3プラッタ4TBを最初に出すのはどの会社。

 何かこのところHDD周りに色々ありましたな。

 ・ヘリウム入りHDD、7枚プラッタでついに製品化。
 ・9.5mm厚2.5インチでついに2TBに到達。
 ・TDK&Seagate連合、そしてWDが相次いで熱アシスト記録のデモ。

 いやぁ、何だかこのところ膠着状態というか話のネタの無かったHDD界隈に、降って湧いたこのコンボ。
 やっぱり時期的なタイミングだろうね、色々と。

 個人的にはヘリウムなHDD触ってみたいが、まぁ多分そんなチャンスは無いので。
 取り敢えずは「限定的な顧客に出荷」って言っているが、要するに仲良しな会社のサーパーファームという実環境で初物の稼働テストを始めます、ってことだよねこれ。取り敢えず国内には無い気がする、このブツを受け取るは会社。

 ♯しっかし本当に多プラッタ好きだよねHGSTって。

 あと、TDKとSeagateが組んでるのは元々Samsungに部品供給していた縁でしょうな。
 ・・・もしかして、Seagateの1TBプラッタなデスクトップが割と(記録面品質という意味で)安定しているのはTDK製のヘッドのおかげかしらん。アレ実質的にはSpinPointだしね。

 とまぁしかし、これでここ数年のHDD業界の流れが見えてきましたな。
 ということで、少しまとめてみる。

 ◇

 まず、9.5mm厚な2.5インチ2TBな話から。
 ついに辿り着いてしまいましたよ、従来型垂直磁気記録の限界と言われている(おおよそ)1Tbit/平方インチの次元に。
 およそ750Gb/平方インチな2.5インチ500GBプラッタ、3.5インチ1TBプラッタは2011年に登場して以来、2年でここまで来ましたか。まぁHDD業界にとっちゃ洪水やら業界再編やらで激動もあった2年な気もするが。

 ちなみにこの1Tbit/平方インチ、3.5インチにすると1.33GBプラッタが作れます。コレを3枚束ねると4TB。更にもう1枚乗せて4枚で5TB。
 ということで、2014年中には3.5インチで4枚プラッタ、5TBのHDDが発表されるでしょう。値段は兎も角。

 ♯またHGSTがポテンシャルを発揮して1TBプラッタの5枚重ねで5TB品を先行する可能性は否定出来ないが。

 ◇

 そしてその後はというと。
 取り敢えず、熱アシストを各社が頑張ってるおかげで、最初の製品は2015年中には出そうな感じ。
 最初の製品のターゲットは1.2Tbit/平方インチ程度と思われるので、これは2.5インチで750GBプラッタ、3.5インチで1.5TBプラッタ。
 これを3枚束ねると4.5TB、4枚束ねると6TB。ということで、2015年中には6TBか。

 ・・・何この細かい刻み方。
 いやね、ホンネとしては折角熱アシスト使うなら初代製品から1.5Tbit/平方インチ≒3.5インチで2TBプラッタ、4枚束ねて8TBドライブ、という辺りまで引っ張り上げて欲しいのだけど。
 今の市場寡占状態では、各社共に多分初物でそこまで冒険しないでしょう。データセンタ以外にここまで容量が必要なのかという問題もあるし。

 ♯民生用で一番の容量喰いはHDDレコだと思うが、あれだって今のHDD容量あれば大半の人には十分だと思うのですよ。
  AVマニアはHDDの数揃えれば良いだけ。増えるったって頑張っても2桁乗る程度でしょう。
  ヘタすりゃ6桁なデータセンタとは桁が違う。・・・国内にこの規模は無いと思ったけど。

 ◇

 この熱アシスト、こちらも限界があると言われていて、今のところ8Tb/平方インチ、2.5インチで5TBプラッタ辺り。
 但しこれはあくまでも理論値であって、実際のところは1.5Tでも製品化に向けておったおったしている状況。

 ちなみに現時点での「目処感」はというと、取り敢えず4Tb程度まではまぁ何とかなりそう感あり。
 それ以上となると「・・・」ということで、課題山積状態なのでまぁ各社に頑張って貰うとしか。

 #アイデアはあるが、実際に量産出来る製品にするにはどうしたモンやら、というレベル。

 個人的には、実際の製品としては5TBプラッタ@3.5インチぐらいの所で一度「足踏み」が来るんでないかと。

 ◇

 ・・・しかしね、今までさらっと流してきたけど、こんなノリで記録密度が上がると、実際には中々強烈でっせ。
 理論的には、プラッタ密度が倍になるとデータ転送速度は平方根の1.414倍になる。

 この理論で行くと、3.5インチ1.33TBプラッタ7200rpm 4TBのピーク転送速度は230MB/S、端から端まで全セクタ舐めると6.5時間。
 更に3.5インチ2TBプラッタ7200rpm 8TBののピーク転送速度は280MB/S、端から端まで全セクタ舐めると8時間。
 これが5400rpmになるとピーク転送速度は210MB/S、端から端まで全セクタ舐めると実に11時間。

 まぁ要するに、容量増加に転送速度が追いつかないんですよ。これまぁ原理的に仕方ない・・・のだけど。

 ♯ちなみに750GBプラッタが4枚の3TBなWD Greenも端から端まで全セクタ舐めると8時間。

 現在のPCを「処理速度のバランス」という面から見ると、昔懐かしビルの一室を占有するようなでっかいメインフレームに付いている、オープンリールのデータテープ、あれと同じか、ヘタするとアレよりもバランスが悪い状態だったりするんですな、いや本当に。
 演算速度だけはあの頃から数万倍、下手すりゃ10万倍以上速くなっているのに、ストレージのアクセスタイムが全然縮んでいない。昔はテープの長さも限られていたのでサーチ時間も上限があったが、今ではHDDの密度がどんどん上がる=相対的に記録されているデータ量がどんどん上がる=でも転送速度はそこまで伸びない=サーチにかかる時間がどんどん伸びる。

 ・・・まぁこんなことがあったりするので、大容量HDDを扱うにはOS側も色々工夫しないとマズいんですな。
 Windows 2012から採用された記憶域プールとかReFSなんてのもその辺りですな。
 一方で、コンシューマーではそこまで大容量を要求される場面も少ないだろうし、物理的にも消費電力も小さい方が好ましい筈。

 ということで、熱アシストで再びプラッタ密度がドカンと上がってくると、いよいよコンシューマ向けは2.5インチにシフトしてくるのではないかと。
 IntelはNUCやAIOを推してくるし、PCに限らずコンシューマ機器(例えばTVに内蔵するHDDレコとか)でも2.5インチで2TBも容量があれば大抵困らないし、相対的には値段も下がってくるだろうし。

 注:ここの管理人は2.5’HDDというフォームファクタを世間一般よりだいぶ高く評価しています。

 ・・・まぁ、もしかしたらその前に薄型3.5インチなんてのが流行ったりするかも知れない。
 現在もSeagateやHGSTが1プラッタ品で採用しているが、アレはアレでまだだいぶ余裕があるので、本気になればもう少し薄く出来る筈。そしてプラッタ1枚で2TBと。

 ・・・あれ、何か既視感が。BIGFOOT・・・。

 ◇

 いつものようにとっちらかったエントリーだが、まぁこんな感じで。
 思ったより容量増加への道は厳しそうです、な。

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