自作PC「以外」且つハードウェア「だけ」の観点から2014年を予想してみる(ARM編)。

 前々回、前回に引き続いて、自作とはやや遠いがハードウェア系で個人的に気になるネタをいくつか。
 最後にARM編。2014年はx86とARMが本気で正面衝突する元年でもあります。

 D◇nVIDIAからTegra4iとTegra5登場、この製品の居場所はあるのか?

 ARM市場、実に混沌としております。2013年の市場シェアを上から並べるとQualcomm(お馴染みSnapDragon)、Apple(まぁ何といいますか)、MediaTek(PCヲタには光学ドライブ制御チップでお馴染み)、Samsung(Exynosは自社製品搭載割合がダントツ)、Spreadtrum(中華な製品)。上位80パーセントをこの5社が占めているとはいえ、それ以下の所にもまぁ有象無象が蠢いているワケで。
 そしてPCユーザにお馴染みのnVIDIAはというと・・・まぁ、圏外です、はい。

 こんな市場で、冗談ではなく生き残りを賭けて、nVIDIAが今年2製品を投入。
 去年Intelと同じ失敗をしたnVIDIA、今年巻き返せないと結構本気で厳しいことになります、はい。
 が、どちらも「出遅れ感」が漂うというか・・・。

 ♯ちなみにIntelと同じ失敗というのは「LTEモデムが完成しなかった」。
  Tegraはポジション的にはSnapDragonと同じトコを狙っているのに、片やLTEモデム内蔵の全部入り、片やモデムは別会社製品でね、じゃ勝負は見えてるワケです。

 まず一つ目の製品はTegra 4i。
 モノ自体は2013年の早いうちに発表されていたが、現物が出るのは今年に入ってから。
 その間にこの製品のポジションもミッドハイからミッドローに落っこちてしまったが、価格さえ間違えなければチップそのものの競争力は十分に残っているかと。

 もう一つの製品はTegra 5。
 こちらがnVIDIAの本命ですな。
 高いGPU性能はRetinaディスプレイの駆動にも威力を発揮するが、何より現在x86で展開しているCUDAをARMの世界に持ち込むという意味が(nVIDIAにとっては)大きい。

 但しこのチップの立ち位置は、x86なBayTrailとモロに競合する。
 仮にWindowsRTが大成功していたりしたらこの製品の立ち位置も安泰だっただろうが、そちら方面はもう絶望的なので、そうなるとこの製品は相当微妙な感じでは。
 何しろボリュームを出さないと元が取れないのだが、現在の市場を見るとそのボリュームを出すのが難しい。

 ♯前回も書いたが当方は「高価格タブレットではWindowsが動くx86か、AppleのiPadしか生き残れない」と思っているので。

 しかもこのチップ、CPUが32bit ARMなんですよ。
 今年はハイエンドからミッドレンジまで一気に64bitに切り替わるので、32bitでハイエンドを名乗り続けるのは苦しいかと。
 nVIDIAの64bit ARM統合は次世代のTegra 6で、コレはGPUがMaxwell世代になるので早くとも2014年内ギリギリと言われていて、それまではこのチップで戦うしかない。

 ちなみにnVIDIAはチップ採用メーカへのサポート体制の悪さには定評があったので(サポート体制の良さもQualcommの一つのウリ)、コレをどうにかしない限りいくらチップが良くとも顧客は付かないのだが、この辺りがその後改善してきたのかは不明。
 また、nVIDIAはSHILDやTegra NOTEといった自社ブランド製品を出してきているが、コレも悪く言えば「誰も買ってくれないから自社でTegra採用製品を作るしかない」ということでもある。同じ自社製品採用でも世界中で怒涛の数を売りまくってるSamsungとは話が違うワケで。

 ・・・さて、Tegra4i&Tegra5採用モデルはどれくらい出てきますかね。
 個人的には相当厳しい戦いだと思いますよ。いや本気で。

 ♯最低でも相当なディスカウントが必要なのではないかと。

 E◇MediaTekから64bitARM&LTEモデム入りチップ登場、国内製品に採用されるか。

 MediaTekというとCD-Rを思い浮かべるのは年寄りで、最近は比較的高性能な中華ケータイの中身は大抵コレが入っています(先程取り上げたSperedtrumはもう少し低価格で、その下にはまた有象無象が続く)。中華ケータイは今まで3Gだけあれば良かったので、LTEが入っていなくとも十分商売になったんですな。

 ところが今年このMediaTekから、いよいよLTEモデム内蔵チップが出ます。
 このLTEモデム、実はDoCoMoとその仲間達=国内メーカ連合が開発した技術がベースになっているんですよ。

 ♯ライセンス供与したのは2010年、当時はDoCoMoも国内メーカもここまで市場が変化するとは思っていなかったんでしょうなぁ。

 しかも、Big-LittleのOctaCore構成ということで、CPU部分の性能も悪くない上に、SnapDragon等と比べて値段も比較的安くなりそう。
 今のところLTEが無いばかりに中華ケータイ以外では殆ど見かけなかったMediaTekの「世界進出戦略」チップなのです。

 で、個人的にはコレ搭載製品が国内デビューする可能性は相当高いと思っていますよ。
 少なくともDoCoMoのLTE回線との相性という意味では折り紙付きだし、最高性能ではないけれども相当コスパの高い製品が作れるし。

 同じセグメントにSnapDragon410という対抗製品を(ハイエンド&ドル箱なSnapDragon800の更新前に)速攻で投入してきた辺り、Qualcommも相当警戒している。
 それだけの完成度と言われている製品なワケです。

 F◇AMDからSeattle登場、64bit ARM Server市場立ち上げという博打に臨むも、2014年中には特に動きなし。

 最後にARMサーバの話を。

 2014年、ARMのサーバ向けチップがいよいよ登場。IntelのATOMとの勝負に挑むワケです。
 対するIntelの先制攻撃はというと、正直相当強い。Silvermontは出来が良いし、この後もAirmont、Goldmontと続いていく。
 しかもこの市場、ARMを敢えて選ぶ理由が見当たらない。
 前回のエントリでは「スマホでx86を選ぶ理由が無い」と散々書いたが、同じことですわ。

 なので、この市場はそう簡単に立ち上がらないと思いますよ、自分は。
 2014年中には、そもそもこの市場が立ち上がるかすら分からないかと。

 一方で、例えば去年「googleがARMペースの独自チップを開発する」という噂が出たように、より高い電力効率を目指して汎用品から専用品に切り替えようという動きが出始めているのも確か。
 そうなってくると、カスタマイズが簡単で既に多種多様な目的に特化したチップの実績もある、ARMの強みが活きてくるかも知れない。

 ♯AMDはx86でもカスタムチップは作れるし、現にPS4にもXBox Oneにも提供した実績があるので、別にARMでなくとも・・・という気もしなくもないけど。

 まぁ何れにしろこういう動きも本格化するのは早くとも2015年以降だと思うので、やっぱり2014年中には何も起こらないのではないか、と。

 ♯googleが本気でARMカスタムチップを作る気になった時、それをAMDが取れるかどうかは(AMDのARMビジネスにとって)相当大きなポイントになるとは思うけど。

 ◇

 さて、以上色々うだうだと書いてきましたが、皆様の予想はどんな感じでしょうか。

 ARM近辺は兎に角動きが激しいので、下手すれば1年で市場を失う可能性もあるし、逆に1年でシェア上位に躍り出てくる可能性すらある。
 そういう意味ではx86より遥かに「熱い」世界なのです。

 それでは、3回続きネタもこの辺りで終わりです、はい。

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