独断と偏見のNIC選びをしてみる。

 前回からのNIC話の続き。
 当方の独断と偏見で、各社製品を見てみましょうか。

 ◇エンタープライズ向けNIC

 ・Broadcom NextremeII(サーバ)

  単純な速度ベンチマークだとIntelの後塵を拝することもあるが、負荷の低さや安定度では群を抜いている。
  但し価格が高く、またOEM製品しか無い為入手性や保守性に難あり。
  その辺りの問題がクリア出来る(ベンダ保守前提等)ならば文句なしの一品。

 ・Intel ServerAdapter(サーバ)

  Broadcomより性能や安定度でやや劣るも、エンタープライズ向けとして十分な品質を持ち、しかも比較的低価格。
  アキバでも買える入手性の良さ、ドライバが一般公開されており保守性の良さも魅力的。
  総合評価ではBroadcomとIntelでは一長一短だと思う。後は活用シーンや好みの問題で。

 ☆Intel DesktopAdapter(エンタープライズ・デスクトップ)

  エンタープライズと言ってもWorkstationとかその辺り向けで、勿論普通のデスクトップPC向けでもある。
  サーバでしか必要とされていない機能をばっさり削ることで値段を下げており、品質の割にはお買い得価格。
  デスクトップで使用する限りはシステム負荷もServerAdapterと大差ないという優秀な一品。

 ◇一般向けNIC

 ・Ateros Qualcomm KILLER(デスクトップ)

  ゲーミング用という一点突破型、ちょっと特殊な立ち位置な製品。
  実はこれ、エンタープライズ向けNICと同じようにシステム負荷を軽減する仕組みが入っているのだが、それがゲーミング用途に特化して構成されているという代物。
  但し問題はドライバ品質がアレなことで、個人的にはお薦めしない。

  #実はAterosは以前にL1という「そもそもまともに繋がりすらしない」NICの形をしたナニカを出荷していたという輝かしい実績があるので、通信出来ているだけ以前より進歩したとも言えるのだけど。

 ・Realtek 8111/8168(デスクトップ)

  俗に言うギ蟹。安かろう悪かろうの典型。
  価格の安さ故にオンボードNICの定番となっているが、CPU負荷についてはその高さは折り紙付き。
  とはいえ昨今のデスクトップ用途ではあまり問題にならないというのは以前書いた通り。
 
  また、やったら数は出ているだけあり、希に出る地雷さえ踏まなければドライバの安定度もそう悪くない上、大抵のOSでドライバが存在するので「取り敢えず」使う程度ならまず困らない。
  総合的に見れば意外とポイントは高いかも。

  ♯但しまぁ、個人的にはサーバ用にはちょっと。
   激安組込品や簡易サーバの類でも実際採用されたりしてはいますけどね・・・。

・AX88179/AX88178A(USB3.0/2.0)

  ちょっと毛色が違うが、国内で普通に入手出来るUSB接続のLANアダプタの採用チップは殆どコレ。
  USB接続なのでデスクトップ用途以外有り得ないが、そのデスクトップ用途では特に困らない程度のドライバ品質は確保されているように見える。

  一方、NICとしての安定性以前に、USB接続の相性や安定性の問題、またUSBでの連続データ転送時のシステム負荷の高さという問題があり、他の選択肢が無い場合以外は出来るだけ避けたいところ。
  実際、このNICでトラブってるいう話を聞くと、結構な確率で「それ本体のUSBポートかUSBドライバの問題でしょ」という結論になってしまうのだが、実際問題としてこの辺りはユーザが簡単にどうにかするのも難しく、結局どうしようもないという話になりがちではある。

 ♯特にUSB3.0だとね・・・。あと、希にノートPCのLANポートが内部でUSB接続だったりもする。

 ◇

 取り敢えずメジャーな製品を列挙してみた。
 以上の中で、デスクトップユーザへのお薦めを選んでみると。

 ・特に困っていないなら、オンボードのギ蟹のままで
 ・オンボードでトラブってたり、ちょっとコダワリたいなら、Intel Desktop Adapter

 こういうことではないかと。
 兎に角CPUパワーが有り余っている昨今だと、殆どの場合オンボードのギ蟹で困らないんですよね、実際に。
 なまじドライバ品質が悪くないだけに、余計に。
 なので、明らかにNICが原因でトラブってしまっているとか、余程NICにコダワってみたいとか、そんな時に初めてIndel Desktop Adapter辺りを挿してあげれば良いと思いますよ。
  
 ♯ちなみに当方も使用しています>Intel Desktop Adapter。

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激安NICとお高いNICの違いについて、ちょっと書いてみる。

 コメント欄でちょいと訊かれたので、ちょっとだけ。

 ◇

 まず、NICには大きく分けて2種類のカテゴリがあります。

 1・お安い、一般向け
 2・お高い、エンタープライズ向け

 カテゴリの違いがそのまんまお値段の違いになっている分かり易さ。
 ちなみに最近ではKiller NICとかGaming NICとか呼ばれる代物がちらほら見かけられますが、コレは「一般向け」カテゴリですな。

 で、この2種類のカテゴリの違いを大雑把且つ乱暴に言ってしまうと、こんな感じになります。

 1・エンタープライズ向けNICは、通信時にシステム負荷が少ない
 2・エンタープライズ向けNICは、サーバで必要とされる機能が搭載されている
 3・エンタープライズ向けNICは、ドライバ品質が検証されている

 逆も又真なりということで、お安い一般向けNICは以下の通りなんですな。

 1・一般向けNICは、通信時にシステム負荷が高い
 2・一般向けNICは、サーバでしか必要でない機能は省かれている
 3・一般向けNICは、ドライバ品質にバラツキがある可能性がある

 でも、実はこれは以下のようにも言えます。

 1・一般向けNICは、通信時にシステム負荷が多少高いが、そこまで気にするレベルではない
 2・一般向けNICは、余計なものが付いていないので低価格である
 3・一般向けNICは、ドライバが腐っていることがあるので、その時は諦めて別のドライバを試してみる
 4・一般向けNICは、エンタープライズ向けNICと速度面で大差ない

 あれ、こう書くと特に問題無くね?と思った方、それ正解です。

 今時デスクトップユーザが一般向けNICで困ることはまず無い

 んです。自宅サーバを抱えているとか、特殊な環境だという理由でもない限りは。
 また、上でさらっと書いてしまいましたが、速度面でもエンタープライズ向けと一般向けで現在では大差ありません。
 確かに一昔前には結構差があったのですが、その後世間一般のCPUパワーがどんどん強化された結果、現在ではほぼタメになってしまいました。

 ♯なので極端に省電力優先等でCPUパワーが不足するような「特殊な環境」では、現在でもエンタープライズ向けNICの効果テキメンな場面があったり。

 まずここまで大前提です。
 とはいえ、これで終わってしまうと簡単過ぎるので、もう少しだけ詳しく触れてみましょうか。

 その1◇「通信時のシステム負荷が低い」って?

 ネットワーク通信というのはリアルタイムの処理が連続するため、CPUやシステムに結構負荷がかかるんですな。

 なので、エンタープライズ用NICでは、ネットワーク通信処理専用の回路を組み込み、CPUやシステムへの負荷を軽減する仕組み(オフロードと言います)になっています。
 エンタープライズの世界では兎に角CPUパワーが一番貴重なので、CPUの負荷をNICで肩代わり出来るならどんどんやりまっせ、となる訳です。
 またエンタープライズの世界では10Gb等の高速なネットワークが使用されるため、これをCPUで処理するとなると相当な負荷となってしまうのです。

 一方で、一般向けNICでは、ぶっちゃけ値段が正義なので、こんな無駄なことはしません。
 要するに、通信出来ればそれでいいんです。
 なので全部CPUに頑張って貰うことにすれば、NIC自体はシンプルで低価格に出来ます。

 それでは負荷はどうなるんだという話ですが、家庭にあるギガビット程度なら昨今のCPU性能を以てすれば「まあどうにか」なってしまうのです。
 勿論負荷ゼロではないですが、一般的なデスクトップ機ではCPU性能なんて余りまくってますし、気にしない気にしない、と。
 え、CPU性能余って無いって?それじゃネットワーク通信の処理が遅くなっても遅れても仕方ないよね、お値段安いんだからそこは割り切って貰わないと。

 その2◇「サーバで必要とされる機能が搭載されている」って?

 エンタープライズの領域では、仮想化やiSCSI等のデスクトップでは普通使わない技術が普通に活用されています。
 なので、そういうモノに対してNICが対応する必要がある訳です。
 もちろんこれもタダでは出来ないので、その分のお値段がエンタープライズNICには上乗せされるという訳です。

 一般向けNICは・・・そんなモノ要りません。
 要らないモノにカネを払う必要はないと。

 その3◇「ドライバ品質が検証されている」って?

 高負荷で24時間ぶっ通し、下手すりゃ年単位で稼働しっぱなしなんて羽目にもなるのがエンタープライズ向けNICの宿命です。
 そこでNICが原因の障害多発、なんてことになったら最後、あっという間に客は離れていくしブランドイメージにも大打撃。
 なので、ドライバ品質には気を使っていますし、MSやVMwareといったベンダの認証も多少カネがかかっても積極的に取りに行くんですよ。
 ・・・でもこの「品質担保」って、ホントにカネがかかるんですよ。その割に成果は見えにくい。

 一方、デスクトップ用なんてそんなぶっ通しで動かすこともないし、希にコケたところで大して問題にもならんし。
 そんなにカネがかかる品質担保なんてやりません。
 確率論的には「デスクトップユーザの使い方だと1年に1度コケるかどうか」なんてレベルの話にカネをかけて品質担保するより、その分低価格で売った方がウケるに決まってます。

 但しその弊害として、時々とてつもなく品質の悪いドライバが出てきてしまうことがあります。俗に言う「地雷」。
 でもデスクトップユースなら、気がついたらドライバを入れ替えればいいだけ。多少手間はかかりますが、その程度の話です。

 ♯これがエンタープライズだとドライバひとつ入れ替えるだけでも大騒ぎになります。

 更に言ってしまうと、デスクトップ用には希に永遠に安定しないというゴミ製品が出てくることすらあったりするのですが、その場合でも別のNICに交換するのにそこまで大金を準備する必要も無いし、システム上の大問題が発生することもないワケです。

 ♯エンタープライズでは後からNICの交換なんて有り得ないのです。

 ◇

 以上、こんな感じですか。
 微妙に長くなってしまったのでここで切って、この後で具体的な製品名等を書いてみましょうか。

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PRO/1000 PTとGigabit CTの思わぬ違い。

 PRO/1000 PTよりGigabit CTの方がシステムリソースに優しい。
 PRO/1000 PTだとリソースが取れなくて動かない環境でも、Gigabit CTだと動くことがある。

 あと、PRO/1000 PTとAMD SB750のAHCI(&RAID)ドライバは相性があるっぽい。
 症状はどう頑張ってもPTが有効に出来なくなるというモノ。

 ちなみに当方がこの症状を喰らったのは790GX(M4A78T-E)と780FX(M3A79-T Deluxe)。どちらも、オンボードデバイス類だけでもリソースがギチギチだというのに、PCIeが充実しているので色々突っ込みたくなるマザー。

 で、色々突っ込んだら見事にリソース不足、というオチですな。

 #色々突っ込む場合はオンボードで使わないリソース類(1394とかパラレルとかシリアルとかオーディオとかLANとか)を片端から無効にするのが必須。勿論これはやったのだが、それでも足りなかったらしい。

 更に、RAIDドライバを組み込んだらそれ以前は普通に使えていたPRO/1000 PTがウンともスンとも言わなくなり、カード抜いて空きリソース増やしても、BIOSからSATAを無効にしてそもそもデバイスが見えない状態にしても、何故か全く有効に出来なくなってしまったので。

 まあもしかしたらドライバというよりBIOS(のシステムリソース分配)の問題かも知れないし、だとするとBIOSのVerが違えば発生しない問題なのかも知れないが、こんな話もありました、ということで。

 #あ、あとM4A78T-EオンボードのAtheros L1Eは蟹とは別の意味でゴミなので要注意(システム負荷以前に兎に角不安定)。
  代わりにPRO/1000 PT挿して色々環境作っていたらAHCI有効にした時点で…というオチ。仕方ないのでGigabit CT挿しましたよ、という話。

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e1000とe1000eはそんなに違うか?~完結編~

 GbEをベンチしてみたシリーズ考察編。
 取り敢えず、結論を先に。

  • tg3最強。
    NetPerfの速度こそ落ちるが、CPU負荷率の低さとCIFSの速度はダントツ。
  • e1000とe1000eは僅差でe1000の勝ち。
    でも駄目NIC相手にはe1000の方がやはり底力がある。
  • Yukon遅ぇ。
    つか何ですかこの受信時CPU負荷率。
  • このクラスのNICに言わせると、JumboFrameはゴミらしい。

 以上をまとめると、

 LANで幸せになりたけれぱ、全てのNICをマトモなもので統一せよ。

 ってことで。
 実に真っ当でつまらん結論になってしまった。

 ◇

 個人的にインパクトがデカかったのは、tg3の予想以上の力強さ。
 送受信共にe1000よりCPU負荷が圧倒的に低く、特に送信時などe1000の半分で済むという。

 一方、課題となっていたe1000 vs e1000e。
 結論としては、「やっぱe1000の方が強いやね」ということで。
 対Intelではe1000とe1000eは目立つ程の差は付かないのだが、対Intel以外ではどうしてもe1000の方が地力があるように見える。

 逆に言うと、e1000とe1000eで差が分からん、なんて人は環境をIntel NICで固めていたりするんでないかね。

 しかしこうなってくると、tg3が輝いて見えてきますな。
 性能ぶっちぎりで非Intel。素晴らしい。
 でも確か、HPのオプションで普通に買えた時代から、価格は割とステキだった気がする。

 そう考えると、Gigabit CTの価格性能比っても悪くないのかも知れない。

 ◇

 P.S.

 このテのベンチって、手間がかかる割には、結論はつまらないというか何というか。
 あ~疲れた。

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e1000とe1000eはそんなに違うか?~計測編~

 GbEをベンチしてみたシリーズ数字編。
 取り敢えず、画像をぺたっと。

Benchmark Result

 ・・・いやね、Excelで表を作ったら、それをExportするのが面倒で。
 これでも読めるからイイでしょ、ということで。

 netperfのコマンドラインは以下の通り。

 puddy_netperf -H 相手IP -l 30 — -s 65535 -S 65535

 CPU負荷率は目測。目安程度でしかないので念のため。

 CIFS計測のコマンドラインは以下の通り。

 copy ¥¥相手IP¥共有名¥ファイル名 ローカルドライブ:¥作業ディレクトリ

 更に、CIFS転送効率も目測。
 とはいえGB単位のファイルを複数回転送していて、且つ1回目は捨てているので、そこそこの数字ではあると思う。

 #1回目を捨てるのはDisk I/Oの影響が大きいため。
  2回目以降は転送元側のCacheにFileが乗るので多少影響が減る。

 ・・・で、数字並べて疲れたのでここから先は考察編へ。

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