HDDってどうよ、という話(後編)。

 取り敢えず、当方のHDDについての「実感」をちょっと書いてみる、続き。
 今回はHDDを長持ちさせるコツと、物置に使うのってどうよ、という話。

 ◇

 Q6:HDDが長持ちするコツは?
 A6:適温適湿適気、強固な固定、良質な電源、連続稼働、適時書換。

 HDDって使い方次第で本当に寿命が変わりますよ。
 ということで、取り敢えず以下5項目を挙げておきます。

 1・適温適湿適気。

 諸説あるが、当方のお薦めは30~35度ぐらい。温度高過ぎは当然駄目だが、流体軸受の流体=オイルは低温だと粘性が高くなるため軸へのストレスが高くなると言われているので。

 #ちなみに出始めの頃の流体軸受は時間経過による劣化が激しく、特に低温では粘性が急激に高くなってスピンアップ出来なくなるという障害が多発した。
  対策としてHDDを余熱して振動を与えてから起動する、というバッドノウハウがあったり。
  最近はここまで酷い話はあまり聞かないが、それでも流体軸受の経年劣化そのものは程度の差こそあれ現在でも不可避とのこと。

 また、湿度が低く、空気がキレイなことも重要。温度変化も少ない方が望ましい。

 あくまでも感覚値なのだが、ホコリっぽい部屋で使っているHDDは早死にし易い気がする。
 逆にホコリが少なく温度変化も少ない真っ当なデータセンタでは故障率が低いような。
 まぁ「ストレージが設置されるのにホコリっぽい場所」というのはご想像の通り一般的にその他の条件も劣悪なので(温度変化が大きい、雨が降ればすぐ高湿になる、床から振動が来る、電源フラフラ等挙げればキリない)、ホントにそれだけが原因かと言われると・・・だが。

 2・強固な固定。

 要するに振動を抑え込むということ。PC筐体に共振してブンブンいっするようなのはもう最悪の例。

 最近のデスクトップ機は防振ゴムを挟んで固定する方法をよく見るが、筐体に共振しないメリットがある一方で、設計がマズくてHDD自体は却って振動し易くなってしまっているという代物もあったりするので、その辺りは注意かな。

 3・良質な電源。

 ノイズやリップル、電圧変動が少ない電力を供給してあげましょう。

 4・連続稼働。

 先に書いた通り、起動停止の時にトラブる可能性が高いので、逆に言うと起動停止させなければトラブる可能性は低いということ。

 5・適時書換。

 これには2つの理由がある。以下の通り。

 理由1・磁気記録は経年劣化するものなので、劣化してエラーが出る前に新しいデータで上書きしましょう。
 理由2・頻繁に読書することでファームウェアがプラッタ記録状態を検査するタイミングを増やし、エラーセクタが出る前に代替させるようにしましょう。

 細かいことは次項で書きます。モロ被りなので。

 ◇

 Q7:HDDを光ディスクの代わりにデータ保存用にするのは?
 A7:はっきり言ってお薦めしない。

 最近HDDをストッカにしている人が増えている気がするが、HDDというのはデータ保存には向かないんですよ、ホントに。
 理由は以下の通り。

 ・HDDプラッタは通常数年程度、ハズレを引くと半年程度しか記録データが保たない。
 ・HDDの軸受は経年劣化する上、劣化すると直接的に物理クラッシュの原因になり得る。

 そもそもテープと比べても部品構成的にデータ保存向けではない上に、設計でもそんな用途は想定していないんですわ。
 それでもどうしてもHDDをストッカにするなら、以下のような点に留意して運用すると多少はマシではないかと。

 ・数か月に一度は全セクタのリードチェックを行い、更に暫く通電しておく。

 HDDは磁気記録である以上、記録原理「時間が経てば記録データが弱くなる」ことは避けられない。そしてデータが読み出せなくなればそれはエラーとなる。
 とはいえ通常は一度記録すれば数年程度なら全く問題無く読み出せるので、普通はあまり意識する必要はない。
 だが、希に半年程度で読出エラーになってしまうハズレなHDDがあるのもまた事実で、しかも実際にエラーになってみないとハズレであることが分からないという。

 ♯安かろう悪かろうのデスクトップ機だけなら兎も角、希にエンタープライズ機でもハズレが混ざってきたりするから油断ならない。

 そこで、数か月程度のインターバルでリードチェックをする意味はというと。
 昨今のHDDはリードしながら記録面の状況をチェックしていて、明らかに劣化しているようだと実際にエラーが出る前にセクタ代替したりセクタ上書きしたりしてフォローする仕組みになっているのですわ。
 この仕組みに発動してもらって、データを保全しようという話。
 暫く通電しておくというのは、このデータ保護の仕組みが「アクセスが暫く来ない時に動き出す」というファームウェア実装のHDDに対応する為。

 ♯RAIDでよく動いている冗長性確認のベリファイにはRAIDの論理整合性確保の他にこのデータ保護効果もあるのです。

 勿論この仕組みも完璧ではないので、HDDをデータ倉庫に使うことは本当にお薦めしないのだけど。
 昨今では他に大量のデータを安価&コンパクトに保存する方法も見当たらなかったりすることもあるので、仕方ない面もあるのかな・・・と。

 ◇

 まあ以上うだうだ書きましたが、最後には結局コレの要素が相当大きいです。

 「運」

 今更ソレかよ、と言われるかもしれないが、実感なんだから仕方がない。
 それだけバラツキの大きい製品なんです、HDDって。

 そういうモノとしておつきあいするのが一番大事、だと思います、はい。

 ◇

 最後に、例の会社(BlackBlaze)から新ネタで、機種別のレポートが出てきたので一言。
 かなりアクセス負荷軽い使い方してるんだろなと・・・24時間通電している以外はデスクトップに近い使い方に見える。

 そして各モデル別の故障率でも、当方の感覚と大方ズレてはいないかな、と。
 HGSTはハズレ機種&初期不良を喰らわなければ安定して長持ちするとか、WD Green 3TBは腐ってるとか。
 そして7K2000・7K3000・5K3000のド安定っぷりも数字で証明されてしまいましたと。
 逆に、ST3000DM001なんてもう少し安定していると思ってたのだが、結構壊れているのね。そんな印象無いのだけど・・・。

Share

HDDってどうよ、という話(前編)。

 某社がHDDの故障率がどーたらこーたらというレポートを発表したおかげで、これを話のネタに取り上げている各所で何か妄想繰り広げている人達が居た模様。
 エンタープライズHDDはカネの無駄だとか・・・まぁこういうこと言うのはモノも現場も知らない人間とほぼ相場は決まっているんですが。

 ♯これだけコスト削減圧力が強い中、ホントに無駄だったらエンタープライズHDDなんてとっくに消えてますわな。
  あとあのレポート、入っている情報量が少な過ぎて、正直何の参考にもなりませんて。

 取り敢えず、当方の「実感」をちょっと書いてみる。
 まあ結構な数のHDDを扱っているとはいえ、真面目に統計を取ったワケでもない「実感」なので。取り敢えず世間ではこれを出しておけばいいらしい?

 「意見には個人差があります」

 ということで。
 何か文章でちんたら書くとひたすら読みにくいので、QA方式で。

 ◇

 Q1:エンタープライズHDDは故障しないの?
 A1:がっつり故障します。つかホントもう少し故障率下げられないのかいな?>各社

 Q2:エンタープライズHDDは故障しにくいの?
 A2:ある程度負荷がかかる状況なら明らかに。

 ※当方には違和感があるのだが、最近ではニアラインもエンタープライズの領域に入れてしまうらしいので、以後そういう扱いで。

 本当に負荷が軽い使い方なら、デスクトップHDDとニアラインHDDで大差はないですな。
 だが、ある程度負荷がかかる(アクセス頻度が高い、使用時間が長い)使い方をするなら、エンタープライズ品の方がやはり優位と。

 ♯所詮は選別品でも、その程度の差は出るぐらいに品質のバラつきがあるんですよ。

 但し最近では、この辺りの考え方も変わってきていたりするのも事実ではある。

 一般的に、エンタープライズ品の価格の高さは、保証期間の長さや故障時の対応の手間というモノと引き換えというか釣り合いになって許容されている。
 この理屈が成り立つには、故障した時に交換出来るのは同一のHDDに限るとか、HDD交換の後はRAID再構築等の後処理が必要だとか、色々前提がついているのですよ。

 それでは、この前提が無ければどうなるか。
 故障したらその時一番安いHDDに交換すればいい、後処理は勝手に行われるから何も考えなくてよい、となると、デスクトップHDDが激安な故に故障率が高くとも結局トータルコストでは安くなる可能性がある。
 そして分散冗長化ストレージ等、そういうストレージを実現する仕掛けや仕組みもここ数年で俄然「使える」ようになってきた。

 レポートを発表した某社も結局この「実はデスクトップHDDを使い潰していった方がトータルコストで安い」というセンを狙っていて、今のところそれは上手くいっている、ということでしょう。

 ◇

 Q3:HDDが一番壊れやすいタイミングは?
 A3:スピンダウン・スピンアップ時。

 要するに物理的に大きな負荷がかかるタイミングですよ。

 プラッタという静止物を動かし始めるという慣性の法則に加え、軸受の摩擦もあるので、モータには一番負担がかかる。
 更に今では主流のランプロード方式でもプラッタに激突しないというだけで(注:語弊あり)、ヘッド待避・復帰には相応の負荷がかかる。

 #某社のIntelliParkのデフォ値は正直やり過ぎだと思う。

 あと「電源入れたら故障したので起動しない」という言い方を良く聞くが、結構な確率で「実は前から故障していて、再度電源を入れたからそれが発覚した」というのが正しい。
 メカ系にダメージが来ている場合、動かしている間は何とかギリギリ踏みとどまっていたが、電源を落としたら最後もうどうにもならない、再起動しようがない、なんてことは珍しくないので。

 ◇

 Q4:トラブルの原因で一番多いのは?
 A4:駄目ファーム。

 これはもう圧倒的に、ファームが原因のトラブル。
 一般にはIFとの相性程度で済むのだが、時々「特定のアクセスパターンを繰り返すと挙動が怪しくなる」なんていう超絶駄目ファームウェアすら平気でリリースされることすらあるのがこの業界ですよ。
 更に、ファームウェアのバージョンが変わったところで変更内容なんて公開されていないので、特定の不具合や相性が解消されたと思ったら今度はドライブの「癖」まで変わってしまって慌てる、なんてことも実際あったりする。

 注)デスクトップユースでは「あんまり」問題になりません。
   この項目についてはここの管理人の過去のイロイロな経験の恨み、ではなく感想が・・・。

 ◇

 Q5:最近のHDDカチャカチャうるさいのは何故。
 A5:プラッタ回転数を落として省電力モードに移行出来るよう、ヘッド退避させてるから。

 WDのIntelliParkが有名だが、それより前から2.5’では省電力と衝撃対策の為に実装されていたし、最近ではWDだけでなく他社でも実装されている機能。
 一定時間アクセスが無いとヘッドを退避させている音ですな。
 でも、何故ヘッドを退避させる必要があるのかってのは意外と知られていないらしいので。

 理由はというと、プラッタ回転数を落とすため。
 回転数が落ちればモータに供給する電力は少なくて済むため、省電力になるというワケです。

 但しこんなことをするとヘッドを浮かせるための浮力も不安定になっていまうため、放っておくとヘッドがプラッタに激突してクラッシュしてしまう。
 それでは困るので退避させる、というワケですな。
 同時に耐衝撃性も高くなるワケですが、3.5’ではあくまで副次的な効果なのに対し、2.5’では結構重要なポイントだったりします。

 ◇

 何か長くなってきたのでここで分割。
 お次のネタは「HDDが長持ちするコツは?」と「データ保存用にHDDってどうよ?」という話で。

Share

3プラッタ4TBを最初に出すのはどの会社。

 何かこのところHDD周りに色々ありましたな。

 ・ヘリウム入りHDD、7枚プラッタでついに製品化。
 ・9.5mm厚2.5インチでついに2TBに到達。
 ・TDK&Seagate連合、そしてWDが相次いで熱アシスト記録のデモ。

 いやぁ、何だかこのところ膠着状態というか話のネタの無かったHDD界隈に、降って湧いたこのコンボ。
 やっぱり時期的なタイミングだろうね、色々と。

 個人的にはヘリウムなHDD触ってみたいが、まぁ多分そんなチャンスは無いので。
 取り敢えずは「限定的な顧客に出荷」って言っているが、要するに仲良しな会社のサーパーファームという実環境で初物の稼働テストを始めます、ってことだよねこれ。取り敢えず国内には無い気がする、このブツを受け取るは会社。

 ♯しっかし本当に多プラッタ好きだよねHGSTって。

 あと、TDKとSeagateが組んでるのは元々Samsungに部品供給していた縁でしょうな。
 ・・・もしかして、Seagateの1TBプラッタなデスクトップが割と(記録面品質という意味で)安定しているのはTDK製のヘッドのおかげかしらん。アレ実質的にはSpinPointだしね。

 とまぁしかし、これでここ数年のHDD業界の流れが見えてきましたな。
 ということで、少しまとめてみる。

 ◇

 まず、9.5mm厚な2.5インチ2TBな話から。
 ついに辿り着いてしまいましたよ、従来型垂直磁気記録の限界と言われている(おおよそ)1Tbit/平方インチの次元に。
 およそ750Gb/平方インチな2.5インチ500GBプラッタ、3.5インチ1TBプラッタは2011年に登場して以来、2年でここまで来ましたか。まぁHDD業界にとっちゃ洪水やら業界再編やらで激動もあった2年な気もするが。

 ちなみにこの1Tbit/平方インチ、3.5インチにすると1.33GBプラッタが作れます。コレを3枚束ねると4TB。更にもう1枚乗せて4枚で5TB。
 ということで、2014年中には3.5インチで4枚プラッタ、5TBのHDDが発表されるでしょう。値段は兎も角。

 ♯またHGSTがポテンシャルを発揮して1TBプラッタの5枚重ねで5TB品を先行する可能性は否定出来ないが。

 ◇

 そしてその後はというと。
 取り敢えず、熱アシストを各社が頑張ってるおかげで、最初の製品は2015年中には出そうな感じ。
 最初の製品のターゲットは1.2Tbit/平方インチ程度と思われるので、これは2.5インチで750GBプラッタ、3.5インチで1.5TBプラッタ。
 これを3枚束ねると4.5TB、4枚束ねると6TB。ということで、2015年中には6TBか。

 ・・・何この細かい刻み方。
 いやね、ホンネとしては折角熱アシスト使うなら初代製品から1.5Tbit/平方インチ≒3.5インチで2TBプラッタ、4枚束ねて8TBドライブ、という辺りまで引っ張り上げて欲しいのだけど。
 今の市場寡占状態では、各社共に多分初物でそこまで冒険しないでしょう。データセンタ以外にここまで容量が必要なのかという問題もあるし。

 ♯民生用で一番の容量喰いはHDDレコだと思うが、あれだって今のHDD容量あれば大半の人には十分だと思うのですよ。
  AVマニアはHDDの数揃えれば良いだけ。増えるったって頑張っても2桁乗る程度でしょう。
  ヘタすりゃ6桁なデータセンタとは桁が違う。・・・国内にこの規模は無いと思ったけど。

 ◇

 この熱アシスト、こちらも限界があると言われていて、今のところ8Tb/平方インチ、2.5インチで5TBプラッタ辺り。
 但しこれはあくまでも理論値であって、実際のところは1.5Tでも製品化に向けておったおったしている状況。

 ちなみに現時点での「目処感」はというと、取り敢えず4Tb程度まではまぁ何とかなりそう感あり。
 それ以上となると「・・・」ということで、課題山積状態なのでまぁ各社に頑張って貰うとしか。

 #アイデアはあるが、実際に量産出来る製品にするにはどうしたモンやら、というレベル。

 個人的には、実際の製品としては5TBプラッタ@3.5インチぐらいの所で一度「足踏み」が来るんでないかと。

 ◇

 ・・・しかしね、今までさらっと流してきたけど、こんなノリで記録密度が上がると、実際には中々強烈でっせ。
 理論的には、プラッタ密度が倍になるとデータ転送速度は平方根の1.414倍になる。

 この理論で行くと、3.5インチ1.33TBプラッタ7200rpm 4TBのピーク転送速度は230MB/S、端から端まで全セクタ舐めると6.5時間。
 更に3.5インチ2TBプラッタ7200rpm 8TBののピーク転送速度は280MB/S、端から端まで全セクタ舐めると8時間。
 これが5400rpmになるとピーク転送速度は210MB/S、端から端まで全セクタ舐めると実に11時間。

 まぁ要するに、容量増加に転送速度が追いつかないんですよ。これまぁ原理的に仕方ない・・・のだけど。

 ♯ちなみに750GBプラッタが4枚の3TBなWD Greenも端から端まで全セクタ舐めると8時間。

 現在のPCを「処理速度のバランス」という面から見ると、昔懐かしビルの一室を占有するようなでっかいメインフレームに付いている、オープンリールのデータテープ、あれと同じか、ヘタするとアレよりもバランスが悪い状態だったりするんですな、いや本当に。
 演算速度だけはあの頃から数万倍、下手すりゃ10万倍以上速くなっているのに、ストレージのアクセスタイムが全然縮んでいない。昔はテープの長さも限られていたのでサーチ時間も上限があったが、今ではHDDの密度がどんどん上がる=相対的に記録されているデータ量がどんどん上がる=でも転送速度はそこまで伸びない=サーチにかかる時間がどんどん伸びる。

 ・・・まぁこんなことがあったりするので、大容量HDDを扱うにはOS側も色々工夫しないとマズいんですな。
 Windows 2012から採用された記憶域プールとかReFSなんてのもその辺りですな。
 一方で、コンシューマーではそこまで大容量を要求される場面も少ないだろうし、物理的にも消費電力も小さい方が好ましい筈。

 ということで、熱アシストで再びプラッタ密度がドカンと上がってくると、いよいよコンシューマ向けは2.5インチにシフトしてくるのではないかと。
 IntelはNUCやAIOを推してくるし、PCに限らずコンシューマ機器(例えばTVに内蔵するHDDレコとか)でも2.5インチで2TBも容量があれば大抵困らないし、相対的には値段も下がってくるだろうし。

 注:ここの管理人は2.5’HDDというフォームファクタを世間一般よりだいぶ高く評価しています。

 ・・・まぁ、もしかしたらその前に薄型3.5インチなんてのが流行ったりするかも知れない。
 現在もSeagateやHGSTが1プラッタ品で採用しているが、アレはアレでまだだいぶ余裕があるので、本気になればもう少し薄く出来る筈。そしてプラッタ1枚で2TBと。

 ・・・あれ、何か既視感が。BIGFOOT・・・。

 ◇

 いつものようにとっちらかったエントリーだが、まぁこんな感じで。
 思ったより容量増加への道は厳しそうです、な。

Share

Self Encription Driveの知名度が低過ぎて。

 寂しい思いをしたので、ちょっとボヤいてみる。

 そもそも、Self Encryption Drvieって何じゃいという話。
 一言で言うと、暗号化機能を内蔵したHDD。
 入力されたデータを、暗号化してからプラッタに書き込みます。読むときは復号するのね。
 で、データの暗号化に使うキーは内部に持っています。

 とまぁこれだけじゃ何のメリットがあるか不明だと思いますが。
 ポイントは、このHDDはパスワード(パスフレーズ)を使った認証機能を持っているんですよ。
 初めて使う時にパスワードを登録して、次からはそのパスワードで認証されないと読み書きどころか一切の操作が出来ないので、HDDを勝手に持ち出してデータを盗み出す・・・なんて手法に対抗できるんですな。

 勿論、通常はこのパスワード認証は対応したHBA(ホストバスアダプタ)が自動的に実施するので、ユーザは最初のパスワード登録の時以外は特にSEDの存在を意識する必要はない。
 つまりソフトウェアからは完全透過なので、起動領域であっても普通に暗号化出来るし、OS依存も無く、CPU負荷とかパフォーマンス絡みの問題も発生しないワケなのです。

 ちなみに一部Server用・Workstation用マザーとMobile Workstation(=高いノートPC)ではBIOSが機能を持っていたりして、その場合はオンボードSATAでSEDが使えたりします。
 更に、Windows8/Server 2012からはSEDドライブの管理がWindows上で出来るようになり、BitLockerと統合されてドライブ暗号化を提供していたり・・・これも全然知られてないですけどね。

 ◇

 とはいえ・・・通常殆どの場合で暗号化が必要なのはデータ領域だけで、それならハードウェアに依存しないソフトウェア暗号化ボリュームなんてモノがあるワケだし(その上暗号化によるCPU負荷も最近では事実上問題にならないことが多いし)、ソフトウェアから完全透過というSEDの利点が活きる場面ってのも、実際には結構限られている。

 言わば超絶ニッチではあるのだが、仕組みが登場してそろそろ「こなれてきた」こともあり、今では導入コストも大騒ぎする程ではない(と思う)。そんなに特別なものと身構えずに、必要ならピンポイントで導入していけば良いと思いますよ、個人的にはね。
 ・・・一番の問題はSED対応HDDの入手性だったりするのだが。

 ♯LSI製SAS RAID HBA+暗号化ライセンスに、SeagateのSaviio(2.5)かConstellation ES(3.5)の対応モデルの組み合わせが定番ですな。

 ◇

 で、突然こんなネタを書いたのは、今回、こういう話が聞こえてきたので。

 ・結構アレなデータも入る可能性があるシステムがある。
 ・データ領域は暗号化ボリュームを使うとして、自動マウントの為にシステム領域に暗号化ボリュームの鍵を置かざるを得ない。
 ・鍵がバレるのがイヤなのでシステム領域を含めて全HDDを丸ごと暗号化したい。
 ・でも起動領域はOSから普通のHDDとして見えるようにしたい(でないとメンテが手に負えない)。
 ・ドライブ故障時の回復に出来るだけ手間をかけたくない(でないとやっぱりメンテが手に負えない)。
 ・¥のお高い暗号化対応FCストレージとかは勘弁して。

 ・・・え~っと、すっごいレアケースだとは思うのだが、こういう時こそ超絶ニッチのSEDがハマるワケですよ。
 ところがまぁ、SED自体の知名度がとっても低いせいで・・・以下略、と。

 #つかそこまで求めるなら物理的なセキュリティ管理とか運用面での管理とか、その辺りがきっちり出来ているのが大前提な、念のため。

 ◇

 とはいえ、こういう設計は正直あんまり「スジが良い」とは言えないですな。
 問題の元凶は「システム領域に暗号化ボリュームの鍵を置かざるを得ない」ってトコなので、これさえどうにかなればニッチなSEDなんてモノを選ばなくともどうにでもなるワケで。

 例えば:
 ・そもそも再起動=暗号化ボリュームの再マウントなんてそんなに頻度高い作業ではないので、暗号化キー(=パスフレーズ)をシステム上に持たず、再起動の都度入力する
 ・サーバ内部のUSBコネクタにまともなUSBフラッシュメモリ等を接続し、暗号化キーだけはそこに格納する

 とか。どちらも条件付きながらそこまで悪くはないソリューションだと思うんだけど。
 まぁシステムが求める要件なんてのは千差万別なので、諸事情が寄せ集まった結果こういうことになってしまうのも仕方ないこともあるのだけど、ね。

 ♯「まともな」USBフラッシュメモリなら通電さえしておけばデータ消滅の心配はまず無いですよ。ESXiもUSBフラッシュで供給される時代だし。
  ・・・安物だといつ吹っ飛んでも知らんけど。

Share

「デスクトップHDD」を今買うなら。

 ・・・訊かれたので、書いてみる。
 こういうのは購入者が何を重視するかとかでいくらでも変わってくるので、あくまで参考レベルで。

 ◇取り敢えずというならSeagateのBarracuda。

 当方が仕入れている情報の範囲では、ファームがボロい(=相性が出易い)以外、目立った不具合は無さそうなので。
 よく安売りしているので価格面でも有利。
 保証はRMAが2年。短いと思う場合は東芝を検討対象に、或いはショップの独自保証を追加するとか。

 ちなみに相性トラブルは酷い場合10分程度でSATA IFがハングしてHDDが見えなくなるというもの。
 それでも電源再投入すれば何事もなかったかのように動き出すってのがね。
 最近の新しいファームウェアでは初期の頃よりだいぶマシにはなってきてはいる。
 Intel製ICHだと比較的大人しいようなので特に心配しなくても良いかと。

 ◇Seagateがイヤなら東芝。

 バルクを買ってしまうと保証が無いのでパッケージ版を買うという大前提。
 3年保証が付くがSeagateより2割程度市場価格は高いので、その分の価値を見いだせるかが判断ポイント。 
 こちらはIF相性等も含めて、製品自体に目立った不具合の話は今のところ聞かない。

 但し(HGSTの伝統で)電源がヘタレだと故障し易い点には注意。 
 電源周りについてはSeagateの方が比較的ラフでも大丈夫な印象。
 消費電力や発熱もSeagateよりこちらの方が上。 

◇品質絶対重視ならSeagate Constellation ES.3。

 値段見て笑って下さい状態だが、通常のDesktop HDDの品質基準に飽きたらということで。
 当然、保証も5年と長いが、同一容量のBarracudaの2~4倍の値段です、はい。

 SAMSUNGの血統であるBarracudaと違い、Seagate純血種のエンタープライズ品なので品質のレベルが違う。
 とはいえ個人使用だとごく一部の例外を除いては過剰品質。
 但し、この過剰品質に慣れてしまうと逆に巷の「デスクトップHDD」が「揃いも揃ったヘタレども」にしか見えなくなってしまう点には注意が必要。

 ♯値段が倍以上も違うんだから当たり前なんだが。

 それと騒音や発熱といった意味ではBarracudaの方が有利。
 エンタープライズ品は騒音や発熱といったところにはあんまり気を使ってないのでね。

 ◇

 ・・・今のところこんな感じですか。

 ちなみに確率論の世界なので当然だが、どのメーカの製品を買っても初期不良を含めた故障の可能性はある。
 バックアップは大切ですよ、はい。
 更に悪いことに、「デスクトップHDD」なんて言い方悪いが「安かろう悪かろう」なのが現実、今出回っている製品。
 そのことをお忘れなく。

 ちなみにアキバで一番人気らしいWD Greenに触れていないのは、品質面について判断するベースとなる信頼に足る話が仕入れられていないのと、市場価格的にSeagateと差がないということで。
 Seagateの方が明らかに速度面で有利だし、消費電力や発熱面でもそこまで大差は無い以上、敢えてWD Greenを選ぶ理由は無いかな、と。

 あ~あと、一部局所的に大流行しているWD REDだが、アレは本当に「対応表に乗っているNASで使う」ことを前提にしているので、そうでなければ「ちょっと保証が長いだけの高いHDD」でしかないので、念のため。

 以上、こんな感じですかね、はい。

Share