敢えて今SSDの欠点を見直してみる、という話。(1) 寿命

 さて、コンシューマ市場では既に確たる地位を築いたと言って良い、SSD。
 とはいえ、最近のコンシューマ向けSSDの宣伝文句なんかを見ていると、正直ゲンナリすることも。
 製品の利点しか訴えないのは広告としては当然なのかも知れないが・・・にしてもねぇ。

 #エンタープライズ向製品を実際に扱ったりしている身分としてはね。

 ということで、エンタープライズでSSDを活用しようとした際ブチ当たる「SSDの欠点」についてちょっと書いてみることに。
 コンシューマ向けではこの辺りは「無かったこと」になっているが、別に問題が解消されているワケではないですよ、念のため。

 ♯所詮コンシューマ向け製品の「信頼性」なんてその程度、というだけの話です、はい。

 主要なネタは以下の3つ。

 ・寿命
 ・データ信頼性
 ・性能の不確実性

 SSDには利点も多いからこそ現在でも勢力拡大の一途を辿っているワケなのだが、別に完璧なストレージというワケでもなんでもなく。
 欠点も押さえつつ正しく活用した方が幸せだと思いますよ、という話なんですわ、要するに。

 ♯念のため、別にSSDが嫌いなワケではないですよ・・・というか当方は自分では「かなり好き」だと思っていますが。
  但し一部の連中のSSD「信仰」には辟易しています、いやホント。

 ◇

 ということで、第一弾はド定番の「寿命」から。

 「SSDは寿命がある消耗品だということをお忘れ無く」

 ということです、はい。

 現在のエンタープライズSSD導入は多くの場合「使い潰すことが前提」ですよ、念のため。
 まぁ要するに「設計寿命に達したら交換する」ということで、普通は製品保証書込容量ですな。

 一方現在のコンシューマ向けSSDでは「寿命を気にする必要はない」ということが半ば常識になってます。
 これはあくまでも「普通のコンシューマはあんまり書き込まない」ということを前提(メーカにより20GB/日または40GB/日)としているから成り立っている論法でありまして。
 「普通でないコンシューマ」であるヲタやクリエイタの類が、SSDのメリットを最大限活かす使い方をしようものなら、そんな前提を突破するのは特段難しいことではない、ということは知っておいて良いと思いまっせ。

 ところが一方で、実際にはメーカー規定値を超える書込をしてもSSDって意外と壊れないんですよ。
 この「取り敢えず動いているからいいや」というのはエンタープライズでは許されなくともコンシューマでは大抵OKなのよね。
 これにもちゃんと理由がありますよ。

 ・フラッシュメモリそのものにかかる負荷は、アクセスパターンが違うと同一の書込量でも全然違う
 ・一般的なMLCフラッシュメモリの「実質的な」寿命はカタログ値より余裕がある

 一般的には、コンシューマで書込容量が多い場合、大容量のデータを一度にまとめて書き込むような使い方が多い。この使い方は意外とフラッシュメモリへの負荷が低かったり。
 逆に細切れに頻度高くデータを書き込むような使い方では、フラッシュメモリへの負荷がかなり高くなってしまう。即ちフラッシュメモリがどんどん消耗するので、コントローラがどれだけ頑張って負荷を軽減出来るかが各メーカの腕の見せ所となるワケですな。

 とはいえ、この「意外と壊れない」幸せな状況も崩壊目前なんですな、実は。
 というのも、フラッシュメモリはこれからも「値段が下がる代償として書換回数も激減する」というのが既定路線なので、そうなるとフラッシュメモリ単位での余裕がどうのなんて話は無くなってしまう。
 後はSSDメーカがどれだけ余裕を「仕込む」か、という話になってしまうのだが、価格競争になったらそんなモノも無くなりますよね、当然。

 というワケで、そう遠くないうちにSSDの書込寿命はカタログ値を保証するのが精一杯、という時代が来るんでないかと思っています、個人的にはね。

 #3D構造は上手くいけば現在の寿命レベルのまま容量を増やせる技術なのだが、はてさてどうなることやら。
  今丁度「2D微細化もう無理、3D行くわ」陣営と「2D微細化はあともう少しだけ行ける、3Dはそれから」陣営に二分されている状況だが、どちらにしても近い将来「3Dしかない」時代が来るので、そうなった時にフラッシュの信頼性ってのはどの程度が「標準」になっているんだかね。

 ◇

 さて、次は・・・と書いてみたら何か当初予定より長くなってしまったので、章分割。
 次の「データ信頼性」ネタは次記事で。

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SSD界隈も賑やかになってきたので。

 前回のHDDネタに続いて、SSD界隈でも何だかワサワサ動きが出てきたので、ちょっとチェックしてみる。

 1◇SandForce SF3700登場。

 何故か誰も触れないが、これは間違いなくSATA-Expressをも睨んだコントローラ。
 PCI-Express 3.0対応ではないのはコストと想定される用途からの見合いだろうが、それでもPCIe 2Xで900MB/S近く出せるというのは強烈ですよ。
 いよいよSSDの本命、PCIe直結「標準」製品が見えてきましたな。

 そして、基板型の方でも、高速SSDが一気に身近になる可能性が。
 というのは、PCI-Expressデバイスならば、コストのかかるRAIDコントローラを使用しなくとも、PCIeスイッチを使ってパラレルに繋ぐだけで簡単に速度は稼げるので。

 例えば、このチップを4枚用意し、PCIe SWでx16をx4の4系統にバラして接続、BIOSなりOSなりでストライプすると合計7.2GB/S。
 こんなトンでもない代物も、技術的には今すぐにでも作れるし、構成部品の値段もそこまで突き抜けたモノにはならない。

 ・・・こんな爆速ストレージが安価に入手できるようになったら、革命と言っても大げさでないぐらい色々変わってくると思うな、うん。

 2◇WD Black 2登場。

 あちこちでキワモノ扱いされているが、個人的にはこの形態こそが「過渡期の本命」だと思っていたり。
 システム用のSSDと物置用のHDDがひとまとまり、便利でないですか。

 まぁこの製品だともう少しSSD容量が欲しいとか、速度イマイチだとか、値段高過ぎだとか、ツッコミ所は色々あるけれど。
 コンセプトは合ってると思うな、うん。

 ♯この内容ならBlackよりはBlueだよね。

 しっかしOSからの見え方が特殊ですな。JBODでSSDとHDDを繋いでいるのかコレ。
 素直にPMPかましても良かった気がするのだが、内蔵IFだとPMPはハードル高いって判断かね。
 Intelチップセットですら最近のなら対応してはいるが、古いノートPCの入替需要狙うならこの形が良いと。

 ・・・にしても、やっぱり値段が一番ネックだよこれ。
 初物価格でもなんでもちょっと盛り過ぎ。この価格ならSSD容量は倍は欲しいよね。

3◇OCZ破産。

 Link_A_MediaはSK Hynixに、SandForceはLSIに、SiliconSystemsはWDに、sTecはHGSTに。
 怒涛のSSDコントローラメーカ買収劇に自らも参加し、Indilinxを傘下に収めていたOCZが破産というニュースが。

 商売上の失敗の理由は自社ブランドSSDを無理して作っていたことの模様。Flashチップ市場はずっと荒模様だし、SSD市場は既に激戦だし、大した規模もないのでスケールメリット等も出せず、市場に揉まれて撃沈ということらしい。
 ・・・まぁOCZって商売下手だったもんね(ぉぃ。

 にしても、東芝はIndilinxにそんなに興味あったのか。
 Marvell製コントローラ積んでる既存製品も評判悪くないと思うのだが、Samsungみたいに完全自前生産目指すってことだよね、きっと。

 ◇

 とまぁ、こんな話が出てきましたが。
 今年のストレージ界隈の話題は前回のHDDネタ、今回のSSDネタ、合わせてこれぐらいで打ち止め、かな。

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SSDは消耗品だから、寿命ぐらいチェックしておこう、という話。

 HDDの話ばかりしているこのサイト。
 世間の「PC」ではSSDが今や常識と化しているワケですが、それ以外では正直まだまだというとこですね。
 とはいえ、ブレイクの兆しも既に見えているのですが。

 ということで、個人的にちょっと気になって調べてみたネタを書いてみます。
 それがタイトル通りSSDの「寿命」の話。

 エンタープライズに限らず、個人用途でもキャッシュとか仮想マシン置場なんかの使い方を想定すると考えないといけないのがこの「寿命」。
 世間では「気にしなくて良いです」とかいうことになっているらしいが、それはあくまで「普通の」PC使いをしている場面の話。
 というワケで、世間で売られているSSDの保証書込容量(TBW)について調べてみた。

 ◇

 不明グループ : Plextor M5P、Plextor M5S。

 世間ではやたら持て囃されているが個人的には全く食指が動かないPlextor印Lite-On製SSD。
 何とびっくり、TBWを公表していません。
 しかもFlashチップ変更どころかコントローラまで変えても型番変えない、事前アナウンスすらしない。一体何を信用しろと?
 部品構成的には初期型と比べて後記型ではかなりTBW減っている筈なんだが、そもそも非公表なら関係ない、か。

 ◇

 20TBグループ : Intel 330、Samsung 840。

 240GBでは90回の書込保証。20GB/日で3年。

 耐久性保証という意味では最低グループのこの辺り、とはいえIntelは明記されているのだけマシか。
 Samsungについてはカタログ等には記載されていないが、各国語のインタビュー記事等で揃ってこの数字が出てくるため採用。

 この辺りは本当に「普通の」PCの使い方をする層向けの数字だと思われる。
 とはいえPCヲタの手元で酷使されるPCなんて圧倒的に少数派だし、世間ではこんなモンなのかも。

 ◇

 36TBグループ : Intel 520、Intel 320、Samsung 840Pro、OCZ Vector。

 240GBでは150回の書込保証。20GB/日で5年。

 正直寂しい数字だと思うが、デスクトップ使用ならこの程度で十分ということなんでしょう、きっと。
 何の根拠もないけれどIntelが使っている数字だから他社も追随した、ような気もする。

 ◇

 72TBグループ : Crucial m4(64GB以外)、Crucial M500、Samsung 840Pro(注意点あり)。

 240GBでは300回の書込保証。40GB/日で5年。

 「注意点あり」というのは、Samsungは「予備領域を多く再設定してデータ保持期間を3ヶ月とした場合に限り」この数字で保証あり。512GB→480GBのように容量は6.7パーセント減、別の言い方すると1/16。
 そして最近だと価格の安さが取り柄になってしまったm4(64GBモデルだけは36TB)と、大容量960GBモデルが結構アリな価格で登場予定なのが注目されているM500を擁するCrucial(Micron)はこのグループ。チップの容量を考えるとM500からは予備領域を広く取ることにしたのかね。
 にしても、SamsungもMicronも自社製Flash。チップメーカ故の自信・・・要するに選別時にイイ物は自社製品用に取っておくってことだろう、きっと(笑。

 全く個人的な感覚では、この辺りぐらいからまぁアリかなという気がしてくる。
 とはいえ容量別では120GB→600回、480GB→150回、960GB→75回となり、480GBとか960GBの大容量になってくるとまたどうにも微妙な数字に。
 現時点では大容量が欲しければストライプで容量稼ぎと書込分散するのが正解なのかも。

 ◇

 3.6PBグループ : Intel DC S3700@200GB。

 シリーズ全モデルで18000回の書込保証。1日10回書き込んで5年。

 800GBモデルでは実に14.4PBも書き込めることになる、伊達にDCと名乗っちゃいない、桁が違う。
 とはいえエンタープライズではこれぐらいの数字が出て初めて使用が検討できる、みたいな。

 ちなみに200GBモデルのお値段は↑のSamsung 840Pro 240GBと比べて3倍弱。それで60倍の寿命が手に入るのだから、十分安いと言える。絶対金額は横に置いておくとして。
 それと、同じFlashを搭載したIntel 910 PCI-SSDとは同等の書込保証値。あちらのカタログ値は800GBで14PB。

 ♯にしてもMLCでこれだけの書込回数保証ってのは凄ぇの一言。
  これがIntel Fabの底力、ですか・・・。

 あぁもう一つ、ちょっと訊かれたことがあるのでメモ追加。
 ベンチ万歳のコンシューマ用途で使うとコレあんまり速くないんで、念のため。
 簡単に言ってしまうとEnterprise用途、IO Queの深いHeavy Load運用に最適化されいるので。DBとかVM詰込とかで、IO無限地獄でこそ力を発揮するタイプ。

 ◇

 個人的には、HDDよりSSDの方がエンタープライズ品のメリットが明快な分、高くても納得して買い易い代物だと思うのだけど、どうでしょうかね。
 にしてもIntel DC S3700いいなぁ・・・。

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