WDのHGST買収とSamsung 4TBに見る、HDD業界の未来。

 さて、まさかこのテに出てくるとは思いませんでしたよ。
 WDがHGSTを買収するとな。
 とはいえ、結果だけ見てしまうと極めて合理的な経営判断であり。

 何しろ、WDと言えば・・・

 コンシューマー向け大容量HDDの大量出荷で「低価格、中品質」と「利益の出し方」は極めたものの。
 「高価格、高品質」なエンタープライズ製品は最近始めたばかり、しかも未だ軌道に乗ってないどころか苦戦中。

 片や、HGSTというと・・・

 コンシューマー向け製品はぶっちゃけ得意じゃない上に、商売だってヘタクソもいいところ。
 但し「高価格、高品質」なエンタープライズ製品はお手の物で実績も相当あり、ぶっちゃけコレで喰い繋いで来ました、ハイ。

 両方が上手く組み合わされば・・・

 コンシューマー向け大容量HDDの大量出荷で「低価格、中品質」と「利益の出し方」を極めつつ。
 「高価格、高品質」なエンタープライズ製品もバッチリ売って更に利益上乗せ、儲けウハウハ。

 ・・・になるのかねぇ。
 少なくともWDの経営陣はこうなることを期待している筈。

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 さてこうなると、微妙に気になるのが他社への影響。
 順番に見ていきましょうか。

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 まず、Seagate。短期的にはプラスだが、長期的にはどうだか。

 理由はというと、まずWD+HGSTという形でHDD供給を受けていたメーカがWD&HGST+Seagate、という形に乗り換えてくるのが相当数見込めるため、短期的にはプラス。何だかんだで現時点ではSamsungよりは信頼されているし。

 一方で、長期的にはというと・・・ここ数年の品質&開発能力の低下からいつ復活出来るかにかかっていますな。個人的にはもう少し時間がかかると思うが。
 現状はというと、「カネはかかるがコレをやらないと生き残れない」という高密度プラッタ開発競争で既に最前線から脱落済の上、大騒ぎになったファームウェア問題も記憶に新しいところ。

 具体的な製品で見ていけば、低回転品のBarracuda LP(Green)で667GBプラッタを漸く採用するも、WDからは出遅れること半年以上。
 3TB HDDについてはBarracuda XTがアナウンスこそ早かったものの、600GBプラッタの安定に手こずり、大量生産の見込みが立ったのは本当に極最近という有様。
 というか・・・一昔前のSeagateの天下っぷりを見ていた身としては、なんだかなぁ・・・と。

 #HGSTですら7200rpm/667GBプラッタの大量生産がイケイケ状態なのに。

 ◇

 次、Samsung。こちらも短期的にプラスだが、長期的にもプラスの可能性が高いと思われる。

 理由は。短期的にはWD&HGSTに加えてSamsungを選んでくる会社も多くはないが少なくもないだろうという予想から。
 価格競争になると頑張ることが多いので、価格重視のベンダ系にはウケが悪くないのよね、Samsungって。
 昔に比べれば品質も接続性も安定してきたし。

 一方、長期的には。
 個人的にはデスクトップ分野では今後確実にシェアを上げて来ると思っている。理由は「ライバルのSeagateが自滅中」且つ「価格競争を諦めるつもりは無い模様」だからで、正直な話製品自体の競争力が強くなったとは思っていない。
 そして、Samsungの財力+日本のパーツメーカの技術力、という後ろ盾を最大限活用した結果、プラッタ密度競争でも現状悪くない立ち位置をキープしているのもポイント。
 特に先日の展示会に1TBプラッタの試作品を出してきたということは、製品化の目処も立っているという意味で、ヘタすると世界初の1TBプラッタ採用品出荷会社になる可能性も。

 #このプラッタは昭和電工製というウワサもあるが、未確認。
  同社のプラッタは密度競争ではWDと並んで世界の最先端を走っており、Samsung製HDDの多くで採用されているという事実がウワサに信憑性を与えている。
  ちなみに1TBプラッタはHGSTも既に試作品を完成させているという話もあるが、こちらもあくまで根拠無しのウワサだけ。

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 最後、東芝。・・・短期的には影響無し、長期的にはマイナスか。

 東芝はWDがメインにしていたデスクトップ分野には参戦していなかったんですな。ノート向け2.5インチと、富士通から引き継いだサーバ向けのみ。
 まぁノート向けではWD&HGSTからの乗り換え組が来る可能性はあるが、WDのノート向けは数量で見るとたいした数ではないので。
 そういう意味で、短期的に「おこぼれ」を授かるチャンスは無いと言っていいと思われる。

 そして長期的には・・・WDのカネとノウハウで旧HGSTのエンタープライズ部門は競争力を強化してくるだろうからその分不利になるのは確実。
 更に、もしSeagateが復活してくるとこれまた不利に。

 専業のWDやSeagate、国策Samsungと違って、他にもイロイロやっている東芝にはHDD事業を死ぬ気で維持する気合いも根性も無いだろうし。
 個人的にはSamsungと我慢比べ状態に突入した挙げ句、先に音を上げるんじゃないかと思っていたりする。
 その時の市況次第ではSamsungが買うかもね。

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 最後に、おまけ。
 実はWDとHGSTの3TB HDDを少し前に購入済みだったり。
 取り敢えず問題無さそうですが、詳細は次回の更新ででも。

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Windows on ARM SoCって・・・CES雑感その2。

 CESネタ第二弾。相変わらずtwitterで呟いたネタと被りながら。

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 MSがまた衝撃的な発表を。次のWindowsでARM SoCをサポートするって?!

 何というか、正直「どうするのよソレ」という点が山積みの気がするのだが。
 取り敢えず並べてみるか。

 1・ARM SoCに一体どれだけのメモリを積ませる気?
 2・ARM Coreで性能足りるの?
 3・非互換バイナリの扱いどうするの?
 4・Windowsの値段どうするの?

 結構ある気がするなぁ、問題が。
 順番に行きまっか。

 ◇

 まず、最初の疑問。ARM SoCに一体どれだけメモリ積ませる気なのかということ。

 現行のWindows 7 x86をベースにするなら、最低でも1GBはメモリを積んでいないと使い物にならない。
 快適さを語りたければ2GBは無いと厳しい。

 一方で現行のARMベースの機器、その中でも低価格志向のいわゆる中華Padなんかでは、メモリ128MBなんてのも珍しくない。高性能クラスのAndroidケータイでも512MBぐらいなので、少なくとも現在ではGB単位なんて夢のまた夢。

 それに一般論として、ARMベースの機器では全体の消費電力が少ない分、メモリが使用する消費電力の大きさが問題になることが少なくない。これも一般論だが、メモリは容量が大きい程電気を喰うので、大容量メモリの搭載はそれだけで全体の消費電力の上昇につながりかねない。

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 次、根本的にパフォーマンス足りるんかい、ということ。

 確かに最新のDual Core ARMなんて、ヘタすりゃSingle Core Atomより演算性能は高い。が、それは演算性能での話。
 システムのパフォーマンスは演算性能だけではとても語れない。バス帯域、メモリ帯域、VGA性能、その辺りが全部積み重なってシステムパフォーマンスを構成している。

 一方で、特にVista以降のWindowsはこういうCPU演算速度以外のリソースについては非常に多くを要求するようになって来ている。Intelは当初この辺りを軽く見ていた為にAMDがシェアを伸ばせたというのは誰が見ても事実だし。

 そして悪いことに、この辺りのリソースというのは一般的にコストも高いし電気も喰う。CPUが低消費電力で低価格であっても、周辺が電気とコストを喰いまくってしまえば意味が無い。
 ついでにこの辺りの「PCとしての部品一式パッケージ」については、現時点ではIntelやAMDの方が一日の長がある、という気がする。

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 三つめ、バイナリ非互換性の問題。その運用をどうするか、ということ。

 知っている人は少数派かも知れないが、複数のアーキテクチャで動いていたWindows CE系のソフトでは、CEのバージョンやアーキテクチャの違いで、一つのソフトでも4種類も5種類もバイナリがあったのが当たり前だったのであり。こんな状態を許容出来たのは、ぶっちゃけユーザがヲタクだからとしか言い様がない。

 現在でもWindowsではIA64というx64とは別のアーキテクチャが存在するが、IA64なんてServer向けで且つ基本的に技術者以外触らないので特に問題にはなってない。

 が、コンシューマに触らせるとなるとこの辺りをどうするかというのか大問題の筈。
 現在のWindowsではFAT Binaryの仕組みは持っていないと思ったので、このままではインストールパッケージ自体を複数に分けて大不評を買う羽目になる。駄目だこりゃ。

 とはいえMSもそこまで馬鹿じゃないだろうから、大慌てでFAT Binaryの仕組みを導入して、インストーラがバイナリを選んで導入するようにするのかね、やっぱり。

 ・・・さて、FATバイナリ インストーラの作成とARM用バイナリのクロスコンパイラが入るのはVS2011になるのか、それとも2012か。

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 最後、Windowsの値段どうするの、と。

 既にx86でも問題になっているが、Windowsがハードの値段に対して高過ぎるんですな、真面目な話。
 ARMのハードウェアならハードウェアの値段は高くとも現在の「ネットブック」程度に収まるだろうから、それに見合うとなると一番高くともWindows 7 Starterと同程度の値段付けしか出来ない筈。

 そしてMSがx86向のフル機能Windowsの値段を現在より下げるというのは非常に考えにくいので、そうなると機能的にも現在のStarterと同程度に絞られる筈。
 但しこれ、逆に言うとARMのハードウェアパフォーマンス的にもStarter相当で相応、ということになるのかも知れない。

 どちらにしろ、ARM版Windowsはx86フル版と同一Edition同一価格、とはいかないのでは。

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 以上で散々うだうだ言ったように、全体として当方はフル機能Windows on ARMには懐疑的。少なくとも現時点のARMなCPUやARM採用ハードウェアの数々を見ている限り、ARM版Windowsが発売されても非常に限定的な場所でしか採用されないようにしか見えないのですよ。

 但し、MSがこのARM版を現在Windows XP EmbbedやWindows Embedded Standard 7辺りが動いている、いわゆる組み込みやThin Clientというジャンルに向けるなら話は別。
 この辺りを相手にするならメモリもパフォーマンスも(コンシューマ相手のフル機能品よりも)少なくて済むし、ついでにこの辺りの製品では通常競合は「ARM+Linux」という構成。メモリやCPUクロックに差分があったとしても、基本同一のARMハードウェアでWindowsもLinuxも動かせるというなら、ハード供給側にもメリットは少なくないのでは。

 とまぁ、こんな感じで。

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相変わらずIntel全開なSandy Bridgeと、遅れまくったFusion第一世代なAMDと、CES雑感その1。

 ということで、年が変わって一発目のblogネタはCESから。
 twitterで呟いたネタと被りながら。

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 まずはIntelのSandy Bridgeから。
 相変わらずIntel臭さ全開、コアの性能をバスがスポイルする構造にはなっているが、コア性能という意味では今回もまた出来は悪くない、というかかなり良い感じ。
 このバス構成でこれだけの性能が出せるなら、よりリッチなバス構成になるLGA2011ならLGA1366を相当上回るパフォーマンスが叩き出せる気がしますな、うん。

 後はGPU周りのドライバがまともな出来になればコンシューマ向けには相当いい感じなのでは。そう、目下最大の問題はドライバ熟成にどれだけ時間がかかるかですな。
 ・・・ま、最近のIntelだと1年ぐらい待てば致命的なバグは解消するかな。

 とはいえIntelのグラフィックスというと基本Chips&Technologyの血統(後は旧S3出身者とか)なので、あの頃から比べるとまぁ進歩したなぁ、としか。

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 一方、どうすんだコレ状態なのがAMD。
 Denebは兎も角ThubanですらSandy Bridgeには全く歯が立たないというこの状況。頼みの綱はBulldozerだが、Sandyのベンチ見てしまうと正直Bullでも対抗出来るかどうか微妙、にしか見えない。

 #当方AMD贔屓なのでこの程度で済んでいるが、Intel狂信者から見れば完全に「お葬式」状態だわなコレ。

 そして散々遅れたFusionは、漸く、やっと、製品に。
 ZacateとOntarioが乗った製品がぼつぼつ出てきたが、う~ん・・・。

 予定から散々遅れた分がモロに不利になっているとしか思えないこの展開、何だかなぁ・・・としか。
 ポジション的にはAtom+IONの後継というトコになるのだろうが、その辺りの市場は既にnVIDIAが散々荒らした後なんじゃないのかね、と。まだ草生えているかね?

 #もう完全にやる気を無くしているnVIDIAはこの際どうでも良いとしても、IntelがこのポジションにもSandyぶつけてくるって噂もあるし。

 あと、愕然としたのがこのZacateのVGA出力構成。全くの新規チップで、従来チップセットとのピン互換とかも考える必要も無いというのに、このチップでもDVI+HDMIの「デジデジ二画面出力」に対応していないらしいという話が。

 #HDMIはライセンス絡みでカネがかかるから2つ積みたくない、というなら、せめてHDMI+DVIは出来るようにしておいてくれよ・・・・と。

 そいえばAsusがZacateでM-ATXというかなり挑戦的とも思えるM/Bをラインナップしているが、コレのスペック見ても「Dual DisplayはRGB+DVIかRGB+HDMI」って書いてあるし・・・。

 #Mini-ITXなら他社からも何枚か出ているが、この辺りの制限とかの細かいコトをカタログにきちっと書いてくれるメーカって少ないのでね・・・。

 ◇

 何というか、今年一年、ますますもってRadeonで辛うじて命をつなぐ事態が続きそうですなぁ、AMDは。
 Intelに対して優位に立つなんて寝言は言わないから、せめて安定した存在感が保てるぐらいの製品とシェアは欲しいです、いやマジで。

 #そうしないとECCメモリの為にXeonでPCを組まざるを得なくなって、勢いお値段がトンでもないことに・・・(超個人的問題。

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MicroServer with Remote Management Card on Windows7、問題なし。

 ・・・でした。実につまらん。

 ということで、リモート管理カードを突っ込んだ状態でWindows 7 (x64)をインストールし、無事ドライバ類も全て当たって正常稼動を確認したのでメモ。
 勿論Aeroなんて動かないのでClassicテーマにしてまっせ。

 んで、使用したドライバ類は以下の通り。

 「VGAコントローラ」→ ASPEED AST2150
 >http://www.aspeedtech.com/support.html
 ※Windows2008 R2用を流用

 「イーサネットコントローラ」→BCM5723 (Nextreme I Server)
 >http://www.broadcom.com/support/ethernet_nic/netxtreme_server.php

 「SMバス コントローラ」→ ATI SMBus
 「ビデオ コントローラ(VGA 互換)」→ Mobilty Radoen 4200
 >http://support.amd.com/us/gpudownload/embedded/Pages/embedded_windows_all.aspx

 ちなみにVGAは最大解像度が1280×1024でハードウェアアクセラレーション一切無という代物なので、当方のようにリモート管理に利点を見出す人以外にはゴミでしかないよ、念のため。

 にしてもホント、Javaベースの管理窓からBIOS設定が出来たり、速度は出ないとはいえ手元の端末に繋げたUSB DVD DriveがMicroServer側で繋がっているように見えたり、というのはやっぱり便利ではある。
 勿論当然、ブラウザから電源On/Offの制御、温度やファン回転数なんかのハードウェア状態監視も可能。いやはや、¥8Kでここまで出来るとは至り尽くせりですがな。

 #早速Media PlayerのDNLAサーバを有効にしていろんなトコから音楽が流せるようにしてみたりとか。

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冬、師走、アキバにて。

>店内の漫画を「自炊」するレンタルスペースが仮オープン、裁断済み書籍を提供、ネット上は懸念の声多数
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20101228/etc_jisui.html

 twitterでボロボロとつぶやいてみたが、際限なく続きそうなのでblogに移行。
 で・・・どーすんのよコレ。
 まさか年末にこんな超大型の爆弾が炸裂するとは思わなんだ。

 いやね、高価な業務用スキャナとかこれまた高い業務用裁断機があるレンタルスペースってなら分かりまっせ。でもな、これは・・・これは。
 今回はやたら長くなってしまうので、取り敢えずまとめを先に出してみる。

 ・作者にカネが入らないこと、致命的且つ最大の問題
 ・取り敢えずこれを「自炊」と言うな
 ・これでまた著作権法周りに変な話が出かねない
 ・法的にはシロっぽく見える、主犯は文化庁か

 以下、長いので暇な人は順番にどうぞ。

 ◇

 何より一番マズい、最大且つ致命的な大問題は、これいくらスキャンされようが作者に一銭も入らないこと。

 例えば30回スキャンされると、印税圧縮効果は30倍。
 具体的な数字を出すと、例えば単行本3万冊売って¥150万入る筈だった印税が、¥5万円になるということ。
 あり得ないだろ、これ。

 ♯業務用で一般的なライン型スキャナは高速な分紙への負担も大きいので、漫画の単行本の紙なんて30回もスキャンすればいい加減ヘタると思ったのでこの数字。最近の機械はもしかしたらもっと優秀かも。

 ♯念のため、ここの管理人は「印税」収入などとは全く縁のない生活をしているし、同人誌とかそのテの代物とも縁は無い。イロイロ支払ってはいるけど。

 逆にこの「作者への対価の支払い」さえどうにかなれば・・・もしかしたらアリ、かも知れない。例えば一回スキャンする度に作者に一冊売れたのと同じだけのおカネが入るならば、サービスとして考えられなくもないとは思う。

 但しこの場合でも、このスキャン画像が違法コピーとして流通したらどうなんだという話が出てくることは火を見るより明らかだし、そもそもその辺りがクリアされる状況だったらホンモノの「電子書籍」が提供される方が自然なワケで、紙に印刷してまたスキャンして・・・というのは資源の無駄でしかない。

 ♯暗号化のソースコードを電子的に持ち出せないからって、全部印刷して書類として送って受け取った側がスキャンしてソースコードを復元、なんていうのとは別の話の筈。

 ◇

 取り敢えず、この行為を「自炊」と呼ぶのは即刻停止して欲しい、いやマジで。

 そもそも「自炊」というのは「自らが所有する本を、正に私的複製の範疇にて」電子化というか画像化することであり、それは何ら恥じる必要もなく、作者相手にでも堂々と行える行為の筈だってのに。

 こんなとこで「自炊」なんて言われた日にゃ、どう考えたってコレ、正々堂々と胸を張って言えないでしょ。
 例えばこういう店でシリーズモノをまるごと画像化したとして、作者相手にそれを見せて「あの店で自炊したんですよコレ」なんて言えますか?

 ・・・最近だと素で言えちゃうのも居るらしいのだが、そういうのは最初から論外なので。
 普通は言えない筈。

 ◇

 まあ個人の感覚は兎も角として、おっかないのは、これでまた日本の著作権法やそれの運用絡みの話が更に歪んでいく、世界から離れてガラパゴス化していくこと。

 現在でさえ、世界中で日本だけというデジタル放送の妙ちくりんなコピー制限がかかっていたり、「改正」著作権法ではマジコン規制にかこつけて頭がおかしいとか思えない法律※を作っているのに、こんなのがまかり通ったら更にこの斜め上の法案が出てきてもおかしくない。

 ※この辺りは「マスコミやGIGAZINEが伝えないマジコン規制の本当の恐ろしさ – P2Pとかその辺りのお話@はてな」辺りを参照に。但しコメント欄は厨が暴れているので無視推奨。

 挙句の果てには「著作権物のスキャン全面禁止」なんてワケ分からん法案も出かねないのでね、この国だと。

 ♯念のため、マジコンを野放しにしろとは言っていないのでそこは誤解しないように。
  例えばマジコンを禁止したければ、他にいくらでも手はあるんですよ。
  この辺りはまあ各自で調べて下さいな。厨が湧くと面倒なのでこの話はここまで。

 ◇

 最後に一つ、どうしても気になるのが「これ本当に法的にはシロなのか?」ということ。

 気になって著作権法やらを読んでみたのだが、確かにこれ「法的にシロかも」というのが個人的な印象。
 以下、個人的な印象が続くので、いちいちお断りしないので念のため。

 キーになるのは文化庁の見解で、一言でまとめると「本を店舗から持ち出さなければレンタルとは言わない」ということ。コレは昔、出版物に貸与権を認められた時に「んじゃ漫画喫茶はどうなるの」という流れで出てきた見解で、これを根拠に現在の漫画喫茶は本を買う時以上の著作権料は払う義務は負っていない。

 で、この見解を適用すると今回の店は「レンタルではない」んですな。即ち、著作権料を払う義務もスキームも無い。

 そして私的複製範囲の話だが、確かに私的複製は「複製元が自分のものである」という制限は現在の著作権法第30条には無い。
 それどころか、この条文だけ見ると、要するに「使用が個人の範囲なら、ここに書いてある例外項目に該当しなければ」「どこで何をコピーしても」OK、とも読める。

 そして自動複製「機器」(←法律では「機材」ではない)についても、著作権法附則第五条の二にて「当分の間」適用外とされている。

 ・・・ん~。

 もしかして、現在の法律では手の出しようがない?違法ではなく脱法行為?
 言うなれば「合法ドラッグ」みたいな感じか?
 倫理的な問題としては間違いなく「あり得ない」のだが。

 ♯twitterとかblog見てると「真っ黒」とか言ってるのが結構居るが、んじゃそれは「著作権法第何条何項に明示的に引っかかるからアウト」ってトコまで言ってくれないと素人には分かりませんがな。
  取り敢えず31条と今回のコレが関係あるとは思えないし、カラオケ法理が云々というのは判例であって法律でないでせう。

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