自作PC「以外」且つハードウェア「だけ」の観点から2014年を予想してみる(x86編)。

 前回に引き続いて、自作とはやや遠いがハードウェア系で個人的に気になるネタをいくつか。
 主としてIntelの動きが目立つのだが、ARM陣営だって黙っちゃいないですよ。
 これまた長くなってしまったので、x86編とARM編に分けます。

 A◇Intelから14nmプロセスAtom、Airmont登場。

 IntelのAirmontは現在のSilvermontのシュリンク版で、タブレット向けはCherryTrailとなり、Windowsタブレットが更に省電力高性能に。
 また組み込み向けでも更に低消費電力を実現する、Intelにとって期待の星。

 ♯そして極一部(当方含む)のオモチャ好きにも期待の星。つかSupermicroのRangeley搭載マザーが欲しい・・・。

 とはいえx86組込市場でそこまで高性能なCPUが要求される場面というのは実は多くはなく、現行Avoton/Rangeley(Atom C2000)~次世代(Atom C3000?)の使命は64bit ARMが来る前にマイクロサーバ&高性能組込市場(高性能NAS等)を席巻すること。AMDのARM Serverへの先制攻撃でもあったり。

 B◇Intel怒涛のスマホ市場攻略。Merrifield、Moorefieldを立て続けに投入予定、でも成功見込は・・・。

 あのIntelが未だに攻略出来ていない「最後の聖域」、スマホ市場に向けて2014年は怒涛の製品投入が予定されていますよ。

 まぁ何しろ既にARMでガチガチに固まっている市場、何とか潜り込もうとここ数年色々手を打っているが、どれも上手くいっていないんですわ。
 理由は簡単で、業界の常識であるARMを捨ててまでIntelを取るメリットが何もないから。ぶっちゃけ製品も全く競争力無かったし。
 それに、ARM近辺のプレイヤーは一度x86に乗ってしまうとIntelに全て吸い尽くされるというのを横目で見ていたPC市場で既に学習しているので、心理的抵抗も物凄い。

 既にx86なTablet等を出荷しているメーカをよく見れば、全て昔からPC市場でお付き合いのある会社だったり。
 結局PCのチャンネルを活かして怒涛の「補助金」を流し込むしか市場攻略の方法が無かったというのが丸分かりなのだが、そこまでしててでも何としてもスマホにx86を入れない限り、x86の出荷は先細りする未来しか見えていないのでIntelも必死なんですわ。

 ♯x86サーバ市場は利率こそ高いが絶対数量を考えるとね。

 そんなIntelだが、2014年には一つのターニングポイントが。
 というのは、今年漸く製品に欠けていた要素が揃い、製品ラインナップで「スタートライン」に立つことが出来る見込みなので。

 その要素というのは、具体的には「LTEモデム」。要するにケータイとして肝心の電波周り。
 実は現在世界で一番LTEモデムの実績を持っている会社=Qualcomm、そしてこの会社はスマホでお馴染みARMな統合チップSnapDragon販売元。なので、普通に考えたら「んじゃ全部入りのSnapDragonでいいや」となりますわな。

 ♯ちなみに最新のiPhoneはQualcommのLTEモデムが入ってます。Appleは意地でも自社製CPUを使いたいので。

 これに対抗するには自社でLTEモデムを持つ必要があるワケなのだが、LTEモデムの開発ってのはカネも時間もかかります。今まで継続的に時間とカネをかけてきたことがQualcommの強さの理由なので。
 そこでIntelはどうしたか。大方の予想通り、カネにモノを言わせてLTEモデム開発部門を当時業界大手(昔のiPhoneはここのモデムを使っていた)Infineonから買収、湯水のように開発費を流し込んで漸く自社製LTEモデムを完成たワケですわ。コレが2014年いよいよ量産に入ります。

 まぁ要するに、漸く「Intel製品だけでまともなスマホ・タブレットが作れる」ようになるのが今年なワケです。
 でも、それでx86なスマホやタブレットが増えるかと言われると、個人的には「それはないな」と。

 ♯念のため、3Gで良ければモデムは既にIntelは持っていましたよ。
  でもIntelがターゲットとするハイエンドスマホ市場に今更「3Gだけです」なんて製品は出せないよね、という話。

 C◇Intel製Apple印ARM CPU登場と、外部ファウンダリ製Intel印x86統合チップSoFIAの登場。

 そして今年Intelについてはもう一つ、従来から完全に方向転換した新戦略が発動する。
 Intelの競争力の源となっているFabでの製造受託規模を拡大すること、そしてIntel自身が外部Fabを使った製品を作ること。

 この辺りは要するに、最近の半導体プロセスの開発費がトンでもない金額になってきたということですな。
 金額が跳ね上がり過ぎて、金満Intelですら自社だけでは限界が見えてきたということ。
 なので、他社製品の受託生産も受け入れて、少しでも多くの製品を作り、投資を回収する必要に迫られているというワケです。
 勿論、この先万が一自社製x86ハイエンドCPUの生産が減少することがあっても会社として利益を出し続ける為の保険という意味もあります。

 そしてもう一つ、IntelのFab(半導体工場)には泣き所があるんですわ。
 それは何しろコストが高いということ。高性能高価格を地で行ってるワケです。
 世間には「28nm以降はコストが高くなり過ぎて元が取れるかどうか疑問」なんて声もある中、この馬鹿高い生産プロセスに見合うだけの価格で製品を買ってくれる客を捕まえる必要があって、実はそういう顧客は世界中見渡してもあまり多くない。

 ♯GFやTSMCが20nmを安定させるのに四苦八苦している中、Intelが22nmのBayTrailを大量出荷出来ているのも一重にカネの力でっせ。
  プロセスというのはある程度数を作らないと安定しないので、製品にならないゴミを大量生産してでも早期にプロセスを安定させるのがIntelのやり方。
  おカネが大事なGFやTSMCはそんなにゴミを生産出来ません、はい。

 そんな自社工場で製品を作ってしまったら、性能は良いがどう頑張っても値段を下げようがない。
 ところが世間では今やハイエンド市場は極少数、圧倒的に薄利低価格のボリュームゾーンを取らないと市場で生き残っていけない。その市場では性能は二の次、まずは価格が重視される。

 そこでIntelはどうするか。
 自社設計のx86コアに、そこらのメーカが売っている低価格なIP(部品みたいなもの)を組み合わせて低価格なファウンダリで生産するという、ファブレス企業と同じことを始めるってんですよ。

 ♯なりふり構わぬってのは正にこのことだが、こういう決断が出来てしまうことがIntelの強さでもあるんだろうなぁ、と。

 勿論コレにはかなり博打要素があって、IP組み合わせやファウンダリ生産には今までIntelは持っていなかった経験やカンが必要だし、組み合わせに失敗すると本当にゴミみたいなものしか出来なかったりするし、結果的にIntelブランドに傷がつく可能性もある。
 また、今までのIntelの「高利益前提の高額投資で製品価格を維持する」という戦略も通用しない。タイムリーに低価格な製品が投入出来るか、それが全てと言っても過言ではない。
 それでもこの市場を取りに行くというのがIntelの決断なんですな。

 ♯つかIntelは昔から買収や外部購入では失敗が多いのよね。前述したInfenionのモデム部門だって3G時代はQualcommと張り合うレベルだったのにLTEでは完璧に出遅れたし。

 そしてその最初の製品が、早ければ2014年後半に登場予定。それがSoFIAというワケです。
 とはいえ個人的にはコレ・・・ぶっちゃけ売れないと思うんだよなぁ。

 ♯だって巷にごろごろしているARMの統合チップで困らないやん。
  敢えてx86取る理由が無いし。

 ◇

 とまぁ、こんなところで。
 ARM編に続きます。

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 自作PC「だけ」且つハードウェア「だけ」の観点から2014年を予想してみる。

 新年一発目のblogネタは、去年に引き続いて当方の願望や偏見のたっぷり混ざった「業界予想」をしてみましょうか。
 短くまとめると、

 「エンタープライズ・モバイル&小型PC向けには動きあり、一方でデスクトップ向けは退屈な一年」

 になりそうですな。
 ということで、始まり始まり。

 1◇CPUもついに命名規則がグチャグチャに。

 従来そこそこ分かり易く揃っていたIntelの命名規則が、今年ついに破綻する見込み。
 というのは、Haswell Refresh、Haswell-E、Broadwellと3種類のコアが同一の「Corei 5000シリーズ」を名乗る為。
 Haswell-EはDDR4を実装するため従来Haswellとは別物になるし(つかコードネーム何で変えなかったんだろねコレ)、Broadwellはプロセスが違うし。

 AMDはというとAPUは辛うじて踏み留まっているが、GPUの方はもうグチャグチャですな。
 そしてnVIDIAは・・・皆様御存知の通りで。

 ということで、グチャグチャ揃い踏みです、はい。

 2◇Haswell Refresh、Corei 5000シリーズ登場。

 Intelがデスクトップ市場を軽視しているのが分かる展開です。
 ・・・実際ここは主戦場ではないので。AMDは自滅済みだし。

 まぁBroadwellが性能向上ではなく低消費電力に振ったアーキテクチャとFabなので、実際問題としてデスクトップにBroadwellが出ても出なくとも大差ないと言えばそうなのだが。
 一方でAVX命令の拡張等は含まれているので、これがAMDに追い上げられている展開だったら間違いなくカネに物言わせて複数Fabを一気に立ち上げ、全方面展開していた筈。

 ♯そして拡張命令を駆使したベンチマークを作らせて「こんなに性能向上しました」とか言い出してた筈。

 3◇Low Power向けとXeon E3-1200 v4向けにBroadwell登場、一部はデスクトップへ。

 ARMとAPUに対抗の必要があるセグメントにはBroadwellが登場。まずは省電力向けFabで製造されます。
 一方、現行のXeon v3の後継にもBroadwellを持ってくるようだが、こちらはどうやらパフォーマンス向けの別Fabで作るのではないかと予想。理由はモバイル向けとデスクトップ向けでターゲットTDPが違い過ぎることで、兼用するのは苦しいのではないかと。
 そしてXeon v4になり損ねたチップはそのままBroadwell-Kとしてデスクトップに投入され、そのうち14nmなFabが安定してきたところで2015年、デスクトップ向もBroadwellに移行、というパターンになりそう。

 4◇Haswell-E(Core i7 5900&Xeon E5-1600 v3)登場、Haswell-EN/EP(Xeon E5-2400/2600 v3)発表。

 Haswell-E系列はDDR4に移行すると言われているので、LGA2011がついにDDR4へ移行。
 一方でHaswell-EN/EPは2014年中に発表はされるだろうが、恐らくブツは出てこないだろうと。急ぐ理由も無いので。

 5◇KaveriそしてBerlinが発売されるも、APUのポジションは現在と変わらず。

 AMDのAPUはというとぶっちゃけ今と同じポジションのままかと。
 CPUをヘビーに使うヲタ以外にはバランスの良い製品だと思うのだが、最近は少し価格盛り過ぎな気もするのですよ。
 そしてBerlinは・・・これそもそも個人で買えるのか?正直結構興味あるのだけど。

 ♯FireGL相当品として扱われると構成的にも値段的にも個人では手が届かなくなるので・・・。

 6◇DDR3メモリは高速品の流量が増加するも容量単価は大して下がらず、DIMM容量も増えることもなく。

 今年1年メモリ容量単価はあまり下がらず、個人的に超待望の16GB DIMMが登場することもない模様。
 唯一明るい話題は、ネイティブDDR3-1866の流量が増えそうってことぐらいですか。

 ちなみにDIMM容量が増えないのは、そもそもそんなに大容量のDRAMチップ自体が存在しないからです、はい。

 ♯16GB DIMMを作るには8GBit DRAMを16枚貼りつければ良いのだが、その8GBit品は未だにボリュームになっていない状況で、辛うじてサーバ用特殊用途(VLP)で偶に見かける程度という。
  え、その上(16GBit DRAM)?未だに試作段階ですが?

 7◇DDR4-2133メモリモジュール登場、でもかなり厳しい船出に。

 Haswell-Eに合わせる形でDDR4の現物が販売開始されるかと。最終的にはDDR4-3200まで行くつもりらしいが、まずはこの辺りでしょうな。

 ちなみに流通量は極少、値段も相当財布に優しくないと思われる。
 本格的に量産がかかるのはHaswell-EN/EPが発売されてからでしょう。

 ♯DDR4世代でサーバではメモリ搭載量が増えるという話があるが、これは現行のDRAMチップをLR-DIMM等の技術で多数実装し数の力で容量を稼ぐという話で、大容量DRAMチップが存在するという話ではないのです・・・。

 8◇nVIDIAからMaxwellが発表されるも量産は年半ば以降に、そしてAMDは値下げで対抗するいつものパターンに突入。

 TSMCの20nmはどれだけ頑張っても先行生産が2月辺り、量産は5月ぐらいになる筈なので、諸々を考えるとMaaxwellの本格流通は今年後半ではないかと。
 とはいえ現物が早く欲しいnVIDIAは先行生産品でカードを作ってくる可能性が高く、早ければ3月に「現物サンプルだけ」は出るかも。

 ♯今更Maxwellが28nmで出てくる可能性は無いと思ってます。

 9◇1.33TBプラッタ3枚の4TB HDDと、4枚の5TB HDD登場。そして容量単価最安値がいよいよ4TBへ移行。

 今年は3.5′ HDDの最大容量が更新されると共に、プラッタ3枚な4TBが流通開始するでしょう。
 プラッタ枚数は製造原価の最大の要素であると同時に、販売価格も決まってしまうのがここ最近の傾向なので、最終的には現在の3TBと同じ「限定特価¥9,980」まで4TB HDDの値段は下がるものと思われる。
 とはいえ2014年中にはそこまでは下がらず、容量単価で3TBと逆転する辺りまででないかと。

 一方、2.5′ HDDは・・・9.5mm 2TBがアキバで販売されるようになるぐらいかな。

 10◇SSDはM2が一通り出揃い、SATA-Expressもアーリーアダプタ向製品が登場、一方で容量あたり単価は大して下がらず。

 SATA-ExpressについてはHaswell-E/X99チップセットでサポートされる・されないという話が飛び交っているが、個人的には突っ込んでくる方に一票。
 というのは、実のところSATA-Expressに必要なハードウェア的要素要件は既に揃っていて、後はBIOS(uEFI)さえSATA-Expressに対応出来れば正直どうにでもなるので。

 ♯極論言ってしまえば990FXやX79でもSATA-Expressに対応出来ます、BIOSさえ作れれば。

 ◇

 自作に近いところではこんなところでしょうか。
 色々書いてしまいましたが、要するに自作メインストリーム領域ではあんまり動きが無さそうなんですよ。

 最後に、自作とはやや遠いがハードウェア系で個人的に気になるネタを・・・と思ったのだが、書き始めたら長くなってきてしまったので別枠にします。
 そちらは結構大きい動き多いんですよ、今年。

 とまぁ、こんな感じで。
 相変わらずのグダグタっぷりですが、今年もよろしくお願いいたします。

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今年の自作PCパーツ市場を振り返る。

 さて、今年最後のエントリは。
 今年年始の1月2日に書いた「予想」の答え合わせをしつつ、今年一年を振り返ってみましょうか。

 まずは答え合わせから。

 ◇◇◇

 当たり:1◇自作PCというジャンルの地盤沈下は加速する。

  →自作PC単独で沈んでるというより、PC全体の地盤沈下に引きずられているというのが正解かと。それでも秋葉原のパーツショップはよく踏み留まりました。

 当たり:2◇小型フォームファクタの躍進が止まらない。

  →NUCは大ヒットこそしなかったが確実に存在感を示し、一方でMini-ITXはマザーもケースも種類が増えてより扱いやすいプラットフォームに進化しました。

 ハズレ:3◇システムドライブはSSDが当たり前に。

  →思ったよりSSDが普及しなかったのは、供給逼迫によるフラッシュ価格の高止まりが原因かと。

 当たり:4◇ThunderboltはFirewireと同じ道を突き進む。

  →いやぁ、流行ってません。

 当たり:5◇Full HD超のディスプレイとFull HD程度のタッチ対応ディスプレイが値崩れ開始、でも注目されるのは前者だけ。

  →始まりましたよ、値崩れが。でも2013年は本当に「始まった」というトコまでで、続きは2014年に期待ですか。

 当たり:6◇LGA1150で今年もIntelはマザボ総入替。
 当たり:7◇Richlandこと6000シリーズAPUの登場、一方Steamrollerはスリップで年越し。
 当たり:8◇Sea Island/Radeon8000 vs Kepler refresh/GTX700 は「一回休み」的ポジションで。
 当たり:9◇DDR3-1866ネイティブメモリ、低価格4TB HDD、メジャーライン1TB SSDの登場。

  →まぁこの辺りは既定路線なので。1TB SSDの登場は個人的予想よりだいぶ早くて、逆に4TB HDDはだいぶ遅かったですけどね。

 ハズレ:10◇アーリーアダプタ向SFF-8639接続SSDの登場。

  →間に合わなかったか。

 ◇◇◇

 以上、8当たり2ハズレでした。まぁまぁのヒット率かと。

 ということで、ここからは自由記述コーナー。今年一年で「自作PC的に」印象的だったネタをいくつか。

 ◇Intel Silvermontの出来の良さ。

 いやコレは強烈ですよ。x86でこの電力効率の良さは正にIntelの底力だとしか。
 ついにIntelはARMに対抗する武器を手に入れたワケです。

 ちなみにこのチップ、中を見ると別の意味で面白いんです。
 というのはこのチップの設計思想は、従来型Intelのそれよりも、むしろCyrixやWinChipといった昔の互換CPUのソレに近いんですよ。
 何というか、時代は巡るといいますか。

 ◇AMDの(事実上の)パフォーマンスCPU市場撤退&APU特化宣言。

 少ない開発リソースをARMとx86に振り分けた結果、x86でパフォーマンスCPUコアを担当するリソースが無くなってしまったAMD。
 時折反論っぽい台詞も聞こえてきますが、事実上AM3+とC32とG34は終焉ということでしょう。
 まぁAMDファンとしては一抹の寂しさを覚えつつも、APUで頑張ると言っているのでそれを見守るしか、ね。

 ♯GFの14n FinFETプロセスでPiledriver実装したら計算上は8コア4GHzを65W以下で十分回せる筈なんだけどな・・・(寝言は寝て言え

 ◇値段の下がらないストレージ。

 今年はストレージの値段が下がらなかったなぁ、と。
 SSDの普及速度も減速こそしなかったが加速もせず、大容量HDDの値段も下がらず。

 ・・・以上、取り敢えず3つ。
 この他、「自作」に限定しない「PC的」になら、以下のような感じでしょうか。

 ・ギリギリになってXP買替特需が発生したPC端末市場、だが特需は続かない・・・地デジの悪夢再現へ

 ・「SP1の法則」が見事に発動したWindows 8.1、今回も定説通り無印8はβ版相当でした

 ・BayTrail-T登場でWindowsタブレットが漸く「ネタでない商品」に

 ・大迷走Microsoftの明日はどっちだ

 ◇◇◇

 以上、こんな記事で今年のblog更新は終了です。
 それでは皆様、よいお年を。

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SSD界隈も賑やかになってきたので。

 前回のHDDネタに続いて、SSD界隈でも何だかワサワサ動きが出てきたので、ちょっとチェックしてみる。

 1◇SandForce SF3700登場。

 何故か誰も触れないが、これは間違いなくSATA-Expressをも睨んだコントローラ。
 PCI-Express 3.0対応ではないのはコストと想定される用途からの見合いだろうが、それでもPCIe 2Xで900MB/S近く出せるというのは強烈ですよ。
 いよいよSSDの本命、PCIe直結「標準」製品が見えてきましたな。

 そして、基板型の方でも、高速SSDが一気に身近になる可能性が。
 というのは、PCI-Expressデバイスならば、コストのかかるRAIDコントローラを使用しなくとも、PCIeスイッチを使ってパラレルに繋ぐだけで簡単に速度は稼げるので。

 例えば、このチップを4枚用意し、PCIe SWでx16をx4の4系統にバラして接続、BIOSなりOSなりでストライプすると合計7.2GB/S。
 こんなトンでもない代物も、技術的には今すぐにでも作れるし、構成部品の値段もそこまで突き抜けたモノにはならない。

 ・・・こんな爆速ストレージが安価に入手できるようになったら、革命と言っても大げさでないぐらい色々変わってくると思うな、うん。

 2◇WD Black 2登場。

 あちこちでキワモノ扱いされているが、個人的にはこの形態こそが「過渡期の本命」だと思っていたり。
 システム用のSSDと物置用のHDDがひとまとまり、便利でないですか。

 まぁこの製品だともう少しSSD容量が欲しいとか、速度イマイチだとか、値段高過ぎだとか、ツッコミ所は色々あるけれど。
 コンセプトは合ってると思うな、うん。

 ♯この内容ならBlackよりはBlueだよね。

 しっかしOSからの見え方が特殊ですな。JBODでSSDとHDDを繋いでいるのかコレ。
 素直にPMPかましても良かった気がするのだが、内蔵IFだとPMPはハードル高いって判断かね。
 Intelチップセットですら最近のなら対応してはいるが、古いノートPCの入替需要狙うならこの形が良いと。

 ・・・にしても、やっぱり値段が一番ネックだよこれ。
 初物価格でもなんでもちょっと盛り過ぎ。この価格ならSSD容量は倍は欲しいよね。

3◇OCZ破産。

 Link_A_MediaはSK Hynixに、SandForceはLSIに、SiliconSystemsはWDに、sTecはHGSTに。
 怒涛のSSDコントローラメーカ買収劇に自らも参加し、Indilinxを傘下に収めていたOCZが破産というニュースが。

 商売上の失敗の理由は自社ブランドSSDを無理して作っていたことの模様。Flashチップ市場はずっと荒模様だし、SSD市場は既に激戦だし、大した規模もないのでスケールメリット等も出せず、市場に揉まれて撃沈ということらしい。
 ・・・まぁOCZって商売下手だったもんね(ぉぃ。

 にしても、東芝はIndilinxにそんなに興味あったのか。
 Marvell製コントローラ積んでる既存製品も評判悪くないと思うのだが、Samsungみたいに完全自前生産目指すってことだよね、きっと。

 ◇

 とまぁ、こんな話が出てきましたが。
 今年のストレージ界隈の話題は前回のHDDネタ、今回のSSDネタ、合わせてこれぐらいで打ち止め、かな。

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3プラッタ4TBを最初に出すのはどの会社。

 何かこのところHDD周りに色々ありましたな。

 ・ヘリウム入りHDD、7枚プラッタでついに製品化。
 ・9.5mm厚2.5インチでついに2TBに到達。
 ・TDK&Seagate連合、そしてWDが相次いで熱アシスト記録のデモ。

 いやぁ、何だかこのところ膠着状態というか話のネタの無かったHDD界隈に、降って湧いたこのコンボ。
 やっぱり時期的なタイミングだろうね、色々と。

 個人的にはヘリウムなHDD触ってみたいが、まぁ多分そんなチャンスは無いので。
 取り敢えずは「限定的な顧客に出荷」って言っているが、要するに仲良しな会社のサーパーファームという実環境で初物の稼働テストを始めます、ってことだよねこれ。取り敢えず国内には無い気がする、このブツを受け取るは会社。

 ♯しっかし本当に多プラッタ好きだよねHGSTって。

 あと、TDKとSeagateが組んでるのは元々Samsungに部品供給していた縁でしょうな。
 ・・・もしかして、Seagateの1TBプラッタなデスクトップが割と(記録面品質という意味で)安定しているのはTDK製のヘッドのおかげかしらん。アレ実質的にはSpinPointだしね。

 とまぁしかし、これでここ数年のHDD業界の流れが見えてきましたな。
 ということで、少しまとめてみる。

 ◇

 まず、9.5mm厚な2.5インチ2TBな話から。
 ついに辿り着いてしまいましたよ、従来型垂直磁気記録の限界と言われている(おおよそ)1Tbit/平方インチの次元に。
 およそ750Gb/平方インチな2.5インチ500GBプラッタ、3.5インチ1TBプラッタは2011年に登場して以来、2年でここまで来ましたか。まぁHDD業界にとっちゃ洪水やら業界再編やらで激動もあった2年な気もするが。

 ちなみにこの1Tbit/平方インチ、3.5インチにすると1.33GBプラッタが作れます。コレを3枚束ねると4TB。更にもう1枚乗せて4枚で5TB。
 ということで、2014年中には3.5インチで4枚プラッタ、5TBのHDDが発表されるでしょう。値段は兎も角。

 ♯またHGSTがポテンシャルを発揮して1TBプラッタの5枚重ねで5TB品を先行する可能性は否定出来ないが。

 ◇

 そしてその後はというと。
 取り敢えず、熱アシストを各社が頑張ってるおかげで、最初の製品は2015年中には出そうな感じ。
 最初の製品のターゲットは1.2Tbit/平方インチ程度と思われるので、これは2.5インチで750GBプラッタ、3.5インチで1.5TBプラッタ。
 これを3枚束ねると4.5TB、4枚束ねると6TB。ということで、2015年中には6TBか。

 ・・・何この細かい刻み方。
 いやね、ホンネとしては折角熱アシスト使うなら初代製品から1.5Tbit/平方インチ≒3.5インチで2TBプラッタ、4枚束ねて8TBドライブ、という辺りまで引っ張り上げて欲しいのだけど。
 今の市場寡占状態では、各社共に多分初物でそこまで冒険しないでしょう。データセンタ以外にここまで容量が必要なのかという問題もあるし。

 ♯民生用で一番の容量喰いはHDDレコだと思うが、あれだって今のHDD容量あれば大半の人には十分だと思うのですよ。
  AVマニアはHDDの数揃えれば良いだけ。増えるったって頑張っても2桁乗る程度でしょう。
  ヘタすりゃ6桁なデータセンタとは桁が違う。・・・国内にこの規模は無いと思ったけど。

 ◇

 この熱アシスト、こちらも限界があると言われていて、今のところ8Tb/平方インチ、2.5インチで5TBプラッタ辺り。
 但しこれはあくまでも理論値であって、実際のところは1.5Tでも製品化に向けておったおったしている状況。

 ちなみに現時点での「目処感」はというと、取り敢えず4Tb程度まではまぁ何とかなりそう感あり。
 それ以上となると「・・・」ということで、課題山積状態なのでまぁ各社に頑張って貰うとしか。

 #アイデアはあるが、実際に量産出来る製品にするにはどうしたモンやら、というレベル。

 個人的には、実際の製品としては5TBプラッタ@3.5インチぐらいの所で一度「足踏み」が来るんでないかと。

 ◇

 ・・・しかしね、今までさらっと流してきたけど、こんなノリで記録密度が上がると、実際には中々強烈でっせ。
 理論的には、プラッタ密度が倍になるとデータ転送速度は平方根の1.414倍になる。

 この理論で行くと、3.5インチ1.33TBプラッタ7200rpm 4TBのピーク転送速度は230MB/S、端から端まで全セクタ舐めると6.5時間。
 更に3.5インチ2TBプラッタ7200rpm 8TBののピーク転送速度は280MB/S、端から端まで全セクタ舐めると8時間。
 これが5400rpmになるとピーク転送速度は210MB/S、端から端まで全セクタ舐めると実に11時間。

 まぁ要するに、容量増加に転送速度が追いつかないんですよ。これまぁ原理的に仕方ない・・・のだけど。

 ♯ちなみに750GBプラッタが4枚の3TBなWD Greenも端から端まで全セクタ舐めると8時間。

 現在のPCを「処理速度のバランス」という面から見ると、昔懐かしビルの一室を占有するようなでっかいメインフレームに付いている、オープンリールのデータテープ、あれと同じか、ヘタするとアレよりもバランスが悪い状態だったりするんですな、いや本当に。
 演算速度だけはあの頃から数万倍、下手すりゃ10万倍以上速くなっているのに、ストレージのアクセスタイムが全然縮んでいない。昔はテープの長さも限られていたのでサーチ時間も上限があったが、今ではHDDの密度がどんどん上がる=相対的に記録されているデータ量がどんどん上がる=でも転送速度はそこまで伸びない=サーチにかかる時間がどんどん伸びる。

 ・・・まぁこんなことがあったりするので、大容量HDDを扱うにはOS側も色々工夫しないとマズいんですな。
 Windows 2012から採用された記憶域プールとかReFSなんてのもその辺りですな。
 一方で、コンシューマーではそこまで大容量を要求される場面も少ないだろうし、物理的にも消費電力も小さい方が好ましい筈。

 ということで、熱アシストで再びプラッタ密度がドカンと上がってくると、いよいよコンシューマ向けは2.5インチにシフトしてくるのではないかと。
 IntelはNUCやAIOを推してくるし、PCに限らずコンシューマ機器(例えばTVに内蔵するHDDレコとか)でも2.5インチで2TBも容量があれば大抵困らないし、相対的には値段も下がってくるだろうし。

 注:ここの管理人は2.5’HDDというフォームファクタを世間一般よりだいぶ高く評価しています。

 ・・・まぁ、もしかしたらその前に薄型3.5インチなんてのが流行ったりするかも知れない。
 現在もSeagateやHGSTが1プラッタ品で採用しているが、アレはアレでまだだいぶ余裕があるので、本気になればもう少し薄く出来る筈。そしてプラッタ1枚で2TBと。

 ・・・あれ、何か既視感が。BIGFOOT・・・。

 ◇

 いつものようにとっちらかったエントリーだが、まぁこんな感じで。
 思ったより容量増加への道は厳しそうです、な。

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