自作PC「以外」且つハードウェア「だけ」の観点から2014年を予想してみる(x86編)。

 前回に引き続いて、自作とはやや遠いがハードウェア系で個人的に気になるネタをいくつか。
 主としてIntelの動きが目立つのだが、ARM陣営だって黙っちゃいないですよ。
 これまた長くなってしまったので、x86編とARM編に分けます。

 A◇Intelから14nmプロセスAtom、Airmont登場。

 IntelのAirmontは現在のSilvermontのシュリンク版で、タブレット向けはCherryTrailとなり、Windowsタブレットが更に省電力高性能に。
 また組み込み向けでも更に低消費電力を実現する、Intelにとって期待の星。

 ♯そして極一部(当方含む)のオモチャ好きにも期待の星。つかSupermicroのRangeley搭載マザーが欲しい・・・。

 とはいえx86組込市場でそこまで高性能なCPUが要求される場面というのは実は多くはなく、現行Avoton/Rangeley(Atom C2000)~次世代(Atom C3000?)の使命は64bit ARMが来る前にマイクロサーバ&高性能組込市場(高性能NAS等)を席巻すること。AMDのARM Serverへの先制攻撃でもあったり。

 B◇Intel怒涛のスマホ市場攻略。Merrifield、Moorefieldを立て続けに投入予定、でも成功見込は・・・。

 あのIntelが未だに攻略出来ていない「最後の聖域」、スマホ市場に向けて2014年は怒涛の製品投入が予定されていますよ。

 まぁ何しろ既にARMでガチガチに固まっている市場、何とか潜り込もうとここ数年色々手を打っているが、どれも上手くいっていないんですわ。
 理由は簡単で、業界の常識であるARMを捨ててまでIntelを取るメリットが何もないから。ぶっちゃけ製品も全く競争力無かったし。
 それに、ARM近辺のプレイヤーは一度x86に乗ってしまうとIntelに全て吸い尽くされるというのを横目で見ていたPC市場で既に学習しているので、心理的抵抗も物凄い。

 既にx86なTablet等を出荷しているメーカをよく見れば、全て昔からPC市場でお付き合いのある会社だったり。
 結局PCのチャンネルを活かして怒涛の「補助金」を流し込むしか市場攻略の方法が無かったというのが丸分かりなのだが、そこまでしててでも何としてもスマホにx86を入れない限り、x86の出荷は先細りする未来しか見えていないのでIntelも必死なんですわ。

 ♯x86サーバ市場は利率こそ高いが絶対数量を考えるとね。

 そんなIntelだが、2014年には一つのターニングポイントが。
 というのは、今年漸く製品に欠けていた要素が揃い、製品ラインナップで「スタートライン」に立つことが出来る見込みなので。

 その要素というのは、具体的には「LTEモデム」。要するにケータイとして肝心の電波周り。
 実は現在世界で一番LTEモデムの実績を持っている会社=Qualcomm、そしてこの会社はスマホでお馴染みARMな統合チップSnapDragon販売元。なので、普通に考えたら「んじゃ全部入りのSnapDragonでいいや」となりますわな。

 ♯ちなみに最新のiPhoneはQualcommのLTEモデムが入ってます。Appleは意地でも自社製CPUを使いたいので。

 これに対抗するには自社でLTEモデムを持つ必要があるワケなのだが、LTEモデムの開発ってのはカネも時間もかかります。今まで継続的に時間とカネをかけてきたことがQualcommの強さの理由なので。
 そこでIntelはどうしたか。大方の予想通り、カネにモノを言わせてLTEモデム開発部門を当時業界大手(昔のiPhoneはここのモデムを使っていた)Infineonから買収、湯水のように開発費を流し込んで漸く自社製LTEモデムを完成たワケですわ。コレが2014年いよいよ量産に入ります。

 まぁ要するに、漸く「Intel製品だけでまともなスマホ・タブレットが作れる」ようになるのが今年なワケです。
 でも、それでx86なスマホやタブレットが増えるかと言われると、個人的には「それはないな」と。

 ♯念のため、3Gで良ければモデムは既にIntelは持っていましたよ。
  でもIntelがターゲットとするハイエンドスマホ市場に今更「3Gだけです」なんて製品は出せないよね、という話。

 C◇Intel製Apple印ARM CPU登場と、外部ファウンダリ製Intel印x86統合チップSoFIAの登場。

 そして今年Intelについてはもう一つ、従来から完全に方向転換した新戦略が発動する。
 Intelの競争力の源となっているFabでの製造受託規模を拡大すること、そしてIntel自身が外部Fabを使った製品を作ること。

 この辺りは要するに、最近の半導体プロセスの開発費がトンでもない金額になってきたということですな。
 金額が跳ね上がり過ぎて、金満Intelですら自社だけでは限界が見えてきたということ。
 なので、他社製品の受託生産も受け入れて、少しでも多くの製品を作り、投資を回収する必要に迫られているというワケです。
 勿論、この先万が一自社製x86ハイエンドCPUの生産が減少することがあっても会社として利益を出し続ける為の保険という意味もあります。

 そしてもう一つ、IntelのFab(半導体工場)には泣き所があるんですわ。
 それは何しろコストが高いということ。高性能高価格を地で行ってるワケです。
 世間には「28nm以降はコストが高くなり過ぎて元が取れるかどうか疑問」なんて声もある中、この馬鹿高い生産プロセスに見合うだけの価格で製品を買ってくれる客を捕まえる必要があって、実はそういう顧客は世界中見渡してもあまり多くない。

 ♯GFやTSMCが20nmを安定させるのに四苦八苦している中、Intelが22nmのBayTrailを大量出荷出来ているのも一重にカネの力でっせ。
  プロセスというのはある程度数を作らないと安定しないので、製品にならないゴミを大量生産してでも早期にプロセスを安定させるのがIntelのやり方。
  おカネが大事なGFやTSMCはそんなにゴミを生産出来ません、はい。

 そんな自社工場で製品を作ってしまったら、性能は良いがどう頑張っても値段を下げようがない。
 ところが世間では今やハイエンド市場は極少数、圧倒的に薄利低価格のボリュームゾーンを取らないと市場で生き残っていけない。その市場では性能は二の次、まずは価格が重視される。

 そこでIntelはどうするか。
 自社設計のx86コアに、そこらのメーカが売っている低価格なIP(部品みたいなもの)を組み合わせて低価格なファウンダリで生産するという、ファブレス企業と同じことを始めるってんですよ。

 ♯なりふり構わぬってのは正にこのことだが、こういう決断が出来てしまうことがIntelの強さでもあるんだろうなぁ、と。

 勿論コレにはかなり博打要素があって、IP組み合わせやファウンダリ生産には今までIntelは持っていなかった経験やカンが必要だし、組み合わせに失敗すると本当にゴミみたいなものしか出来なかったりするし、結果的にIntelブランドに傷がつく可能性もある。
 また、今までのIntelの「高利益前提の高額投資で製品価格を維持する」という戦略も通用しない。タイムリーに低価格な製品が投入出来るか、それが全てと言っても過言ではない。
 それでもこの市場を取りに行くというのがIntelの決断なんですな。

 ♯つかIntelは昔から買収や外部購入では失敗が多いのよね。前述したInfenionのモデム部門だって3G時代はQualcommと張り合うレベルだったのにLTEでは完璧に出遅れたし。

 そしてその最初の製品が、早ければ2014年後半に登場予定。それがSoFIAというワケです。
 とはいえ個人的にはコレ・・・ぶっちゃけ売れないと思うんだよなぁ。

 ♯だって巷にごろごろしているARMの統合チップで困らないやん。
  敢えてx86取る理由が無いし。

 ◇

 とまぁ、こんなところで。
 ARM編に続きます。

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