営業的考察

/ 特設 / Seagate / 営業的考察 – 09.01.26

前提:カネが無い

 今回の騒動を、営業的な面から少し考えてみる。

 現在Seagateはおカネ的に非常に苦しい立場にある。
 前述したmaxtormanも品質低下の原因を技術スタッフの過度のリストラだとコメントしているし、レイオフや賃金カット、株価下落の話題には事欠かない。

 この状況で集団訴訟など起こされたら大変なことになるし、かといってリコールなどしようものならこちらも間違いなくchapter11(再生法)、もしかしたらchapter7(破産)逝きとなってしまう。

今回のアップデートの理由

 そんな中、今回のファームのアップデートは極端に言ってしまえば「本質的ではない」。

 この場合、「本質的な」対処とは、Brinks世代の品質改善と低品質品の回収/交換という真っ当なもの。
 だが、これは明らかにカネも時間もかかるし、即効性も無い。

 対して、ファームのアップデートで対処、と事実を矮小化してしまえば、カネも時間も圧倒的に少なくて済む上、即効性も期待出来る。
 加えて、ファームに目を向けさせることで、現在進行形のBrinks世代での品質問題からはユーザの目を逸らすことも出来る。

 更に更に、社内で完結する工場のQC活動等と違い、対外のサポートに情報やファームが掲載されることで、ユーザだけでなく司法等に対しても「最善を尽くしている」演出も簡単に行うことが出来る。

 まあ、以上のような判断の前に、単純に「カネが無いので今更品質向上なんてムリ」という事情もあったのかも知れないが。
 兎に角、ファームウェアのアップデートでコトを済ますことにしたと思われる。

今回のアップデートの意味

 また、このファームウェアのアップデートを大々的にアナウンスしないことについても、以下のような方針で対処しているのではないか、という推論が成り立つ。

 前提として、今回のトラブルはまだ一般に広く知られておらず、また今回のファームウェアのアップデートで改善される事象は極めて限定的である(とSeagateが判断している)。

 そのため、広く告知して多数の素人にSeagateの悪い印象を与えるのは得策ではない。
 また、広く告知して多数の素人が押しかけたら、サポートがパンクしてしまう。

 代わりにKBに情報を掲載し、うっかり気づいた限られた人間だけはサポートが相手にする。
 気づいていない人間はそのまま放置し、故障してしまったらRMAで代品が貰えれば、特に文句も出ないだろう(とSeagateが判断している)。

 多少不良率が高くてRMA経費がかかったところで、素人相手にサポート体勢を特盛にするよりは経費的に遙かに安く付く。
 従って、以上の対処が、一番低コストで低ダメージでの処置である(とSeagateは思っている)。

 

 ・・・まあ、これだけ現場がグダグダになってしまうと、どうするのよコレ、という話になると思うのだけどね。真っ当な企業ならね・・・。

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