HDDってどうよ、という話(前編)。

 某社がHDDの故障率がどーたらこーたらというレポートを発表したおかげで、これを話のネタに取り上げている各所で何か妄想繰り広げている人達が居た模様。
 エンタープライズHDDはカネの無駄だとか・・・まぁこういうこと言うのはモノも現場も知らない人間とほぼ相場は決まっているんですが。

 ♯これだけコスト削減圧力が強い中、ホントに無駄だったらエンタープライズHDDなんてとっくに消えてますわな。
  あとあのレポート、入っている情報量が少な過ぎて、正直何の参考にもなりませんて。

 取り敢えず、当方の「実感」をちょっと書いてみる。
 まあ結構な数のHDDを扱っているとはいえ、真面目に統計を取ったワケでもない「実感」なので。取り敢えず世間ではこれを出しておけばいいらしい?

 「意見には個人差があります」

 ということで。
 何か文章でちんたら書くとひたすら読みにくいので、QA方式で。

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 Q1:エンタープライズHDDは故障しないの?
 A1:がっつり故障します。つかホントもう少し故障率下げられないのかいな?>各社

 Q2:エンタープライズHDDは故障しにくいの?
 A2:ある程度負荷がかかる状況なら明らかに。

 ※当方には違和感があるのだが、最近ではニアラインもエンタープライズの領域に入れてしまうらしいので、以後そういう扱いで。

 本当に負荷が軽い使い方なら、デスクトップHDDとニアラインHDDで大差はないですな。
 だが、ある程度負荷がかかる(アクセス頻度が高い、使用時間が長い)使い方をするなら、エンタープライズ品の方がやはり優位と。

 ♯所詮は選別品でも、その程度の差は出るぐらいに品質のバラつきがあるんですよ。

 但し最近では、この辺りの考え方も変わってきていたりするのも事実ではある。

 一般的に、エンタープライズ品の価格の高さは、保証期間の長さや故障時の対応の手間というモノと引き換えというか釣り合いになって許容されている。
 この理屈が成り立つには、故障した時に交換出来るのは同一のHDDに限るとか、HDD交換の後はRAID再構築等の後処理が必要だとか、色々前提がついているのですよ。

 それでは、この前提が無ければどうなるか。
 故障したらその時一番安いHDDに交換すればいい、後処理は勝手に行われるから何も考えなくてよい、となると、デスクトップHDDが激安な故に故障率が高くとも結局トータルコストでは安くなる可能性がある。
 そして分散冗長化ストレージ等、そういうストレージを実現する仕掛けや仕組みもここ数年で俄然「使える」ようになってきた。

 レポートを発表した某社も結局この「実はデスクトップHDDを使い潰していった方がトータルコストで安い」というセンを狙っていて、今のところそれは上手くいっている、ということでしょう。

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 Q3:HDDが一番壊れやすいタイミングは?
 A3:スピンダウン・スピンアップ時。

 要するに物理的に大きな負荷がかかるタイミングですよ。

 プラッタという静止物を動かし始めるという慣性の法則に加え、軸受の摩擦もあるので、モータには一番負担がかかる。
 更に今では主流のランプロード方式でもプラッタに激突しないというだけで(注:語弊あり)、ヘッド待避・復帰には相応の負荷がかかる。

 #某社のIntelliParkのデフォ値は正直やり過ぎだと思う。

 あと「電源入れたら故障したので起動しない」という言い方を良く聞くが、結構な確率で「実は前から故障していて、再度電源を入れたからそれが発覚した」というのが正しい。
 メカ系にダメージが来ている場合、動かしている間は何とかギリギリ踏みとどまっていたが、電源を落としたら最後もうどうにもならない、再起動しようがない、なんてことは珍しくないので。

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 Q4:トラブルの原因で一番多いのは?
 A4:駄目ファーム。

 これはもう圧倒的に、ファームが原因のトラブル。
 一般にはIFとの相性程度で済むのだが、時々「特定のアクセスパターンを繰り返すと挙動が怪しくなる」なんていう超絶駄目ファームウェアすら平気でリリースされることすらあるのがこの業界ですよ。
 更に、ファームウェアのバージョンが変わったところで変更内容なんて公開されていないので、特定の不具合や相性が解消されたと思ったら今度はドライブの「癖」まで変わってしまって慌てる、なんてことも実際あったりする。

 注)デスクトップユースでは「あんまり」問題になりません。
   この項目についてはここの管理人の過去のイロイロな経験の恨み、ではなく感想が・・・。

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 Q5:最近のHDDカチャカチャうるさいのは何故。
 A5:プラッタ回転数を落として省電力モードに移行出来るよう、ヘッド退避させてるから。

 WDのIntelliParkが有名だが、それより前から2.5’では省電力と衝撃対策の為に実装されていたし、最近ではWDだけでなく他社でも実装されている機能。
 一定時間アクセスが無いとヘッドを退避させている音ですな。
 でも、何故ヘッドを退避させる必要があるのかってのは意外と知られていないらしいので。

 理由はというと、プラッタ回転数を落とすため。
 回転数が落ちればモータに供給する電力は少なくて済むため、省電力になるというワケです。

 但しこんなことをするとヘッドを浮かせるための浮力も不安定になっていまうため、放っておくとヘッドがプラッタに激突してクラッシュしてしまう。
 それでは困るので退避させる、というワケですな。
 同時に耐衝撃性も高くなるワケですが、3.5’ではあくまで副次的な効果なのに対し、2.5’では結構重要なポイントだったりします。

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 何か長くなってきたのでここで分割。
 お次のネタは「HDDが長持ちするコツは?」と「データ保存用にHDDってどうよ?」という話で。

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