのが6Gbpsに対応したSATA Port Multiplier、88SM9715/9705/9713/9703、ポート数とバックプレーン管理機能の有無で4種類。このうち末尾が「5」のモデルは5ポートを持つフル機能PMPチップ、と。

 で、この「別の計算と野望」というのは、低価格且つ大容量なニアライン系SATAドライブを大量に束ねる「安価な多ポートのDAS用コントローラ」ジャンルの市場制圧。
 このところの「オンラインストレージ」や「小中規模事務所向けNAS」の大流行で、コスト圧力が高いこのジャンルで商機があると見込んでいるんでしょうな。
 そしてそんな市場向けに高価なSAS Expanderでなく安価なSATA PMPを投入するために作れられたのがこの88SM9715シリーズ、と。

 ♯このチップのお陰で、帯域幅の有効活用という意味で初代と比べ大幅にゲテモノ度が下がってるのよね>Rocket 750。
  使い方にハマれば(ZFSとか)意外と使いでがありそうな気がする。

 ◇

 ちなみにMarvell、実は世界初のNVMHCI対応チップの発売元でもあります。
 これ、以前にもネタにしたSATA-Expressで使用されるSSD側の統一規格ですよ。
 チップの発表は2012年1月で、この88NV9145チップをベースにしたSSDも既に試作され、MSもNVMHCIのドライバ作ってます。
 PCIe2.0 x1というのが今となってはやや残念にも見えなくもないが、所詮PCI-ExpressなんでいざとなりゃPCIe-Switchとか使えばその辺りはどうにでも、という話。

 ♯実際にMarvellもPLXのスイッチを使って8chをパラ(=RAID-0)で使うリファレンスカードを作っているし。

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