いやはや、何やってるのさ。

 さて今回のネタはMSの突然の暴挙から。
 よりにもよって、OneDriveの容量を「減らしますよ」と来たもんだ。

 このことが最初に発表されたOneDrive blogのコメント欄は見事に炎上したが、まぁソレが普通でしょうと。
 取り敢えず、今回の件でMSが得たもの

 1・ストレージの少しの空き容量
 2・Microsoftはユーザに不便や出費を強いるサービス変更を簡単に行うという実績
 3・Microsoftの製品に対する「漠然とした」不信感
 4・現在無料アップデート中のWindows10も突然サブスクリプションに強制移行するのではないかという「漠然とした」疑い

 自分の感覚ではコレどう考えたって割の合う話ではないと思うのだが、本当にMSは割が合うと思ってやっていたのだろうか。

 ◇

 まぁ既に色々なことがあちこちで言われているので、ここでは極めて冷静に分析してみましょうか。
 そうすると、こういう結論になるかと。

 「MicrosoftはOneDriveを魅力的な商品とする意思が無いことを明言した」

 Office365の1TBストレージセットはGoogleと見比べた際に見劣りしない為だけに付けているという解釈が十分成り立つ。
 有料プランに関してはもう単純に、「買ってくれるな」と言わんばかりの高値付。
 感情論を全部拭い去っても、スペックを見比べただけで明らかに見劣りする以上、OneDriveを選ぶ理由が見当たらないんですわね。

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 とはいえ、実際には人間の行動原理に感情が入らないなんてことはないワケですよ。
 そうすると、最初に書いたような実績を基に「漫然とした」不信感がと疑いを持ってしまった以上、今後のMicrosoft製品の個人への売上には少なくない影響があると思うのだが。

 ちなみに他社はというと、有名処は基本的にサービスそのものからの撤退以外でユーザーベネフィットのデグレードはやっていない。
 もちっと日本語分を多めにするならば「既得権益」を削っていない、とも言える。
 そうしてユーザーに「取り敢えずはまぁ使い続けられるのかなぁ」という「漠然とした」期待を持たせるワケですよ。

 勿論「漠然とした」というレベルであって、クラウドサービスなんてその程度のものなのだが、その「漫然とした」期待が無ければそもそもサービスを使おうなんて気にもならないし、増してや課金してなんて発想なんて出てこない。
 そして実際使ってもらうことで「実績」が出来て「信頼感」が生まれ、それが延々積み重なってやがて「信頼」となり、ロイヤリティの高い(継続使用してくれる、高額な商品を買ってくれる)顧客を生み出す大切な要素となる。

 そういう意味でもこの「漫然とした」期待を持ってもらうことは極めて重要なワケですよ、これはもうビジネスに限らずあらゆる場面で。
 この基本的なステップの最初にある「漠然とした」期待をMSはさっくり裏切ってしまったワケですわ。
 それって最悪の選択でないの?と。

 ◇

 しかもこの「既得権益を削った」相手が、圧倒的多数の無料ユーザだってのはもう。
 母数が多ければ確率論の世界で声が大きい(中にはクレーマーだって・・・)連中も少なくないワケで。
 こういう連中は基本的に「売上に貢献しないが全力で足は引っ張る」のよ?

 短期的なストレージ費用負担(長期的に見れば相対的に「薄まる」筈)と、このテの悪評流されるリスクを天秤にかけて、わざわざ後者を取ったってのは、正直自分には理解出来ませんわ。

 一方、有料ユーザにとっては精神的には大事ではないかというと、これまた全然そんなことはないのであり。

 そもそも容量無制限と言ったなら無制限で提供しろよ、というのが基本行動原理が契約である世界の常識。
 にも拘わらず「大量のデータをアップロードしているユーザが居る」ことを理由にサービス内容変更というのは、世界の常識からすれば言い訳にも何もならず、単に「契約不履行である」としか言いようがない。

 #契約という関係に疎い日本人にはこの辺りの欧米人の感覚はどうにも理解されていない気がする。

 なので当然、「MSは契約を一方的に反故にする企業である」という印象を持たれたワケですよ。
 有料ユーザにしたって「そりゃねーだろ」となりますわ、コレは。

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 にしても今回のネタ、サービス内容変更が相当刺激的なことは勿論だが、その発表方法があまりにも朴訥だったのも騒動に拍車をかけた原因だと思うのだが。

 これが仮に「データ総量が見込みを上回って増大し、サービス継続に支障が出かねないので」と言っていたら、もう少しだけ世間の反応は違ったとは思うのだが。BidCasaもHPも過去に「やらかして」いるので・・・同じくブーイングの嵐ではあっただろうが。

 ・・・つか、こんな騒ぎを起こすならそもそも「容量無制限です」などと言わなきゃ全て丸く収まっていたのだが。
 余計なこと言って余計なことして自爆した、というか、オウンゴールだとか、そういう展開でしょうコレは。

 まぁ実態としてはどうせ、容量無制限を打ち出した時と現在とではMS側の人も入れ替わっているんでしょう。
 「前任者が何言ったか知らないが自分はこうやるんで」というとてもビジネスライクな判断をしたんでしょうな。
 ところがユーザーはそんな短期間で入れ替わるワケがないし、ましてやMSの中の人間の入れ替わりなんて知ったこっちゃないという。

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 まぁこの後暫くの注目は、思わぬ長期的なビジネスチャンスを与えられてしまったクラウド系各社と、国内では思わぬ棚ぼたなNAS屋各社ではないかと。
 最近イケイケのQNAPとかはアキバでは売り上げ右肩上がりだそうだし、少なくとも国内のエンタープライズ系では「ファイルサーバ」の扱いが面倒臭くなってきた連中がアプライアンスである(=運用を含めたトータルコストでは結構下がることが期待出来る)NASへ移行するケースも増えてきているので。

 とまぁ今回は、こんなところで。

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