NUCとLGA廃止の噂から見る、Intelの描く「PC」の姿。

 今回は世間から聞こえてきた噂の軽い話でも。
 それは「2014年自作PC終焉」との話。

 さすがにこの噂のインパクトは大きいようで、世界中のPC系サイトで話題になっている模様。
 国内ではImpressの記事があるが・・・ん~コレちょっと煽り入ってるような?

 で、この話の本質は別にそんなことにあるワケではなく。
 自作も再びマニアの世界に戻るだろうが、別に終焉したりすることもなく。
 Intelが思い描く近未来の「PC」の姿が見えてきた、ということ。
 そしてそれは現在の「PC」の姿からは少し違うものかもしれない、ということ。

 ちょっとこの辺りを今回は語ってみようかと。
 なお、予め断っておくが、当然ながら以下は当方個人の予想が入っているので、念のため。

 ◇

 まず、ソケットが消える?という件について。

 答えはYesでもありNoでもある。

 Noの部分:Workstation向け、Server向けがBGAパッケージになることは当分あり得ない。

 高価格で高発熱なCPUをBGAにする理由は何もないし、誰も得しない。
 当然この価格帯のマザーボードは発売され続ける。Supermicro・Tyanは専業だし、サーバ事業セグメントを持つASUS・MSI・Gigabyteも当然商売を継続するだろう。
 エントリサーバ向けに低価格のソケットCeleronやソケットPentiumが「数種類だけ」残るのも確実だと思っている。

 #但しこの辺りはヘタするとBGAパッケージを変換基板に載せたものになるかも。

 そして、現在の「ハイエンド自作」はこの製品ラインに吸収される。
 このクラスに限れば、マザー・CPU・クーラー・メモリ・VGA・ストレージと選んでいくスタイルは当分変わりそうにない、変わる理由も無い。

 Yesの部分:低価格CPUは全てBGAパッケージに移行していく。

 一方、Intel製CPUの低価格~ミドルレンジまでは基板直付のマザーばかりになっていく。
 マザーメーカは減少し、マザーのラインナップもがっつり整理されてしまう。搭載CPUを選べばマザーの装備もほぼ決まる、というような状況になると思われる。
 これは「自作の楽しみ」が減るということでもあるし、もう一つ、実は大きな変化の要素を持っている。
 それは「フォームファクタのスタンダードが変わる」ということ。

 ◇

 ということで、次に話はフォームファクタへ。

 現在、PC自作といえばATXが主流。拡張スロット7本のの規格。
 この規格が制定された当時にはUSBなんて影も形もなく、爆熱CPUもGPUも存在しなかった。
 何かしようと思えば拡張カードを挿す以外の選択肢は無く、だからこそこのスロット数が歓迎された。

 ♯ちなみに丁度ATX移行期に一大ヒットとなったCeleron 300Aは素の状態でTDP 19W、一世を風靡した450MHz駆動でもTDP26W。
  現在そこらのA4ノートのCPUがTDP45Wとか35Wだったりするので、隔世の感が…。

 ところが時代は流れ、今やオンボードとUSBで大抵のものは何とかなってしまう。
 こうなってくると「そもそもこんなに大きい必要ないし」なるのは自明の理。

 こんなに時代に花開きつつあるのが、VIAが提案し育ててきたMini-ITXというフォームファクタ。
 拡張スロットが1本だけ(というか製品によっては存在しない)という、昔なら冗談でしかなかったような構成だが、実際問題として大多数はその1本のスロットすら空きのままで使用されている。ATXと比べ物理的にコンパクトで取り回しも良く、価格も既にこなれてきている。

 そしてこのMini-ITXこそが、現在の流れのまま「自作向け」オンボードCPUマザーのスタンダードになると個人的には思っている。
 このクラスのCPU処理能力を求める人の大多数は、大量の拡張スロットやメモリスロットも必要としていない。
 だったらコンパクトなこのサイズで十分。マザーメーカも作り慣れてるし。

 ♯極一部、比較的高価格帯の中にはCPUオンボードのMicroATXサイズのマザーも出てくるのでは。

 ◇

 ところでこのMini-ITX、一つ特徴がありまして。
 それはATXとの物理的にも思想的にも互換性を保っていること。

 物理的に言えば、殆どのATXケースに取り付け可能だし、電源もATX電源のまま。
 そしてさらに思想的面では、HDDは3.5インチのドライブベイに取り付けるもの、CPUには大きなヒートシンクが付くもの、なんてのも。

 ♯この辺りの互換性こそが、Mini-ITXが自作市場で受け入れられた大きな要素だと個人的には思うけれど。

 ところが時代は既に色々と変わってきている。
 個人使いに十分な容量のSSDは小っちゃな基板の上に収まるし、電源だってACアダプタで十分、CPUのヒートシンクだって小型のものがある。

 こうなってくると、Mini-ITXに込められた「互換性」こそが「足かせ」になっている、とIntelは言いたいのかも知れない。
 「今こそATXの呪縛から解き放たれる時だ」と。
 Intelは昔からこのテの「レガシーを切り捨てる」ネタが大好きなのは有名な話だし、また出てきたその病気?思想?が具体的に形になったのがNUCなのかな・・・なんて。

 ♯結構爆死もしてるしね。IA64とか、BTXとか…。

 ◇

 何れにしろ少なくとも国内においては、机の上や机の横で存在感を主張するPCは、既にマニアと特定業務従事者だけのものになりつつある。
 一般の人が買う「デスクトップ」PCはAIO(ディスプレイ一体型)か、それこそNUCやMacMiniのような小型なものに限られていく。

 そんな時代の流れと「PC」の変化を再認識することになったのが、今回の噂でしたとさ。

 とはいえ、個人的には低価格なソケットCPUや関連パーツが2014年に消えて無くなるとは思っていない。
 Intelと台所事情が違うAMDはx86を続ける限り低価格ソケットCPUは捨てられないだろうし、何だかんだでIntelもラインナップは大幅に整理しつつも結局ソケットCPUを出し続ける可能性は高いのではないかと思っていたりする。

 ま、結局何が言いたいかというと、やっぱPCは自作がイイね、ということでしたとさ(何だそれ。

Share