何故熱アシストだとHDD容量が増やせるの?

 先日SMRをネタにしてしまったので、次は訊かれていないけどHAMRでもネタにしましょうか。
 あ、HAMRというのは熱アシスト記録のことですよ、念のため。
 中々に強引な方法で、逆に言うとこうでもしない限り記録密度は上げられないトコまで来ている、ということです。

 ◇どうして熱アシスト記録だと記録密度が上げられるの?

 前回書いた通り、記録密度を上げる為には強力な磁力で書き込む必要があるワケです。
 そして、その強力な磁力を発生させる為に物理的に大きな書込ヘッドを使う手法がSMR、と。
 でも、もし強力な磁力がどうしても使えなかったらどうする?

 ここでふと思い出していただきたいのが、小学校の頃の理科の実験。
 「磁気を持つ物をアルコールランプで熱すると磁気が消えてしまう」というネタ、覚えていますか。

 ♯普通に磁石を熱するとお高いので、磁石にしばらくくっつけておいて磁気を帯びた釘を使う、といったパターンだった気がする。

 この実験の通り、一般的な磁石は、熱せられると磁気の保持力が弱くなるワケです。
 そして、保持力が弱いということは逆に、弱い磁気の影響も受けてしまうということでもある。

 一方、磁気記録のプラッタの表面は言ってみれば磁石です。つまり、

 書込む瞬間だけプラッタを熱々に出来れば、弱い磁力でもきちんと書き込めるんじゃね

 という発想です。これが熱アシスト記録の原理。

 ♯研究段階ではこの熱源としてレーザーと電波(電子レンジの原理ね)が検討されたが、商品化されるのはレーザーだけになる模様。

 とはいえ実際には瞬間的に激小スポットの温度を上げ、更に瞬間的に冷まさなくてはいけないため、 実装となると大変なことに。
 のんびり熱してたら記録速度が上げられないし、さっさと冷やさないと折角記録した磁気が熱で飛んでしまうので。

 更に、一般的な素材は温度の上下で伸び縮みするのだから、そんなに加熱と冷却を繰り返していたら記録面が歪んだり割れたりする可能性も。
 そのような、プラッタ面にストレスがかかりまくるような状態で、果たしてどこまで信頼性や安定性が実現出来るのか。
 それが商品化のポイントですな。

 ◇

 ということで、当方は割と簡単に「次は熱アシストだ」とか言っていますが、実際にはそう簡単なシロモノではないんですな。
 とはいえSMRでない従来型のトラックパターンで密度をこれ以上上げようとすると、本当にコレぐらいしか直近使えそうな技術は無いので。
 今のところ商品化ターゲットは2016~2017年という話なので、以前のロードマップより確実に遅れてきております。
 さて、本当に商品になるのは何時でしょうかね。

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