激安NICとお高いNICの違いについて、ちょっと書いてみる。

 コメント欄でちょいと訊かれたので、ちょっとだけ。

 ◇

 まず、NICには大きく分けて2種類のカテゴリがあります。

 1・お安い、一般向け
 2・お高い、エンタープライズ向け

 カテゴリの違いがそのまんまお値段の違いになっている分かり易さ。
 ちなみに最近ではKiller NICとかGaming NICとか呼ばれる代物がちらほら見かけられますが、コレは「一般向け」カテゴリですな。

 で、この2種類のカテゴリの違いを大雑把且つ乱暴に言ってしまうと、こんな感じになります。

 1・エンタープライズ向けNICは、通信時にシステム負荷が少ない
 2・エンタープライズ向けNICは、サーバで必要とされる機能が搭載されている
 3・エンタープライズ向けNICは、ドライバ品質が検証されている

 逆も又真なりということで、お安い一般向けNICは以下の通りなんですな。

 1・一般向けNICは、通信時にシステム負荷が高い
 2・一般向けNICは、サーバでしか必要でない機能は省かれている
 3・一般向けNICは、ドライバ品質にバラツキがある可能性がある

 でも、実はこれは以下のようにも言えます。

 1・一般向けNICは、通信時にシステム負荷が多少高いが、そこまで気にするレベルではない
 2・一般向けNICは、余計なものが付いていないので低価格である
 3・一般向けNICは、ドライバが腐っていることがあるので、その時は諦めて別のドライバを試してみる
 4・一般向けNICは、エンタープライズ向けNICと速度面で大差ない

 あれ、こう書くと特に問題無くね?と思った方、それ正解です。

 今時デスクトップユーザが一般向けNICで困ることはまず無い

 んです。自宅サーバを抱えているとか、特殊な環境だという理由でもない限りは。
 また、上でさらっと書いてしまいましたが、速度面でもエンタープライズ向けと一般向けで現在では大差ありません。
 確かに一昔前には結構差があったのですが、その後世間一般のCPUパワーがどんどん強化された結果、現在ではほぼタメになってしまいました。

 ♯なので極端に省電力優先等でCPUパワーが不足するような「特殊な環境」では、現在でもエンタープライズ向けNICの効果テキメンな場面があったり。

 まずここまで大前提です。
 とはいえ、これで終わってしまうと簡単過ぎるので、もう少しだけ詳しく触れてみましょうか。

 その1◇「通信時のシステム負荷が低い」って?

 ネットワーク通信というのはリアルタイムの処理が連続するため、CPUやシステムに結構負荷がかかるんですな。

 なので、エンタープライズ用NICでは、ネットワーク通信処理専用の回路を組み込み、CPUやシステムへの負荷を軽減する仕組み(オフロードと言います)になっています。
 エンタープライズの世界では兎に角CPUパワーが一番貴重なので、CPUの負荷をNICで肩代わり出来るならどんどんやりまっせ、となる訳です。
 またエンタープライズの世界では10Gb等の高速なネットワークが使用されるため、これをCPUで処理するとなると相当な負荷となってしまうのです。

 一方で、一般向けNICでは、ぶっちゃけ値段が正義なので、こんな無駄なことはしません。
 要するに、通信出来ればそれでいいんです。
 なので全部CPUに頑張って貰うことにすれば、NIC自体はシンプルで低価格に出来ます。

 それでは負荷はどうなるんだという話ですが、家庭にあるギガビット程度なら昨今のCPU性能を以てすれば「まあどうにか」なってしまうのです。
 勿論負荷ゼロではないですが、一般的なデスクトップ機ではCPU性能なんて余りまくってますし、気にしない気にしない、と。
 え、CPU性能余って無いって?それじゃネットワーク通信の処理が遅くなっても遅れても仕方ないよね、お値段安いんだからそこは割り切って貰わないと。

 その2◇「サーバで必要とされる機能が搭載されている」って?

 エンタープライズの領域では、仮想化やiSCSI等のデスクトップでは普通使わない技術が普通に活用されています。
 なので、そういうモノに対してNICが対応する必要がある訳です。
 もちろんこれもタダでは出来ないので、その分のお値段がエンタープライズNICには上乗せされるという訳です。

 一般向けNICは・・・そんなモノ要りません。
 要らないモノにカネを払う必要はないと。

 その3◇「ドライバ品質が検証されている」って?

 高負荷で24時間ぶっ通し、下手すりゃ年単位で稼働しっぱなしなんて羽目にもなるのがエンタープライズ向けNICの宿命です。
 そこでNICが原因の障害多発、なんてことになったら最後、あっという間に客は離れていくしブランドイメージにも大打撃。
 なので、ドライバ品質には気を使っていますし、MSやVMwareといったベンダの認証も多少カネがかかっても積極的に取りに行くんですよ。
 ・・・でもこの「品質担保」って、ホントにカネがかかるんですよ。その割に成果は見えにくい。

 一方、デスクトップ用なんてそんなぶっ通しで動かすこともないし、希にコケたところで大して問題にもならんし。
 そんなにカネがかかる品質担保なんてやりません。
 確率論的には「デスクトップユーザの使い方だと1年に1度コケるかどうか」なんてレベルの話にカネをかけて品質担保するより、その分低価格で売った方がウケるに決まってます。

 但しその弊害として、時々とてつもなく品質の悪いドライバが出てきてしまうことがあります。俗に言う「地雷」。
 でもデスクトップユースなら、気がついたらドライバを入れ替えればいいだけ。多少手間はかかりますが、その程度の話です。

 ♯これがエンタープライズだとドライバひとつ入れ替えるだけでも大騒ぎになります。

 更に言ってしまうと、デスクトップ用には希に永遠に安定しないというゴミ製品が出てくることすらあったりするのですが、その場合でも別のNICに交換するのにそこまで大金を準備する必要も無いし、システム上の大問題が発生することもないワケです。

 ♯エンタープライズでは後からNICの交換なんて有り得ないのです。

 ◇

 以上、こんな感じですか。
 微妙に長くなってしまったのでここで切って、この後で具体的な製品名等を書いてみましょうか。

Share