さて、取り敢えず使ってみたレポートの後は。
FXシリーズ発売当初からの謎を解いてみることにする。
それは・・・
「125W TDPって割にFXって電気爆喰いっぽいんだけど、なんで?」
◇
前回も触れたように、換装前後でCPUとマザー以外全く一緒なので比較してみる。
例によってワットメーターを挟み込んで、と。
電源投入後Max → 120/185
Windows 7 Idle → 88/ 95
OCCT 負荷中 → 144/275
動画鑑賞中 → 92/100
890GX+PhenomII X4 910e/990FX+FX-8350ね。
・・・ってちょっと待て。OCCT負荷中の275Wって何だコレ。
というか125WCPUを回しているのに何なのさその消費電力。
取り敢えず、考える前に一通りの消費電力チェックをして。
アイドル時@3GHz → 120W (Cl’q無効)
OCCT負荷中@3GHz → 240W(対4GHzで-35W)
アイドル時@1.4GHz → 110W (Cl’q無効)
OCCT負荷中@1.4GHz → 125W (Cl’q有効時と同一周波数・同一VCore=0.9v)
OCCT負荷中@1.4GHz → 175W (VCoreデフォルト=1.35v)
うん、仕込めた。次から考察。
◇
さて、まず上記値はワットメーターなので、電源自体の効率を考慮して実使用電力を求めることにする。
使用しているのは玄人志向/EnhanceのEnhance ENP-5140GH、80Plus Bronzeなので、ワーストケースの効率82%と仮定する。(実際はもう少し良いっぽいけど)
上記に出した数字をこの効率を使って全て「ケース内使用電力」に変換する。
OCCT負荷中@4GHz → 225W
アイドル時@3GHz → 98W
OCCT負荷中@3GHz → 197W
アイドル時@1.4GHz → 78W (Cl’q有効)
OCCT負荷中@1.4GHz → 103W (Cl’q有効時と同一周波数・同一VCore=0.9v)
アイドル時@1.4GHz → 90W (Cl’q無効)
OCCT負荷中@1.4GHz → 144W (VCoreデフォルト=1.35v)
次に、CPU以外の消費電力を排除する。
まず、VCoreが0.9Vの場合とVCoreが1.35Vの場合「漏れ電流が無い理想的な半導体で」消費電力は0.81/1.82、つまり45%となり、差分は55%となる。
次に、漏れ電流は一定であり電力は電圧にのみ比例するので、以下の式が成り立つ。
最後に、アイドル時は漏れ電流のみが流れるものと仮定して、以下の式を解く。
144W=漏れ電流×1.35v+クロック比例消費電力+CPU以外の消費電力
90W=漏れ電流×1.35v+CPU以外の消費電力
103W=漏れ電流×0.9v+クロック比例消費電力×0.45+CPU以外の消費電力
78W=漏れ電流×0.9v+CPU以外の消費電力
結果クロック比例消費電力は55W@1.4GHz@1.35Vとなるので、漏れ電流はは27A、CPU以外の消費電力は54Wとなる。
この数字を使って「答え合わせ」をする。
36W(漏れ電流@1.35v)+157W(クロック比例消費電力@4GHz)+54W(CPU以外の消費電力)= 246W 実測+21W
36W(漏れ電流@1.35v)+118W(クロック比例消費電力@3GHz)+54W(CPU以外の消費電力)= 207W 実測+11W
少々誤差が出ているので微妙に修正かけるとどうなるか確認。上記式だけを解くと49W@1.4GHz@1.35Vとなるが、それもアレなので中間取って。
36W(漏れ電流@1.35v)+148W(クロック比例消費電力@4GHz)+54W(CPU以外の消費電力)= 238W 実測+13W
36W(漏れ電流@1.35v)+111W(クロック比例消費電力@3GHz)+54W(CPU以外の消費電力)= 201W 実測+4W
36W(漏れ電流@1.35v)+ 52W(クロック比例消費電力@1.4GHz)+54W(CPU以外の消費電力)= 142W 実測値-2W。
・・・この辺りかな。
まあ真面目に計算するとアイドル時に漏れ電流以上のものが流れているとか電源効率の改善分とかイロイロ計算に入れる必要があるので、これで良しとしましょ。傾向的には間違っていないことが証明出来ました、と。
で、ここで既に明らかになっているように、CPUは既に125W以上に電力を喰っている。
といっても、CPU自体がこれだけ喰っているワケがない。そんなに喰われたら即炎上してしまう。
つまり・・・
CPU自体に125W喰わせるのにVRMに最低でも173W、ヘタしたら190W近くを突っ込んでいる
ということになる。ナンですかこの驚異の変換効率。173Wでも効率72%、48Wも熱になってまっせ。
#仮に190Wなんて言ったら効率65%、65Wも熱・・・65WCPU1コ分ですがな。
◇
以上、うだうだと書いてきたが、自分の中ではこういう結論。
・Socket AM3+のVRMはStarsでは高効率で稼働するがBulldozerでは変換効率が相当落ちてしまう。
・VRMの変換効率の低下+素の消費電力の高さで、Phenomに比べて消費電力が爆伸び。
上記使用電力周りを計算すると、Phenom装着時はVRMは効率90%以上で動いていたことになる。
そもそもそのCPUの特性に合わせて設計されていればこれぐらいの効率は叩き出せるので、特別不自然な数字でもない。
結局、FXがAM3プラットフォームを引き継いでしまった「負の遺産」は思った以上に大きい模様。
AM3+のマザーのVRM周りが妙にゴツいのも、それなりの理由がある模様。
そしてこの数字を見ると、TrinityでFM2に変更せざるを得なかった理由も激しく納得が出来る。
恐らくAMDも当初はFM1流用を考えていただろう。が、そうした場合VRMの負担が大きく、FXと同じ電力爆喰状態になるか、VRMが激速昇天するか、或いは両方か、というトンでもない事態になったに違いない。
なので最低限VRMを変更せざるを得ず、そこから「どうせVRMが変更になるならソケット変更しても誰も困らないよね」→「ついでにイロイロ新機軸盛り込みましょ、あぁ互換性考えないってラクで幸せ」ってなノリでFM2になったのではないかと。
逆に言うと、FXシリーズに特化して従来Starsコアを非対応としてしまえば、実はAM3+でも「AC側のピーク値で従来より50W近く消費電力の低い」マザーを作れる可能性はあるということ。勿論誰もこんなモノ誰も作りはしないだろうけど・・・ね。
まあ・・・互換性ってのはいろんな意味で大変なもの、というのは業界問わずいろんな場面である話だろうが、何だかなぁ・・・としみじみしてしまいました、とさ。