>店内の漫画を「自炊」するレンタルスペースが仮オープン、裁断済み書籍を提供、ネット上は懸念の声多数
>http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20101228/etc_jisui.html
twitterでボロボロとつぶやいてみたが、際限なく続きそうなのでblogに移行。
で・・・どーすんのよコレ。
まさか年末にこんな超大型の爆弾が炸裂するとは思わなんだ。
いやね、高価な業務用スキャナとかこれまた高い業務用裁断機があるレンタルスペースってなら分かりまっせ。でもな、これは・・・これは。
今回はやたら長くなってしまうので、取り敢えずまとめを先に出してみる。
・作者にカネが入らないこと、致命的且つ最大の問題
・取り敢えずこれを「自炊」と言うな
・これでまた著作権法周りに変な話が出かねない
・法的にはシロっぽく見える、主犯は文化庁か
以下、長いので暇な人は順番にどうぞ。
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何より一番マズい、最大且つ致命的な大問題は、これいくらスキャンされようが作者に一銭も入らないこと。
例えば30回スキャンされると、印税圧縮効果は30倍。
具体的な数字を出すと、例えば単行本3万冊売って¥150万入る筈だった印税が、¥5万円になるということ。
あり得ないだろ、これ。
♯業務用で一般的なライン型スキャナは高速な分紙への負担も大きいので、漫画の単行本の紙なんて30回もスキャンすればいい加減ヘタると思ったのでこの数字。最近の機械はもしかしたらもっと優秀かも。
♯念のため、ここの管理人は「印税」収入などとは全く縁のない生活をしているし、同人誌とかそのテの代物とも縁は無い。イロイロ支払ってはいるけど。
逆にこの「作者への対価の支払い」さえどうにかなれば・・・もしかしたらアリ、かも知れない。例えば一回スキャンする度に作者に一冊売れたのと同じだけのおカネが入るならば、サービスとして考えられなくもないとは思う。
但しこの場合でも、このスキャン画像が違法コピーとして流通したらどうなんだという話が出てくることは火を見るより明らかだし、そもそもその辺りがクリアされる状況だったらホンモノの「電子書籍」が提供される方が自然なワケで、紙に印刷してまたスキャンして・・・というのは資源の無駄でしかない。
♯暗号化のソースコードを電子的に持ち出せないからって、全部印刷して書類として送って受け取った側がスキャンしてソースコードを復元、なんていうのとは別の話の筈。
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取り敢えず、この行為を「自炊」と呼ぶのは即刻停止して欲しい、いやマジで。
そもそも「自炊」というのは「自らが所有する本を、正に私的複製の範疇にて」電子化というか画像化することであり、それは何ら恥じる必要もなく、作者相手にでも堂々と行える行為の筈だってのに。
こんなとこで「自炊」なんて言われた日にゃ、どう考えたってコレ、正々堂々と胸を張って言えないでしょ。
例えばこういう店でシリーズモノをまるごと画像化したとして、作者相手にそれを見せて「あの店で自炊したんですよコレ」なんて言えますか?
・・・最近だと素で言えちゃうのも居るらしいのだが、そういうのは最初から論外なので。
普通は言えない筈。
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まあ個人の感覚は兎も角として、おっかないのは、これでまた日本の著作権法やそれの運用絡みの話が更に歪んでいく、世界から離れてガラパゴス化していくこと。
現在でさえ、世界中で日本だけというデジタル放送の妙ちくりんなコピー制限がかかっていたり、「改正」著作権法ではマジコン規制にかこつけて頭がおかしいとか思えない法律※を作っているのに、こんなのがまかり通ったら更にこの斜め上の法案が出てきてもおかしくない。
※この辺りは「マスコミやGIGAZINEが伝えないマジコン規制の本当の恐ろしさ – P2Pとかその辺りのお話@はてな」辺りを参照に。但しコメント欄は厨が暴れているので無視推奨。
挙句の果てには「著作権物のスキャン全面禁止」なんてワケ分からん法案も出かねないのでね、この国だと。
♯念のため、マジコンを野放しにしろとは言っていないのでそこは誤解しないように。
例えばマジコンを禁止したければ、他にいくらでも手はあるんですよ。
この辺りはまあ各自で調べて下さいな。厨が湧くと面倒なのでこの話はここまで。
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最後に一つ、どうしても気になるのが「これ本当に法的にはシロなのか?」ということ。
気になって著作権法やらを読んでみたのだが、確かにこれ「法的にシロかも」というのが個人的な印象。
以下、個人的な印象が続くので、いちいちお断りしないので念のため。
キーになるのは文化庁の見解で、一言でまとめると「本を店舗から持ち出さなければレンタルとは言わない」ということ。コレは昔、出版物に貸与権を認められた時に「んじゃ漫画喫茶はどうなるの」という流れで出てきた見解で、これを根拠に現在の漫画喫茶は本を買う時以上の著作権料は払う義務は負っていない。
で、この見解を適用すると今回の店は「レンタルではない」んですな。即ち、著作権料を払う義務もスキームも無い。
そして私的複製範囲の話だが、確かに私的複製は「複製元が自分のものである」という制限は現在の著作権法第30条には無い。
それどころか、この条文だけ見ると、要するに「使用が個人の範囲なら、ここに書いてある例外項目に該当しなければ」「どこで何をコピーしても」OK、とも読める。
そして自動複製「機器」(←法律では「機材」ではない)についても、著作権法附則第五条の二にて「当分の間」適用外とされている。
・・・ん~。
もしかして、現在の法律では手の出しようがない?違法ではなく脱法行為?
言うなれば「合法ドラッグ」みたいな感じか?
倫理的な問題としては間違いなく「あり得ない」のだが。
♯twitterとかblog見てると「真っ黒」とか言ってるのが結構居るが、んじゃそれは「著作権法第何条何項に明示的に引っかかるからアウト」ってトコまで言ってくれないと素人には分かりませんがな。
取り敢えず31条と今回のコレが関係あるとは思えないし、カラオケ法理が云々というのは判例であって法律でないでせう。