USB3.0デビューを機会に、あらためてeSATAを考える。(その1)

 このblogでも何度もeSATAの話は出てますが、当方、割と少数派のeSATA多用人間です。

 実際、SiliconImageのSATA I/Fを使っていると、結構便利です。
 HotPlugで自動認識だし、速度もそこそこ。
 安定度もナカナカのモノです。

 ところ、が。世間ではeSATAの評判がかな~り宜しくない。
 昨今の殆どのマザーボードにはeSATA端子が付いているのに、ですよ。
 ということで、USB3.0のデビューを祝して、eSATAの現状を少し考えてみることにします、はい。

 ちなみに、USB3.0でeSATAが消える、なんてことはあり得ないです。
 そもそもモノの性格が違うし。
 但し、今後よっぽど上手くしない限り、大抵の人には気にもされない、いまいちパッとしないコネクタという現状以上の地位は得られないのもまた確実ですな。

 まず、eSATAが何故流行らなかったかということをいくつか確認し、その後、もし本気で流行らせたいなら今後どうすべきか考える、という流れにしましょうか。

 ・・・誰ですか、誰も本気で流行らせたいと思っていないなんて、ホントのこと言っているのは。

 ◇

 ということで、まず現状について。
 eSATAが流行っていない理由は、突き詰めれば以下に集約されると個人的には思っています。

 現実に出回っている製品の殆どがショボい。

 ・・・そうなんですよ。
 ショボくないものもあるのですが、全体の中では少数派。
 しかもショボいものは値段が安く(値段が安いからショボいという話もある)、初心者が手を出してしまい易い。
 更にタチの悪いことに、現状マザーボードの殆どに標準装備されているeSATAの殆どは、このショボいeSATAだったりする。
 結果としてeSATAに悪い印象を持ち、二度と使う気は起こらず・・・という負の方向へ。

 じゃあどんな風にショボいかというと、以下の通り。

 1.不安定。
 2.不便。
 3.遅い。

 ・・・ダメなI/Fの3要件が全て揃っているこの恐怖。何だコレ。
 まあもう少し詳しく見てみましょうか。

 ◆

 その1、不安定。

 速度が安定しない程度ならまだ兎も角、酷い場合ではHDDを認識したりしなかったりという状況に陥る。これが「不安定」。

 これの原因、殆どがチップです。具体的にはIntel/AMDの内蔵SATA I/Fから引っ張り出されるeSATA、JMicronの外付けチップによるeSATA。どちらも正直問題だらけ。

 #あとは割合として少ないけどケーブルの問題。長過ぎとか、ノイズ拾う安物とか。

 まず、Intel・AMD・JMicron、全て揃いも揃って現状ではAHCIドライバの出来がボロボロという現実があることを、きちっと意識して下さいな。
 しかもこの辺りの問題、内蔵HDDのように接続しっぱなしでは見えてこない、というモノが少なくなかったりするので、タチが悪いというか。

 更に悪いことに、Intel・AMDのチップ内蔵SATAをeSATAとして引き出しているモノの大半は、もの凄くノイズに弱かったりします、えぇ。
 このため、規格以内のケーブルを使っても、電源の状態や設置の状態によっては接続が安定しなくなったり、エラーが出まくったりという症状が出る。

 ・・・これじゃあ、ねぇ。

 ちなみに、対策。
 安定している製品を使いましょう。

 現状一番安定しているのは、SiliconImageのチップを採用した製品です。
 IO DATA、Buffalo、Ratoc、Logitecのパッケージ品はコレですな。

 但しこれらの製品、搭載しているSiliconImageのチップ単価自体が高いため、廉価なJMicronチップ搭載製品より値段が高いんですわ。
 ヘタしたら倍ぐらいの値段差もあるのだ、が。
 お陰で初心者が安い方をうっかり買ってしまいがちなのだ、が。

 立ち止まって考えてみれば分かること。
 何故、大手メーカーはわざわざ高いチップを採用した製品を売っているのか。
 廉価なチップを積めば価格が下げられて競争上有利な筈なのに、何故そうしないか。

 はい、答え。
 廉価品はトラブルが多過ぎて、評判低下とサポート電話殺到で死ぬハメに陥ることが目に見えているから。

 ・・・何だかなぁだが、これが事実。

 ◆

 2.不便。

 話進めて次へ。eSATAが不便というネタ。

 この不便の原因、大きく分けて4種類あると思っています。
 ところが、そのうち3種類は誤解に基づくものという悲しさ。
 取り敢えず、見てみましょうか。

 ☆A. 接続しただけでは認識されない。電源切らずに取外しも出来ない。

 そののeSATA I/Fの実装かドライバがショボいんです。
 断じてeSATA自体の責任ではありません。

 SiliconImageチップの環境ではほぼ確実に、ケーブル繋げば自動的にドライブが認識され、ドライバが組み込まれて使用可能になります。
 更に、HotSwap!というツールを使えば取外しも簡単。

 ♯レジストリに手を入れればいわゆる「ハードウェアの安全な取り外し」を使った取外しも出来ます。

 ところが、SI社以外の製品でこの「活線接続」「活線切放」が両方まともに動くものは少数派という、これが悲しい現実。

 実際には、ハードウェアレベルでサポートされてないということは少ないんですよ。
 問題は、ドライバとベンダの姿勢。

 具体的には、必要なドライバがベンダから供給されていなかったり(チップメーカからは公開されていたり)、そもそもチップメーカから提供されるドライバ自体が腐っててまともに動かなかったり、挙句にはベンダの方でわざわざ機能を殺していたり。

 こんなでは、ねぇ。そりゃまあ、不便で仕方ない。

 ☆B.ケーブルが太くて硬い。

 誤解です。
 そんなに太くなくて柔らかい、取り回しに苦労しないケーブルもあります。

 だというのに、何故かあまり見かけない。
 その代わり、太くて硬いケーブルならあちこちで見かけるんだな、これが。

 何でやねん。

 ☆C.コネクタが緩くて外れ易い。

 誤解です。
 正直緩いコネクタが多いのだが、そうでもないコネクタもあるにはあるので。

 ・・・あるにはある、というレベルだというのが、何ともだが。
 兎に角、この引っかかりもロックも無いコネクタ形状は、eSATA規格を決めた時の最悪の失敗事項だと個人的には思っていたり。

 まぁ最近だとHDMIとかDisplayPortとか、こういう緩いコネクタが流行っているらしいのだが。
 eSATAは曲がりなりにもデータ転送用の規格なので、カチッと言うロックが欲しかった。

 ☆D.電源が取れない。

 設計思想上、当初からそんな発想出なかったのでしょうが。
 必ず別に電源接続が必要というのは、確かに不便かも知れない。

 ◆

 3.遅い。

 最後にトドメというか。
 折角規格自体は高速なのに、思った程速度が出ないということ。

 これ、複合原因なのだが、取り敢えず理由を以下に列挙してみますか。

 ☆A.安定度では抜群のSiliconImageチップだが、速度は遅い。

 事実。
 最近の高速な3.5インチHDDでは、転送待ちが発生します。
 South Bridgeが搭載しているSATAと比べると、明らかに遅いという場合が殆ど。

 ☆B.AHCIのドライバが腐ってる

 SI社チップ以外でeSATAを活用するには必須のAHCIドライバだが、この雑記の前方にも書いたように、このドライバの出来が「とても残念」な製品が実際存在するワケで。

 そういう製品でAHCIドライバを組み込むと、ベンチマーク値以上に体感がガクッと遅くなったり、操作に引っかかりを感じるようになったりすることすらあったり。
 兎に角、駄目ドライバのせいで速度が出ないという話は珍しくない、これが現実。

 ☆C.IntelのPCIeが腐ってる

 IntelのPCIe対応の初期品、兎に角PCIeの出来が悪く。
 このバスに接続してしまったインターフェイスは兎に角速度が出ない、というかなりの爆弾を抱えているものが多数出回りました、えぇ。

 このチップセットにeSATA対応のインターフェイス類を接続すると、お約束に漏れず本来のインターフェイスの性能が発揮出来ないことに。
 特に、元々速度の出ないSiliconImageチップでは悲惨なもので、900系モバイルチップセットの一部ではUSB2.0を下回る実効性能しか出なくなる、なんて事態まで頻発。

 ・・・これでは、ねぇ。

 ◆

 以上、三重苦の紹介でした、えぇ。
 これだけ色々あれば流行らないのも道理というか。

 逆に言うと、全て逆にすれば流行る可能性もゼロではないかも知れないということ。
 ということで、続きは次回へ。

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