さて、NDA期間も満了(って言うのかね)したので、前回・前々回で後回しにした、今回の勉強会の一番のネタについて書いておきましょうか。
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ところで、OMEGA DRIVERって覚えている人どれだけ居ますかね?
ATIがまだRageシリーズで頑張っていた頃、Windows未だ98SEとかだった頃、有志が配布していた改造(パッチ当て)ドライバ。
互換性向上・解像度追加・画質向上等の効能があり、ATIだけでなくnVIDIA、3dfxやS3用のモノもあったんですな。
#設定ファイルで行けるものについてはそちらの書き換え、ドライバが持っている隠しパラメータについてはバイナリパッチで変更していた筈。
まぁこの頃はドライバの出来が現在とは雲泥の差で、環境によるトラブルも多かったし、地雷バージョンも普通にリリースされたりしていたんですな。
そのため、公式ドライバで問題が発生した際の回避手段として、或いは最初っから公式ドライバの代替として、濃い人の間では結構有名だったと思われ。
#今でもggればWebページとかが引っかかる筈。
さて、あの頃から10年経って。
あの頃はAMDがATIを買収するなんて思いもしなかった。そして、まさか公式ドライバが・・・名乗るなんて。
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というワケで、セッションその2。
登壇したのはTerry Makedon氏。
・・・えっと、こんな大物が出てくるなら事前にアナウンスしてよ>AMD。。
通称「CatalystMaker」ことATI時代からの生え抜き、RadeonのSoftware(ドライバとユーティリティ)を作り続けている大御所ですよ。びっくり。
#そしてノリのいい人でした。英語も聞き易い発音で助かったし。
更に、説明の箇所によってはAdam Kozak氏に交代しつつ、セッションは進められる形に。
・・・この人もさらっと出てきて特に何も説明も無かったのだが、AMD globalのSenior Product Marketing Managerということで、簡単に言ってしまえばAMD営業職の世界トップグループに居る人。この名前もggれば英語の記事やら動画がわんさと出てきますよ。
さてこんな大物が出てきて何を話すのかいなと思いきや。
「AMDはグラフィックプロダクトではなくソリューションを提供する。ソリューションが提供されるからこそユーザーは製品に満足してくれる」
「そしてのソリューションにはソフトウェアが非常に重要であり、Catalystは2002年からソリューションを提供し続けてきた」
「今年、新しいバージョンとしてCatalyst OMEGAを発表する」
ということで、本日の目玉はこの新バージョンの発表でした。
にしても、「OMEGA」の名前を公式ドライバが使う時代が来るとはね。
それと、簡単に言ってしまえば「ドライバのバージョンアップ」で終わってしまうことをこれだけ宣伝するということは、AMDはこれを「反転のきっかけ」にしたいということなんでしょうな。何しろ一時期NVIDIAを押しまくっていたのに、直近ではまたNVIDIAにかなり押し返されてシェアを落としたという調査も出ているし。
さて、ではその「OMEGA」の進化点は何かというと、要するに以下の3つだそうな。
・多数の新機能
・パフォーマンス改善
・多数のバグ修正
まぁ、総花的な話はそこらに転がっていると思うので、以下では自分的に気になった点について、この流れで少し書いてみましょうか。
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1.多数の新機能
全体の傾向としてのキーワードは「高画質化」かな、と。
そして3D描画ではなく映像再生支援絡みの内容が多いのも、伝統的にメディア系に強いRadeonの立ち位置を示しているってことでしょうな。
♯ブラウン管にアナログ接続が常識だった頃にはATIの発色の良さは定評があって、メディアクリエイション系ではATIが指名買いされていたし、AppleもずっとATIを使っていたのよね・・・って年寄ネタ多いなこのエントリ。
ということで、例のFluid Motion Videoの他にも、ハードウェア再生支援機能の拡張、ブレ補正、画像圧縮ノイズの軽減機能、そしてここからは高性能単品GPU限定ながら4K対応の画像補完、その逆にsoftwareには実画面以上の解像度情報を渡しつつ画面では縮小して高画質化やマップ全体表示を行う「Virtual Super Resolution」等々の説明が。
・・・えっと、つまりますますAPUがHTPCに最適になっていきますと。
そんな中で個人的に一番大きいトピックだったと思うのは、「FreeSync」正式対応の件かと。
発表されてからぼちぼち1年、初登場時には「いろんなデバイスですぐに使えるようになる」的な話が各種Webに出ていた気がするも、続報無し。
その後、VESA AdaptiveSyncとして規格化されたのが確か5月。その時も「もうすぐ対応デバイスが出ます」てきな話があった気がするが、またその後も音沙汰なし。
黙殺というか総スルーされたんかコレは・・・なんて思ったことも無かったといえば嘘になる状況で。
それが漸く、やっと、正式に実装されたんですな。
対応ディスプレイ第一弾はSAMSUNGの4Kで、この後のSAMSUMGの4Kは全てFreeSync対応になるし、その後も別メーカが続いていくとのこと。
ということで、発表から1年、漸く店頭に実物が来るようです、はい。
♯この他ディスプレイ関係だと5Kモニタ対応とか、Eyefinityの拡張とかも。
つか24画面まで管理出来ます、といったところで、純粋なデモ以外で24画面なんてどっかで使っているのかね。
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2.パフォーマンス改善
よく「ドライバの熟成」とか言われているアレのことですな。
ハードウェアに一切手を入れず、ドライバ側の最適化だけでパフォーマンスが改善するというのだから、誰も損しないし純粋に良いことでしょう。
今回、汎用ベンチマークの一発ではなく複数のゲームの実タイトルベースで具体的なfps数字を出してきているのは、AMDがゲームの本気ですというアピールも兼ねているんでしょうな。
にしても、タイトルによっては20%以上もfpsが改善されているとは、頑張って改善しましたというのが正しいのか、今までがちょっと酷過ぎましたというべきなのか迷うところではある。
#にしても「メモリの使い方を工夫して」って台詞が入っていたのは、GPUにとってメモリ帯域がそんなにボトルネックになっているって解釈で正しいのかしらん・・・折角CatalystMakerが来ていたのにこれ訊きそびれたよ。
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3.多数のバグ修正
こう言ってはナンだが「品質」という言葉がAMD側から出てくることに安堵したというか。
自動テストのケース数を増やしたり、有名サイトで「トラブル事例大募集」して上位から潰していったり(Top10は全てFIX出来たそうな)して、兎に角品質向上に向けて頑張っていますよ、というお話。
いやね、昔のCatalystの酷さを知っている人間としては「だいぶ良くなったよねぇ」とかいう感覚も無くもないのだが、やはりまだまだ「並」であって「品質高い」というレベルには達していないと思うので、改善を頑張って貰うしか。
♯前述したTop10も結構致命的というか当たったらキツいものばっかりに見えるのよね。
あと、AMDとしてエンドユーザが直接使えるバグ報告フォームを準備したとのことだが、現時点では英語版のみとのこと。日本人は兎に角英語がアレなので、鋭意準備中の日本語版が早急にローンチされることを期待しておきます、はい。
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この後はQAコーナー。この時間がある意味一番このイベントのハイライトといいますか。
そしてまた例によって遠慮ない発言が飛び出すワケで・・・まぁ会場内で一二を争う無遠慮なのが当方ではあるのは間違いないのだが(ぉぃ。
Q・G-SYNCに対するFreeSyncのメリットは?
A・追加ハードウェアが不要で低価格、VESA標準規格、DisplayPort以外でも技術的には対応可、広いリフレッシュレート可変幅
まぁこの辺りは実物が出てこないと、消費者としては何とも言えないよね。
でもNVIDIA製の追加ハードが不要でVESA標準規格である以上、FreeSync対応にしたところで製造コストという面では従来とほぼ差が無い筈なので、あとはディプレイメーカーのご機嫌をAMDが取れるかでしょう。
♯何ともアレだが、IntelがVESA標準リフレッシュレート可変技術を採用したらその時点でFreeSyncの勝利確定でしょうな。
いくらIntelでも後追い採用ならG-SYNCよりVESA標準を使うだろうし、今更独自の作ったりはしないだろうし、どんな名前が付こうが要するに実体はFreeSyncと同じものになるんでないかね。
Q・FreeSyncのNote PC対応はどうなったの?
A・現在のところデスクトップで対応を拡大することが優先になっている
Q・FreeSync対応製品がちっとも出てこないんだけど?
A・これから多数出てくる筈なので期待してくれ、SAMSUNGの後もある
Q・Catalyst UninstallerがWebから消えちゃって不便なんだけど?
A・OMEGAではUninstallerも改善している。Webサイト再構築中で不便なところがあるのは順次直していて、必要なツールは提供する
Q・直近でNVIDIAに結構負けてるんだけどコレの他にも何か方策無いの?
A・自分はソフトウェアでRadeonの商品力を高めるのが仕事、販売戦略はセールスに訊いてくれ(by CatalystMaker)
(方策は)いっぱいあるよ~(by 森本氏)
最後の失礼極まりない質問したのは当方です。
でその言葉、ホントにホントよね?>森本氏 (益々もって失礼)
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以上、勉強会のレポートはここまで。個人的には十分楽しめましたよ。
次のエントリでは「豪華なお土産」を組み立てます。